No.38 憂鬱な獣たち  2017515

 

◆猿

愛嬌のある猿も集団で畑を荒らすとなると話は別だ。

遠くで猿の鳴き声。

まだその声が警戒音か戯れ音か、それとお威嚇音かは判断できていない。

ただ、我が家の二匹の犬が脅される威嚇音は少しは判断できる。

猿集団というよりは逸れざるが、二匹の犬に向かう。

キッキッと単発的に二匹の犬を見据えて鳴き声を発する。

今のところ、この逸れ猿の挙動だけを覚えている。

戯れる場合には集団が子供の多い時だ。

子供は無邪気にキャキャと叫ぶ。

限って、柿の木で大勢で柿を食べる時だ。

それは桑の木で桑の実をと食べる時もそうである。

子供たちは夢中である。

最初は私が近づいても気にしないぐらいだ。

警戒音は限ってリーダー格の猿数匹が発する。

キーキーと声を長くして発する。

その声でほとんどが遠ざかる。

私が近づくとキャキャと鳴きながら離れて行く。

どれかが遅れるようだとその声が激しくなる。

最近は私はパチンコを持ち出す。

肩を壊して石を投げれないためだが、パチンコは効き目が良い。

石が飛ばなくてもそのゴム音が威嚇となる。

偶には遠くへ石を運ぶことが出来て、まだ威嚇有効のようである。

春先の猿の好物はタケノコだ。

タケノコの先端を食い散らかす。

育てようとした竹でさえ、その頭がかじられる。

隣のおばさんが猿のタケノコ齧りを防ぐためにタケノコにビニール袋を昨年被せたのを私は知っている。

ところが今年に大きくなったタケノコの上の方に何かが揺らいでいる。

どうしたのだろうとおばさんが驚く。

去年の被せたビニール袋だと言うとおばさんはそうだったと納得。

やはり数m高さの先端に揺らめくビニール袋は異常だ。

 

タケノコを食い終わる猿集団がジャガイモ畑を荒らしに来る。

私の畑の対策はまだ。

毎年方針が変わる。

ただ、隣の家の畑の対策は強力な網で畑全体を覆うものだ。

猿は網の中へは入れい。

村の一部では頑丈に囲い下2m高さの上を電流を通す。

今の床尾撃退が成功しているようだ。

私のここ数年の対策は薄く透き通った網を張り巡らす。

小網が絡みついて私も往生する。

人間様が困るので猿も警戒するだろう。

この浅知恵、この数年は成功である。

電柵は一時強力だった。

間違って触れると大きなショックで驚く。

大きな鹿でさえ気絶する。

猿でさえ流石に警戒する。

ただし、電柱とか大きな木がある場合には猿軍団はその木を使って電柵を飛び越える。

今は高齢化で電柵の世話をする人が居ない。

猿は容易に電気の通っていない電柵を乗り越えて畑に入ってくる。

勿論二匹のワン公(バンとランコ)の存在は強力だ。

彼らが傍で吠えると私さえ耳を塞ぎたくなる。

7時、12時、17時の村のチャイムで鳴く。

救急車が通っても、野菜売りのスピーカーにも反応する。

彼らの合唱は猿たちには脅威であるに相違ない。

ただ彼らは猿軍団が来ると尻尾を下げる。

 

◆鹿

昔、電柵の中に間違って入ってきた鹿が私の存在に驚いて電柵にぶつかり気絶した。

電話で誰かを呼び出し捕獲しようとしたが、気が付くと鹿は必死に電柵を引きちぎり巻き付けながらも脱出した。

それにしても電柵の威力と鹿の必死の努力には驚いたものだ。

逃げ切った鹿が私の方を振り向き振り向き林に消えて行く姿は可愛かった。

その後、鹿は電柵の中に入ってこなかった。ただ、最近は電柵には電気が通じていない。

ただ、鹿はワン公たちを避けながら歩いているようだ、本格的な作物荒らしはこの数年ない。

鹿の遠吠え、夜泣きは不気味である。

雄鹿が雌鹿を求める。

 

◆猪

わが畑を耕す前にはそこに猪の巣があった。

その一匹が草むらから顔を出した。

凄く可愛かったが、彼は隠れ私はそれを追いかけなかった。

近くに親がいるだろうので危ないと判断した。

猟師によると子供が数匹いたようだ。

私は通報を躊躇ったが、別の村人の通知で親は退治したようだが子供たちが逃げた。

1年後その一匹を捕らえたという。

既に立派な大人猪、腹いっぱいに食べ物を貯め込んでいた。

村人曰く「畑を荒らすので殺されるのは仕方ないよな猪君」

猪の子供は可愛い。

誰もがウリボウを可愛いと言う。

それでも成獣となった猪は極めて危ない。

猪の肉は鹿よりも旨いので漁師は好んで猪を撃つ。

猪も敵が多くて大変だ。

猪は頭が良い。

一度電柵に引っかかると猪同士で警戒し合う。

電柵に電気を通していなくても一度電柵に触れた経験がある猪が居ると近隣の猪は近づかない。

間違って電線に触れようものなら脱兎のごとくそこから逃げる。

誰もが猪のどう猛さを知っていて警戒する。

あの牙でタケノコを掘り当てる。

あの勢いで畑を耕してくれればと思う。

特に福島でのモニタリングに参加すると、猪のやりたい放題の山肌を発見する。

福島山間部は猪の天国だ。

親子連れ野原を闊歩。

流石に小菅では、私の畑のようにそれが出来なくなった。

あそこはカヤが茂り絶好の住処だったと猪は嘆いているに違いない。

 

◆蛇

畑が豊かになりミミズなど小動物が闊歩する。

それらを食う小動物も多い。

特に蛇が増えた。

先日の奴は鎌首をもたげていた。

マムシかと近づくのを避けた。

流石に蛇を殺すという勇気がない。

つい最近には1mほどの長いのが居た。

青大将だと村人が言う。

畑の草取りで紐かと思って掴もうとすると動き出した。

数匹も居たがジモグリだろうと想像する。

馬鹿太い色とりどりの蛇は山案山子だ。

この近くの主か、時々出てくるようだが、私が見たのは数年前の2回だ。

最近のヤマカカシには毒が強い。

噛まれるとやばいが、ヤマカカシの毒は奥歯にある。

前歯にあるマムシと違い噛まれても扱いやす。

いずれにしても私は蛇が嫌いである。

ただ、昔のように殺すという行動はしない。

 

◆狸

道路で狸の死骸を見かけることは多い。

車で引いたことも多い。

畑では病気の狸を見つけた。

触ると病気が移る。

そろそろ歩くのを見つめる。

林の中に入ってくれるとほっとする。

村人が、犬が病気のタヌキを咬むと病気が感染すると注意を受ける。

勿論、山に繋いだ二匹の犬を心配する。

 

◆熊

小菅村に闊歩しているのは月輪熊だ。

獰猛で、奥多摩では襲われた大けがをしたのは数年前だ。

青梅でも熊が出続け様二頭とも仕留められた。

猟師は凄腕だと思う。

小菅村でも熊は重宝だ。

その肉が旨い。

私のところまでその肉が届くことはない。

数年前は5、6頭を捕らえると捕り過ぎたようだ。

年に数回は熊が出たとの情報がある。

熊には誰もが警戒する。

彼は栗、柿が好物で栗の木、柿の木に巣を作る。

結構の風物だと思うのだが私は巣を教えられたが熊の姿を見たことはない。

檻で熊を捕まえたとは今年の話である。

やはり最終的には銃で撃ち殺したようだ。

流石に可哀そうだと思う。

それでも襲われた人は多くその話は興味深い。

月輪熊以外にアライグマも小菅村は多い。

彼らは家の周りを荒らす。

獰猛だと言われるも私は見たことがない。

罠にかかったアライグマの話もあった。

川に罠に漬けて殺したという。

荒らされた噂も多く納得するしかない。

最近私の家の庭に生ごみを埋めているとそれを荒らすのはアライグマだと想像する。

 

◆狐

小菅村で狐を見たのは一度きりだ。

その姿は美しく今も悠然と道路を歩く姿が頭に残る。

村人が時々には見たという人がいる。

それでも私が見た幻想のような狐。

昔話ではないが騙されたい気分であった。

 

◆ハクビシン

干し柿を狙われて嫌な奴だ。

文京区大塚三丁目に住んでいたころ庭のモモをやられた。

モモの木に這いつくばるハクビシンには見事な木の枝のような変身だった。

のっそりと逃げ塀をヒョイと飛び移った姿は王様だ。

小菅村でも干し柿を片手に柱にもう一方の手に干し柿を持ったハクビシンは悪戯者だ。

それでも被害の話は多い。

自然に憎しみも沸く。

昨年はトウモロコシが随分とやられた。

食い散らかすので後始末が大変である。

人間様には残してくれない。

今年は防衛策を講じないと。

 

◆その他小動物

畑には色々の小動物がいるがほとんどを知らない。

よく見るのはミミズだが、発見すると土の中に入れてやる。

トカゲかイモリかどちらも多い。

ミミズのように土の中に居て飛び出す。

ちょっと前までは卵から出てきたばかりで動きが鈍いが最近の奴は素早い。

モグラはチョロチョロと穴を掘る。

穴を掘られると作物が傷む。

たまに、穴掘りに失敗したのか干からびるやつもいる。

ネズミは大量発生する。

今のところは静かだ。

ただ、我が家の猫はこのネズミを捕らえるのが上手である。

時々は見せに来る。

二匹の猫(母親がマット、娘がすり子)のうち母親は狩りが上手だが娘猫は下手だ。

数日前にその娘猫がトカゲを咥えて遊んでいた。

頼もしい。

 

◆鴉

今のところ、鴉の発情期なのか実に煩い。

雄が雌を求める。

ただ、彼らは鳴くだけで畑を荒らすわけではない。

集団で来れば数十羽にもなる。

畑に居ると「バカバカ」と言われているようで頭にくることもある。

「カワイイカワイイ」の童謡のようには行かない。

最近の鴉の鳴き声は殺伐としている。

 

◆鳶

単独で行動していると思ったら、2羽になり、また単独になっている。

子供作りに成功したのだろうか。

鳶は悠然と電柱の上に泊まる。

「ピーヒョロヒョロ」は実に優雅である。

鴉よりも一回り大きい鳶は小菅村では鳥の王さまである。

ある日一羽の鳶を数十羽の鴉が攻めたてた。

勝者は誰かと気になるところだ。

やがて数十羽の鴉が去り、悠然と一羽の鳶だけが残った。

電信柱の傍に食い契られた鴉の羽が言いまい落ちていた。

鳶が2羽揃ったのはその後だ。

 

◆鳩

鳩が畑に撒いた種を旨く啄んでいく話は聞いて知った。

私の畑にも山鳩が侵入する。

一度猿防止に張り巡らした網に鳩が引っ掛かり申し訳ない気持ちになった。

彼らの目的は畑を耕した後の害虫などの幼虫である。

ただ、警戒心が強いので近づくと飛び去る。

鳩は1羽、2羽で大量に飛び降りることはない。

私が畑に居ると電線にのっかり、「ホーホー」と鳴く。

私に語りかけているように思うのだが彼女が警戒を解くことはない。

 

◆鶯

年中鶯が鳴く。

山は鶯だらけである。

でも春過ぎても泣き続ける鶯は雄が雌を見つけれない可哀そうな鶯だそうだ。

彼らは喉が切れるまで鳴き続けると言う。

鶯は藪や林の中。

あのカルタに見られる梅ノ木の鶯を見つけるのは難しい。

警戒心が強く、近づくとすぐ逃げる。

 

◆ガビチョウ

外来種で嫌われ者だが鶯以上に山では泣き続ける。

私が聞いていると「バカニスルナバカニスルナ」と聞こえる。

その鳴き声は夏の蝉のように煩い時もある。

鶯同様、警戒心強く、鳴き声するが近づけばすぐ逃げる。

 

◆燕

奥多摩駅ではよく見るが小菅村ではとんと見えない。

それでも夏の終わりには電線に少しは停まる。

典型的な害虫を退治する益鳥、何時も私は燕を求める。

奥多摩駅では随分と見かける。

 

◆雀

穀物を荒らす雀は憎い。

ただ、大量の雀の姿を小菅で見つけることはなかった。

小菅村の穀物量では繁殖できないのであろうか。

燕と同じで奥多摩駅ではよく見かけるのだが。

 

◆渡り鳥

時々真っ黒な雲になるほどの渡り鳥を見ることは多い。

私の畑を襲ったのはまだ一回だ。

ただ、何時ものことだがエゴマが実るとやられはしないかとひやひやものだ。

この数年エゴマは畑いっぱいに植わっている。

ただ、群を為す鳥は集まるが、雲のような渡鳥に襲われたのは一回きりだ。

群れを為す鳥が畑を襲うとその後の糞の臭さは半端ではない。

それは畑に撒散らした肥料としては抜群だ。

 

◆その他の鳥

余りに鳥の種類は多くほとんどその名称を私は知らない。

鶺鴒は愛嬌のある鳥で畑にもよく来る。

近くの柵に乗っては私に語り掛ける。

鋭い声で鳴く百舌鳥はいるがその姿を見るのは難しい。

激しく枝を飛び移る姿は見ることがある。

雉の声はするが小菅村で見たのは一度きりだ。

中学校裏の山裾でのことだった。

小菅の湯からの帰り道作の宮でも声をよく聞く。

最近鵜が巣を作っているという。

小菅川に放たれたヤマメを捕るので大変である。

爆竹とかを鳴らすようだが大丈夫だろうか。

空気銃で撃ち取ったという話もあった。

果たして鵜は食べれるのだろうか。

最近知り合いが野鳥の会の会員、全ての鳥の案内が出来るそうだ。

彼の時給は2千円、案内を頼んで数時間を一緒に歩きたい。

数人で歩くと割安だ。

何せ、野鳥の会の人々、普通の人には聞こえない鳴き声も聞き分けると言う。 

以上   No.37へ     No.39へ