庵主あいさつ                                                                     2013年5月23日

 

私は、1943年、昭和18年生まれの年金暮らし老人です。これまでのところ無為元気にすごしておりますが、これからの老後を生きて逝くまでの関心ごとのひとつは、要介護の痴呆や脳梗塞や植物人間状態になる恐れであります。

老人世代の日本人が人格破壊・認知障害をともなう痴呆症になる確率は、一割つまり10人にひとりだそうです。 80歳、90歳になればもっと確率は高くなります

 

痴呆症で人生の終末期をすごすことは、自分や妻や家族に閉じた①私的な問題だけではありません。互助・共助などをテーマとする地域における共同体的なコミュニティの②共的な問題から、国家による健康保険制度、介護保険制度、社会保障制度、税金などにかかわる③公的な問題などに関係します。 さらに、自然と生命の神秘にひれ伏し畏敬し、現世を超越する④天的な精神性も関係します。

 

①「私的」生き方
人生いろいろ、思想も暮らしも能力も十人十色と申します。個人の自由を保証する現代社会は、どの視点からみても、個人差はピンからキリまで大きな差異の多様性が分布する複雑性そのものです。

*人は将来の自分のリスクの確率に備えて、利己的に保険に入ります。

 

②「共的」な生き方
戦後の日本社会では、行政において町内会が非制度化されました。都市化と個人主義化とにともなって、「地域共同体・村社会」は崩壊しつつあります。

*困ったときはお互い様、もちつもたれつの共生的な 相互扶助の気持ち、きずな心 

 

③「公的」な生き方
日本国民であるかぎり、赤ちゃんから寝たきり老人まで、すべての日本人は、人命尊重、生きる権利、人権思想の視点からは、完全平等です。社会保障制度のあり方としては、日本国民に差異、差別、区別、隔離など、あってはならないこととされます。

*公平の原則、格差の抑制、秩序の維持など権力による統制的な社会福祉制度

 

④「天的」な生き方
国家が規制する「公的」性の根拠は、人権の平等です。この人権は、国家に優先する個人の「天賦の権利」とみなされます。「天」とは、国家の正義や公正の最終審級である倫理的な「お天道様」のことです。すべての人間が共有すべき価値の源を意識する生き方を「天的」な生き方とよぶことにします。

*生命の誕生、連綿とつづく生命のつながり、他の生命を消化して生きる人間存在などへの超越的な倫理観

 

現実の「私・共・公」の生き方には、「生命」と「生活」という対比、「個人の自由」と「社会の平等」という対立軸があります。自分と他者、実存と共存、国民と国家、義務と権利、便益と負担などの関係性の問題につながります。

人間の歴史は、「私・共・公・天」を基軸とする不条理性と合理性のせめぎあいです。人間社会に真理の法則性にしたがう予定調和の解決策があるとは思えません。

 現在の社会保障制度に関して、元首相いまの財務大臣である麻生太郎氏が、下のような趣旨の発言をしました。

 

「自分が、政府の金をつかって、体にあちこちチューブを入れられ、いつまでも生かされ続けるのは、たまらん。さっさと死なしてくれ、と自分ならお願いする。」(発言をあとで撤回)

 「老人の医療費が膨らみ続けて社会保障費を圧迫している。70歳以上で、年に一度も医者に行かない老人に10万円あげたら、ムダな通院が少しでも減るのじゃないか。」

 

 私は、この発言の趣旨に賛同します。

そこで延命措置拒否宣言書」を書き、妻と息子と娘に渡して説明しました。さらに、つぎのようなことも考えました。

 

70歳すぎたら、身心のあちこちが退化、劣化、老化するのは自然の定め。痛み止め目的以外の介護や治療は受けません。だから国民健康保険料と老人介護保険料の無事戻し制度を設けてください。現金をもらっても仕方ないので、学生の奨学資金などに寄付したい。

老人の保険料の無事もどし制度と若者への教育奨学資金制度をセットにした制度設計をしてください。」

と国家に向かってお願いする。

 

だけど、考えてみれば主権在民なのだから、「国家にお願いする」という言い方は、おかしいなあ。主権在民とは、国家の制度や規範を国民が決める仕組みだというのだから、「国家にお願いする」とは、「国民にお願いする」ことになりやしないか。私も国民のひとりだから、「国民にお願いする」とは、「自分自身にお願いする」ことになりやしないか。

では有権者である国民として、自分はどうすればいいのか。

・・・・・分からないなあ。

 

そこで、多くの老人たちに知恵をもらい、知見や経験を教えてもらいたいと思いました。大きなテーマとして論点を明確にすれば、つぎの三点です。

①    老人が延命措置を拒否することについて

②    老人世代が学生に奨学資金を寄付することについて

③    老人世代に対する社会保障制度について

 

ネットというありがたいコミュニケーション手段があります。それを利用して、老後の人生いろいろ、十人十色の意見を聞いてみたい。上の①、②、③をテーマとして、老人の冷や水よろしく、個人的な人生観や死生観から社会システム論や国家論、自由、人権、憲法、原発、技術論まで、それぞれの人の関心ごとにからめて、語り合い、聞き合いたいと思いました。

それぞれの意見は一致しなくとも気があう酔狂な仲間たちとたまには会って、里山や海辺の露天風呂に入り、談論風発の飲み会などの合宿・ワークショップを開催できたらいいなあと思いました。 ボケ防止になるかもしれないし。

 

そういう想いでこの老水庵・net梁山泊のホームページを立ち上げた次第であります。

以上