7.7 憲法改正問題を報道するマスコミ各社へ要望する  2017725

 

 国会で憲法改正を発議するためには、憲法改正原案を事前に準備する必要がある。その原案は、衆参両議院の憲法審査会で作成される。憲法審査会は、与野党各会派の所属議員数の比率によって構成される。

憲法改正原案は、国会議員の一部集団の協議によって作成されるのだ!!

民意を十全には反映していない小選挙区比例代表制で選ばれた国会議員が、政権与党主導の多数決でもって、憲法改正原案を作る現行制度でいいのだろうか。

憲法改正草案の作成を憲法調査会に「おまかせ丸投げ」していいのか。

 

国民の基本的人権を保障し、国家権力をしばる「国家最高の法規範」である憲法は、「国家最高の英知の結集」でなければならないだろう。

だが、現実の諸党派の国会議員集団が、憲法改正原案を作成するために必要な日本人の最高の英知を代表しているといえるか?

国民主権の民主主義を実質化するためには、国民の意思を総合的に政治に反映する次の政治システムが必要だと考える。

①国民だれもが、憲法に関する意見と改正条文案を提出できる「国民会議」システム。

②知性・理性・品性を備えた有識者が、提出された国民の意志を集約し、憲法改正草案にまとめて憲法審査会に上程する「憲法会議」システム

前者は、マスコミ各社が実施する世論調査のイメージである。後者は、政府が設置する各種の専門家等による諮問会議のイメージである。

 

◆憲法改正問題を報道するマスコミ各社へ要望する

国民主権の民主主義を実質化するために、政治ニュースを報道するマスコミ各社に次のお願いをしたい。

①憲法改正および護憲に関する国民の意見と改正条文案を収集する

②収集した国民の意思を憲法改正草案に整理集約して公開する

➂憲法改正草案の条文ごとに賛否を問う世論調査を実施する

④その調査結果を反映した憲法改正草案を憲法審査会に提出する

⑤憲法審査会の協議状況を取材して報道する

 

1)国会審議の現状

2017618日に閉会した通常国家の主要なテーマは、森友学園への国有地売却問題、加計学園への獣医学部新設問題、テロ等共謀罪であった。

その国会審議における政府と官僚の答弁は、ごまかし、まやかし、とりつくろい。こじつけ、うそっぽさ、いいのがれ。ひたかくしに、しらばっくれ、などなどご都合主義のしらじらしい印象操作の光景。

安倍一強政権の権力者たちは、国民を愚弄するがごとく、言葉をもてあそび、質問者を冷笑するゴーマンさ、形式的な合法性だけに居すわる為政者のオゴリ、答弁のズル賢さを感じさせるものであった。

権力者におもねて忖度にはげむ政治家と官僚の自己保身の姿は哀れで悲しい。

国民に奉仕するはずの政治家と官僚に必須とおもわれる人格や品性や道義心など、これっぽっちも感じさせない国会審議の現状である。

 政治をつかさどる為政者たちの言葉の軽さと発言のウソっぽさは、戦後憲法の基本的人権と主権在民と平和主義の理念と現実の政治システムとの乖離に、根本的な原因があるのではないか。

 

2)国民の政治参加の諸相

日本の政体は、主権在民の民主主義である。その国民が、政治に関与する場面や役割は、つぎのようになる。

国民政治家:政策・制度設計・立法・予算 → 公務員行政・司法国民

↓↓         ↑     ↑    ↑

ネットに書き込む    ①議員になる   ↑    ↑

新聞に投稿       ↑    ③公務員になる ↑ 

集会、勉強会   ②選挙に投票する        

街頭デモ、街頭宣伝            ④裁判に提訴する

署名運動       ⑤議員に陳情する  

利権集団の組織化     ⑥政治家に献金する、ロビー活動をする。

政策批判、対案            ⑦諮問会議や審議会などの委員になる。

↑↑          ↑↑         ↑↑

一般国民・マスコミ・ネット 権益団体・党派など  有識者・専門家・御用学者など  

 

この現実は、主権在民の理念と大きなギャプがあるのではないか。

国民が政治に参加できる政治システムを、選挙制度だけではなくもっともっと問題とすべきではないか。

国民主権の理念と民主主義政体の強化に向けて、つぎの諸制度から構成される政治システムを根本的に問いなおすべきだとわたしは考える。

①参政権の年齢制限、政治教育、政治家の資質養成

②都道府県制度を前提にした小選挙区比例代表選挙制度

衆議院と参議院の二院制

④国会を国権の最高機関とする三権分立

⑤政党政治と政党助成金

⑥議員内閣制と総理大臣・内閣府の権限

⑦国会よりも優先する行政府による法案準備

⑧政府が諮問する有識者会議

⑨地方行政の自治制度、町内会・自治会

⑩憲法審査会による憲法改正案の作成、国会発議、国民投票

いまや、インターネット、ビッグデータ解析、人工知能、シミュレーションなどを駆使できる高度情報技術社会である。だれでも気軽に政治にたいして意見を発信できる社会である。

ネット社会のコミュニケーション基盤を、国民の意見→{政策・制度設計法案・財源案→政策実施}→国民の評価という政治プロセスに適用すべきではないか。

現実の政治システムはあまりにも時代錯誤といえる。

 

3)ネット社会にふさわしい主権在民を充実する政治システムのイメージ

ネット社会に適応した政治システムの設計に、もっともっと人類の英知を結集できるはず。国民それぞれは、政治に関心はなくともそれぞれの立場で問題意識や意見や要望をもつ。

学者や評論家や専門家や現場実務者も、それぞれ様々な学説や政策案を発信する。

これらの民意を集約して政治に反映する政体が、民主主義という主権在民の理念である。主権在民を実質化する国民の政治参加の仕組みを、つぎのようにイメージする。

 

①国民 意見、要望、提案など

      ↓ 個人的な意見、町内自治会や職場などの集団的意見、専門家の見識など

 A  国民会議 意見収集システム  種々雑多な社会問題群への国民の声 

    ↓ 民意の整理、問題構造の定義、「私―共―公」への対応切り分け

◎「国民の声」ホームページ

 ↓

②有識者 B  憲法会議 政策立案システム  公・国家が責任をおう解決案 

        ↓ テーマごと熟議、民意を反映した複数の政策案を作成

     政策案(憲法改正案、法案、財源案)ホームページ

       ↓

投票者  選挙制度システム 

        ↓ 立候補者は、支持する政策案に優先順位をつけて実現性を訴える

      ④政治家 

     ↓ 種々雑多な国民の利害を代表するものどうしの権謀術数と妥協

   C 立法府国会 議会制度システム 

↓ 法案審議、採決、予算の配分、政策の調整、妥協、人間力

       ⑤公務員

        ↓ 

       D 行政府  E:司法裁判所  F:*国防機構 

        ↓                *憲法9条の改正、平和革命

○「予算執行計画&進捗」ホームページ  ←①国民の評価

 

4)社会問題に対応する国家主権の限界とグローバル社会の未来 

 20167月の参議院選挙で重視する政策課題の世論調査結果は、①景気・雇用、②社会保障・福祉、③教育・子育て、④外交・安全保障、⑤消費増税、⑥震災復興、⑦憲法、⑧その他であった。

これらの問題群は、おおきくつぎのように分類できる。

A:ネット社会の第4次産業革命による失業者の激増
2030年までに約750万人! → ①景気・雇用

B:財政赤字たれ流しによる国家財政破綻

財政赤字累積が1千兆円!→ ②社会保障・福祉 ③教育・子育て ⑤消費増税

C:アメリカの大統領交代による日米関係の急転

中国膨張、米国追随・自民党の矛盾拡大! → ④外交・安全保障  ⑦憲法

D: 地球温暖化、気候変動、地震列島の巨大自然災害によるカタストロフィー

生活基盤の壊滅的打撃! → ⑥震災復興

 

人・モノ・カネ・情報が、国境をかんたんにこえるグローバル社会である。

国家主権に至高の価値をおく国家運営は、グローバル社会によって、揺さぶられ、ほんろうされている。

政府は、国内の「景気・雇用」の経済・金融・為替政策に有効な手を打てなくなっている。

地球地図を人為的な国境でくぎり、自国の憲法を最高の「権威」とする国民国家の主権思想は、もはや国内統治の面でも外交関係の面でも限界がきたのだ。

ポスト冷戦時代の世界に君臨したアメリカの支配体制が揺らぎはじめた。アメリカ追従外交から脱却した未来の日本社会を設計すべき時代になったのではないか?

平和主義憲法の下で、いつまでアメリカ追従外交を続けるのか?

自民党を支持して「美しい日本」を賛美する国家主義者たちの憲法改正の思想は、アメリカ追従外交と矛盾するのではないか?

 

民主主義国家の憲法改正運動は、現状破壊と未来創造の共存運動でなければならない。その運動の推進は、差異の多様な国民それぞれの役割分担を必要とする。

a.現状を批判する役割 →抵抗者、闘争者、逃走者→造反有理、道義心

b.将来を設計する役割 →学生、政治学者、思想家、システム設計者、社会運動家

c.新社会を創造する役割 →全国各地の街づくり運動家、NPOなどの諸団体など

差異の多様性が共存できる社会とは逆の方向にむかう均質な「民族国家主義」の潮流が、グローバル資本主義に対抗して、民主主義国家のあちこちで台頭している。

「個人―社会―国家―自然」の関係性の思想と政治システムの枠組みにおいて、グローバル資本主義とナショナル民主主義を根本から問いなおすべき時代になった。

日本国憲法もこの視点から問いなおされなければならない。

憲法改正問題を、一部の国会議員にとじた憲法審査会レベルの議論に矮小化すべきでない!

 

以上  7.6    5.2