No.36 春耕  2017415

 

作付け

冬から春にかけて、畑の作付けを行うが、小菅村ではこの季節の変わり目を判断するのが難しく従って、作付け時期も難しい。

最初の作業は土起こしである。

早すぎても凍土で歯(鍬の刃)が立たない。

遅すぎても作付け時期を間違う。

野菜の種を買ってくるのだが、そこには作付けの時期が記載してある。

その通りに撒けば良いものだが、小菅村の季節変動はそう簡単ではない。

小菅村が寒冷地なのかどうかも判断しがたい。

 

何時もは寒く直ぐ凍土となるのだが、今年はそれほど凍てついたわけではない。

それに試しに畑に沢山の溝を掘り枯草を放り込んだのがこのタイミングが更に難しくした。

畑の溝は20cmほど堀りスギナ退治を狙ったのだが、結果として畑が耕し安くなっている。

スギナもそれなりに退治が出来ている。

春を迎えるにあたって楽しみの一つである。

ところが今年の冬は雨が少なく、土が乾燥して砂埃がすごい。

それを思いっきり吸うので息が埃っぽい。

畑に溝を掘ったので更に埃が増えたようだ。

暖冬異変かと思うほどに凍土化が少ない。

すると耕した畑に何か作付けしたいと思うのが人の性だ。

 

早めにジャガイモの種を40kgほど仕入れて植えこんだんだ。

周囲にその気配がないので早すぎたと心配する。

隣のおばさんは作付けは早いほど良いと言われて安心もする。

ところが今年は三寒四温が5寒6温と何度も何度も厳しい寒さが訪れる。

ジャガイモを早く植えるとその芽がこの寒さにやられることが多い。

心配なのだが、植えたものは仕方がない。

じっと耐えながら畑を覗き見る。

なかなかジャガイモの芽が出ないのでほっとする。

それに今年は4月に入っても3回もの雪だ。

そのうち2回は完全に積雪である。

雪は保温があると慰めもするがこれほど一喜一憂する年も珍しい。

 

雑草

何も植えていない畑に作付けすることは畑のスタートラインだ。

これから作付けした野菜と雑草との競争が始まる。

野菜は人間が大事に育てたものその面倒が勝負だ。

勝負相手は雑草だ。

野菜に作付け時期があるように雑草も繁茂の時期がある。

何もない土の名から出てくるのはフキノトウ。

フキノトウは野菜並みに食すると美味だ。

フキ味噌は特に重宝だ。

フキという雑草は土の中に根を生やし春を待つ。

土起こしをすると目立つのはこのフキの根っこである。

結構育つ力は強力である。

ただフキはどこにでもあるわけではなく限られた場所である。

雑草だが、貴重な春野菜である。

野菜並みに育てることにしているが、するとなかなか思うように育たないものだ。

野草だがされど野草、人の思うようには育たない。

結果として、今年のフクノトウの収穫は例年よりも少ない。

果たしてフキ本体はどうだろうと楽しみだ。

 

フキノトウ以上に厄介なのはスギナである。

ツクシはスギナの花のようなものだ。

フキノトウと同じに最初に土から芽を出す。

ツクシは半端でない量で畑を荒らす。

畑の雑草狩りはこのツクシを送り出すスギナの根っこである。

スギナの根っこはフキの根っこより厄介である。

それは深く細くかつ長い。

30cmぐらい深く根を張る。

これを根っこから掘り出すのは困難である。

ツクシは甘く痛めて煮るとおいしい。

その胞子は異常に色が濃く気持ちが悪い。

ただそれなりの春の惣菜である。

このツクシの下にはスギナの根っこがある。

その根っこを目がけて土起こしをする。

ずるずると根っこが続く。

芋掘りのごとく快感だが、これだけは害あって益なしだ。

厄介なのはいくら乾燥させても土の中では直ぐ芽を葺きだす。

永遠に畑のギャングである。

今年は石灰を撒いてスギナ退治を試みた。

スギナは酸性度を好みアルカリ度を嫌うというものだ。

ただ、効果のほどは半信半疑である。

石灰は埃以上に埃っぽい。

口から鼻からそれを吸い込む。

短時間ではあるが埃以上である。

 

すぎな退治は畑仕事の最大の難関だ。

放射能汚染地帯ではスギナが放射性物質を最も吸収することは分かっている。

セシュームはカルシュームに属が近くスギナの本体はカルシュームみたいなものだ。

このことは5年前南相馬太田地区研究会で放射性物質除染論議で一致したことだ。

ただ、それを実践するパトスには至らなかった。

畑を荒らすスギナが果たして益になるものかと。

現状はツキシンボウが畑を覆っている。

その下にスギナの根っこが蔓延っていることは明らかだ。

ジャガイモの作付けを終えてその芽が出るころにスギナの芽が出てくる。

この競合を制することがジャガイモ収穫成功の基本である。

その他の雑草はその後にやってくる。

 

野菜の作付け

冬に強い野菜がある。

その1はホウレンソウである。

ホウレンソウは寒さに強く寒いと特に糖分を貯えるようだ。

白菜とかも雪の中で糖分を増やすそうだ。

ただ、小菅村では白菜が冬を越すことはほとんどない。

それほどには雪が降らない。

特に今年は春の雪積雪は直ぐに溶けた。

遅く植えた大根も元気が良さそうだ。

ただこの大根は細く根が深く引き抜くには骨が折れる。

それに初めての試みで食べれるほどの柔らかさがあるか心配だ。

夏植えた大根が冬になると寒さで腐ってしまったが、秋植えた大根は小さすぎて根を張らなかった。

それでも冬の寒さを生き抜いたのだが、結果はこれからだ。

あの青野菜は何だと村びとに聞かれるほどの目立ちようだが、疑心暗鬼で余り世話を焼かなかった。

ただ冬を過ごしたことは褒めれる。

 

同じことがネギにも言える。

もともと村人から村のネギと称してもらったものが根付いている。

立派に育っていて頼もしい。

冬の寒さに耐ええた立派な野菜だ。

このネギ、冬を過ごす間にも株を増やす。

小さな株が育っている。

根を分けて植えなおせば立派に育つ。

更に春には既にネギ坊主が実りだす。

ネギ坊主はやがて種を持ち、次なる子孫を残す。

小菅のネギは香りも良い。

弱点は短く根も葉っぱも小さいことだ。

都会好みの白い根っこが短い。

 

冬に強い野菜にはエンドウ豆がある。

雪が積もっても立派に育つ。

寒さにも耐える。

春が来ると勢いよく弦を出し始める。

村人も冬にエンドウ豆を植えたらと推奨する。

まだかまだかと覗いて見る。

まだ弦は出そうにないが、その日が楽しみだ。

何時もは苗を買ってくる。

苗を買うのは青梅とか八王子とか少し小菅村よりも寒さが緩い。

その分だけ小菅の寒さに負ける苗も出てくる。

やはり種から育てるのが良いようだ。

野菜の作付けは種類が多くて楽しみである。

手当たり次第に買ってきては畑に撒く。時には種の出ないやつもいる。

芽は吹くが直ぐに消えるやつもある。

それに雑草に負けるやつが実に多い。

ニンジンとか春菊とか、小松菜とか、青梗菜とかは下手をすると雑草に埋もれて消えてしまう。

私は雑草に負けない野菜を育てる。

ミニトマトとか、エゴマとか、ネギとかが立派な候補者だ。

 

異常気象と政治の異常

異常は政治の世界だけではなさそうだ。

五寒六温などは聞いたことがない。

4月には3回もの雪も異常だ。

雑草が生えないがツクシが異常発生だ。

雨が降っても空気が乾燥しているので土の乾きが早い。

梅の花の咲くのも遅いし少ない。

何時もは桜の花が咲くのはほぼ同時がその気配がない。

 

今年は野鳥の数が少ない。

庭に来る野鳥も一匹、二匹と群れを成すことはない。

木々の成長が遅いので野鳥も訪れにくいのだろう。

朝の食事時に窓から見える梅の木、花は少ないがやはり野鳥も少ない。

全部が全部街中への到来を避けているようだ。

この異常気象を感じるのは私だけだろうか。

野鳥の少ないのは小菅村だけではなさそうだ。

小金井で野鳥を観測仲間が呟いていた。

桜の花が咲きそうで咲かなったのはテレビでも伝えている。

北極の寒気団が変形してることもテレビのニュースだ。

テレビだけがニュース源、厳しい時代となった。

 

昔ながらの共同体は井戸端会議が全ての情報源である。

それ以上の情報は旅人からである。

メディアの発達が全てを変えた。

居ながらにして伝わる地球の出来事。

異常気象にしてからがテレビ情報。

果たして、野鳥など生物が備えた特殊能力は人には伝わらなくなったのであろうか。

人が見出していく様々な技術・技能がある。

それらは生物が個別に備えた特殊能力を超えるものもある。

ただ、まだまだそれぞれの特殊能力に届かないものも多い。

 

それは人と自然との競争である。

ただ、生物が有する特殊能力が基準である。それ以外に証明する手段はない。

宇宙空間探索まで広がった人の能力。

それも人の視界にまで還元することで証明が得られる。

視界能力は限定される。

この限定を越えたところに情報網がある。

それは井戸端会議の延長でもあるのだが、ネットワークが井戸端会議と同等であるには至らない。

情報網が歪められている。

この歪みを修正できる手段は存在していない。

民主主義が持つ歪みと同じにその修正が困難である。

異常気象、政治の異常は全く別次元に見えるようで実は情報を共有できないところで問題が発生する。

いわゆるネットワークという証明手段が、実はネットワークという欺瞞手段でもある。

今、この問題を解決は出来ない。 

以上  No.35      No.37