No.35 春雪  2017327

 

頬を擽る風が冷たい

久し振りに畑に出る輝き

銀板の上に足を進める

サクサクと足跡が続く

滑るを恐れながらも心は晴れやか

 

冬から覚めぬ畑には

青いネギだけが勢いを増す

まるで春節を待っていたのように

雪を掻き分けネギを取り出す

きっと食卓が潤うだろうと

 

斜面の真上に二匹の犬

銀板を嬉しそうに走っている

畑いっぱいに番線を敷いて

犬小屋の周囲に白と茶色とが

私を迎える

 

1日1回の食事の時間

待ちわびて周りを跳ね吠える

揺るがす吠え声が自然を分ける

静寂の山裾に溶け込む

自然の大きさ

 

畑の頂点は隣の山が迫る

斑に雪を貯える山々

遠くの高い山々は霞み

近くの山々は緑が目立つ

春節の自然は複雑だ

 

春雪を踏む長靴の音

登りよりも下りは更に危ない

階段を一歩一歩踏みしめて

自然の多いさを感じるよりも

生きている実感を味わう

 

階段踊り場での一休み

大きく息をして遠くを見つめる

下りてきた斜面は遠く長い

目前に聳える山々は更に高い

大きな大きな自然

 

遠くで二匹の犬の鳴き声

戻って来いと何時ものことだ

雪深い畑に残す心配も残る

野生に戻る嬉しさも残る

私の心は何時も複雑

 

我が家は斜面の中腹

集落の中心に位置する

庭も屋根も真っ白

往来の足跡だけが残る

猫二匹が私を待つ

 

テレビで稀勢の里と松友

世相の混乱と自然との不均衡

心は乱れる

天に任せる余裕もなしに

 

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