5.個人と国家 ~国家経営システムを構築するのは誰か? 201636

 

2016年3月、光陰矢の如し。東日本大震災という未曾有の天災と人災から5年がすぎようとしている。人間関係=絆の豊かさに価値を求める「災害ユートピア」という一過性の非日常的な連帯共助の時期がすぎた。

そして、「エリートパニック」に対応する「公」の日常的な国家経営システムが復活した。その社会システム=政治(民主主義+経済(資本主義+文化(自由主義)のもとで、非日常の「共」的連帯は、個々の「私」の生活条件に解体されていく。

「共」不在とはいわないまでも、「共」弱の「私―公」二階建社会­への復興回帰である。その公・国家は、これまですでに25兆円の震災復興を投入している。

ところが、復興が順調にすすんでいると評価する住民は、3割程度である。自宅に戻れない人、自宅がない人が、20万人。震災関連死者が、3400人にのぼるという。

主権在民の「自治」精神とはほどとおい、役人主導の縦割り行政。国家公務員と地方公務員の権限と能力のギャップ。じゃぶじゃぶの土建国家復興・温存の公共事業。

地域コミュニティの復興・再生などおぼつかない。

:個人自由主義と:国家統制主義にもとづく国家経営システムのどこか根本のところが、おかしいのではないか?

 

地域コミュニティついて、わたしが住むマンション団地自治会の方針は、つぎのようにいう。

<集合住宅において、共同生活者であることを自覚し、思いやりに基づく相互扶助によって、あたたかい人間的なコミュニティを形成する。>

だが、この理念と現実とのギャップは、過敏な個人情報・プライバシー保護などまことにおおきい。

では、少壮老/人生三毛作の終業期を隠居気分ですごす自分は、「人間的なコミュニティ形成」という自治会の方針に、どのように参加すればいいか?

老生は、「私―公」二階建社会の現状に、小さな穴をうがつ一灯照隅として、自治的「共」地域コミュニティを再生する希望を描けないか、と妄想する。

その主役は、資本主義競争の仕事と職場中心の壮/職業期世代ではなく、地域の人間関係を足場とする少/学業期世代と老/終業期世代ではないか?

地域コミュニティ形成プロセスは、少子高齢化社会の教育問題や老人問題の一定領域を、自治的な連帯共助でもって対応する仕組みづくりと一体ではなかろうか?

小さな地域コミュニティ形成への希望をもって、「私―共―公」の視点から「国家経営システム」の大きな思想をかんがえる。

 

◆私;個人主義の譲歩→共生思想←公;国家主義の分譲 「私―共―公」三階建社会へ

◆共生思想;

同質協調ではなく、多様な差異が分裂しながら共存する社会システムの探求。

◆実践

自治的地域コミュニティ形成 → 「私」と「公」をバランスする「共」集団ユニット創出

血縁関係にもとづかない「少―壮―老」世代が交流する「共」疑似家族人間関係の訓練。老/終業期世代が、少/学業期世代の「社会参加準備」を応援する仕組みをつくる。

 

 

5.1 少/学業期世代に期待する ~その理由  201636

1)借金1千兆円を次世代に残す老人世代の社会的責任は?

 安倍政権の一般会計2016年度予算案は、つぎとおり。

収入: 96.7兆円

 税収 57.6兆円(60%) (所得税32%、消費税24%、法人税22%、その他22%)

 借金  34.4兆円(36%)

 その他 4.7兆円 (4%) 

支出: 96.7兆円

 社会保障関係費 32兆円(33%) (年金35%、医療30%、介護9%、その他26%)

 借金返済・利子  23.7兆円 (25%)

 地方交付金等  15.3兆円 (16%)  公共事業関係費 6兆円  (6%)

 文教・科学振興費 5.4兆円 (5%)   防衛関係費   5兆円 (5%)

 その他 9.5兆円 (10%) 

日本の国家財政は、先進国で最悪の水準にあるそうだ。年収600万円の家庭が400万円ちかくの借金をして、1千万円レベルの暮らしぶりをしていることに相当する。

 

借金1千兆円 誰がいつ返すの  東京都、高校生、15

 2016224日の朝日新聞の読者投稿記事を要約引用する。

1千兆円も、誰が何のために借りたんだろう。 誰が、いつ返すんだろう。

なぜ、こんなにお金を借りたのか。

それで、どういうふうに日本が良くなったのか。 これからどうよくなっていくのか。

それらを説明してくれないとさ、返すの手伝ってとか言われても絶対嫌だよね。

借金してほしいと私ら頼んだ覚えはない。

  …途中略・・・・

ああ、日本にちゃんとお金の管理ができる人がいればなあ。

とにかく、借金は返そうね! 大人!

 少/学業期世代への教育投資予算は、5兆円以下。老/終業期世代への年金・医療・介護の社会保障予算は、20兆円をこえる。介護サービス費用は、10兆円!

 大人!の老人世代は、このギャップをどう考えるか?

 戦後70年、大人たちは平和で豊かな高度経済成長の果実を享受してきたのではないのか?

その老人世代は、「借金1千兆円、誰がいつ返すの?」と問う15歳の高校生へ、どのように答えるか?

次世代に借金1千兆円を残す老人世代の社会的責任は問われないのか。悠々自適の隠居気分ですごす自分は、つぎのような学生諸君の主張と行動に、どう向きあうか。

 

2)少/学業期世代の主張と行動

 ネットで調べたつの学生組織(日本若者協議会、SEALDsNPO法人「僕らの一歩が日本を変える」、全日本学生文化会議が、「政治にむきあう」主張と行動を、以下に要約引用する。

◆日本若者協議会 (インターネットから引用)

少子高齢化の急速な進展によって、日本では子どもや若者の割合は大きく減少しています。その結果、少数派である若者の意見は政治の場で反映されにくく、若者の政治への影響力は減退しています。

また、特定の利益団体に所属することの少ない若年層は、そもそも自分たちの意見を表明したり、団結して発信したりする機会が少ない世代と言えます。選挙以外での若者の意見を政治へ届ける取り組みも多様な主体によって試みがなされていますが、よりいっそう、幅広い若年層の意見を代弁することのできる場が求められています。

加えて、若者の意見を政治や地域社会のあり方を考える際に取り入れることは、今や世界的潮流と言えます。

欧州をはじめとする多くの国々では、若者と政府が意見を交換する公的な場があります。若者の利害に強く関係する政策を担当する「若者(青年)政策担当大臣」を設置する国も少なくありません。国連をはじめとする国際機関においても、国際会議で10代~20代が参画し、意見表明する機会を設けることが多く見られるようになりました。

そこで、日本の若者有志は、若者の声を社会へしっかりと届けるための窓口として、「日本若者協議会」を設立します。本会は、欧州各国等で見られる「若者協議会(youth council)」をモデルに、若者の団体や個人が政党や政府へ直接声を届けるための仕組み作りを行います。

 

SEALDs(シールズ:Students Emergency Action for Liberal Democracy - s

出版物 「SEALDs 「民主主義ってこれだ!」 SEALDs編著 大月書店

(インターネットから引用)

a.現状認識

日本の政治状況は悪化し続け、憲法の理念が空洞化し、日本国憲法が、危機に瀕しています。(2014年の特定秘密保護法、2015年の集団的自衛権の行使容認などの安保法制など)

b.守るべき価値

戦後70年、自由と民主主義の伝統を尊重し、日本国憲法の価値を守りたい。

c.思想

立憲主義・生活保障・安全保障の3分野で、明確なヴィジョンを表明します。

d.行動

10代から20代前半の若い世代は、思考し、そして行動します。
従来の政治的枠組みを越えたリベラル勢力の結集を求めます。

○提案

 私たちは、現政権の政治に対抗するために、立憲主義、生活保障、平和外交といったリベラルな価値に基づく野党勢力の結集が必要だと考えます。

 SEALDsは特定の政党を支持するわけではありません。しかし、次回の選挙までに、立憲主義や再分配、理念的な外交政策を掲げる、包括的なリベラル勢力の受け皿が誕生することを強く求めます。

これは自由で民主的な日本を守るための緊急の要請であり、現実主義的な政治対抗の提案です。

 

NPO法人「僕らの一歩が日本を変える」 (インターネットから引用)

今、私たちに何ができるか。常に問い続けた中で、一つの答えを出しました。『社会をおこして、明日をつくる。』
 将来解決しなければならない社会課題が山積みである今の日本の中で、私たち若者にできること。ボランティア、子育て支援、キャリア教育、地域活性事業。

若者にできる、より良い明日をつくるためのアクションである”社会おこし”は、様々な形で、数え切れないほど存在しています。私たち若者は可能性に満ち溢れています。そして同時に、今の社会もまた可能性に満ち溢れています。
 今、多くの課題を抱える日本を変えるには、課題解決のモデルケースを世界に向けて発信するには、若者と社会が共に秘めた可能性を開花することが必要です。
 一人一人が自分自身の可能性を信じ、明日に希望を持って、小さくともアクションをおこすこと。
 そして、若者が思考し、勇気を持っておこしたアクションを受け止め、力強く行動できる環境を日本の中につくっていくこと。

若者と社会が共にその可能性と向き合うことで、日本はより良い方向に向かうのだと信じています。 私たち「僕らの一歩が日本を変える。」は「若者」と「政治」に、今までもこれからも目を向けています。
 多くの社会課題を生み出す原因となる一方で、それを解決する大きな力をも持っている「政治」。そんな「政治」と「若者」が出会い向き合うことで、より良い明日をつくるための動きを、社会を、たくさんの人と力を合わせてつくっていきたい。
 その出会いから生まれる、より良い明日への一歩の積み重ねでしか、日本は変えられない。小さな一歩かもしれないけど、「僕らの一歩が日本を変える。」ということを信じて、情熱と実行力を武器に、新しい挑戦をし続けます。
 

全日本学生文化会議 (インターネットから引用)

全日本学生文化会議は、「行動し、体験し、思索する」をモットーに、次代の日本を担う若者を輩出しています。
 日米関係の在り方や普天間基地移設問題の視座を見出すためアメリカに赴き 保守系シンクタンクの研究員や新聞記者などに取材を行いました。
 また、拉致問題の解決のためには、日韓連携して拉致被害者救出運動に取り組むことが重要であるとの見解から、韓国に赴き、韓国の拉致被害者家族と交流を行っています。
・アジア秩序の安定を考える文化会議

 軍事的にも経済的にも台頭する中国。その中国が今、我が国固有の領土である尖閣諸島の領有権を主張しています。平成2297日の尖閣事件以来、我が国の領海に中国政府の船が出入りするようになりました。
 そればかりか「琉球奪還・収回沖縄」とのプラカードを掲げてのデモを行ったり 「沖縄は中国のもの」とする論文を多数発表したりしています。
 私たち全日本学生文化会議は、中国の実態を調査し、アジアの命運を左右する沖縄問題に積極的に取り組んでいます。

・戦歿者慰霊事業に取り組む文化会議

先の大戦で我が国を守るため亡くなられた戦歿者の方々の慰霊顕彰事業 に取り組んでいます。
 また、大東亜戦争の激戦地を巡っての慰霊巡拝にも取り組んでいます。特に沖縄には毎年足を運んでおり、沖縄戦体験者や遺族の方々からお話を伺っています。 

・皇居勤労奉仕に取り組む文化会議

 たちばな奉仕団を編成し、全国の女子学生による皇居勤労奉仕に取り組んでいます。勤労奉仕は平日の4日間、皇居の中で落ち葉掃きや草抜きなどの清掃奉仕に取り組むものです。

 

3)国家経営システムと国民の政治参加

江戸時代の幕藩体制が崩壊してから現代まで150年の歴史。その前半80年の「創造→発展→崩壊」の歴史は、明治維新→大日本帝国建設→敗戦であった。

後半70年の「創造→発展→??」の歴史は、新憲法発布→平和経済大国→??であるが、その平和経済大国だった日本も、??=「崩壊と創造」がすでにしずかにはじまっているのではないか。

国内統治(立法、行政、司法)と国際関係(外交、国防)を目的とする国家経営システムを、根本から問題とすべき歴史的な状況ではないか。

 

◆国家経営システムの機能は、国民の要求を実現する「設計(法案)、構築(立法)、運用(予算、行政)」である。

国民の要求{法案→立法}*{予算→行政}国民生活要求(改善、改革、革命)

 

政治は、立法・予算・行政を司る国家権力者=為政者=公務員の仕事である。「主権在民」である国民により選挙された議員が、政策を立案し法律予算を策定する。国家資格試験に合格した公務員(官僚・役人)が、政策実施の行政をになう。

 この「公」領域の政治が、「私」および「共」の国民生活をおおきく左右する。そして、政治の国民生活への影響は、少壮老の各世代および私・共の多様な社会集団の生活条件と地域条件によっておおきくちがう。

 では、政治家でも議員でも公務員でもない一般国民は、政策={立法予算→執行}という政治に、どのように参加できるか?

「国家の主権者」とみなされる国民は、選挙投票のほかに政治にどのように参加できるか?

主権在民とはいいながら、選挙権をもたない少/学業期世代の若者たちは、どのように政治に参加できるか?

 

◆選挙以外の政治参加

日本は、言論の自由が保証された民主主義体制である。

個人や業界団体や労働組合や市民運動組織や政治団体党派や学者だの評論家だのマスコミなどが、立法、予算、行政にかかわる国家政策の作為と不作為に対して、さまざまに賛否の意見・異見・提言を表明する。

国家政策にたいする自分たちの主張と要求をかかげて、ネットに書き込む。新聞に投稿する。集会や街頭デモをする。警察官と衝突するばあいもある。署名運動をする。駅前で演説する。チラシをくばる。裁判闘争をする。議員に陳情する。政治家に献金する。官僚と政府にロビー活動をおこなう。役所に押しかける。ときには賄賂の授受もある。などなど。

国民の一部の少数者は、専門家や有識者として、招聘されて諮問会議や審議会などの委員になり、政策提案、法案作成、予算配分にかかわることができる。

 

だが、このような選挙投票以外の政治参加など、「政治に関心ある」一部の国民にかぎられる。主権在民の民主主義といえども選挙の投票率は、高くてもせいぜい6割程度でしかない。大多数の国民は、それぞれの生活でいっぱいいっぱいである。政治活動は、生活に密着していない。お任せ民主主義にならざるをえない現実がある。

1960年前後の「安保闘争」時代には、左翼系の労働組合組織と「全学連」という学生組織が、国民的な政治活動を扇動し、先導した。

それに対抗する右翼系の団体や民族派学生組織も林立した。だが、高度経済成長の時代をへて1970年前後の過激な「全共闘」運動をピークとして、学生の政治運動は、急速に衰退していった。

労働組合が主導する政治運動も、ほとんど影響力をうしなった。

そして、時はながれて2015年。右かた上がりの度経済成長の時代は終わった。インターネットの隆盛、グローバル社会になった。

世界の状況は、いたるところカオスの様相である。

政治の民主主義、経済の資本主義、文化の自由主義という「普遍的価値」の予定調和思想が崩壊しつつある。欧米主導の世界秩序が、思想的、倫理的な次元で破綻しつつある。

主権在民の国民の政治意識と政治参加のあり方=個人と国家の関係が、根本から問われているのではないか?

 

4)少/学業期世代に期待する ~その理由

2014年ごろから高校生と大学生たちが、これまでの左翼系、右翼系、宗教系の表現スタイルとはちがう、あらたな政治参加を、ネットと街頭でうみだしはじめた。

その政治意識の根底には、個人重視の自由思想国家重視の統制思想の対立があるようだ。上から目線で国民に君臨し、「公共の秩序」を重視する国家主義をふりかざす自民党と安倍政権への賛否である。

そして、安倍首相は、「在任中に憲法改正を成し遂げたい」と言明した。

憲法が、国家経営システムの最高審級であり、国家体制の根本・骨格規定だとすれば、憲法改廃は、民主主義国家の政治意識と政治体制と統治機構の「革命」に相当するとわたしは考える。

憲法改正は、立憲主義=主権在民の国民にとって、最高の政治参加のテーマである。

 

◆未来社会の創造=憲法改正の主役は、少/学業期世代である

「憲法第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」

問題は、憲法改正草案をだれが、どのように作成し、国会議員に提出するか?である。憲法改正審議を、議員と官僚と有識者会議などの既得権益集団の代弁者に任せていいのか?

この根本問題を、わたしは少壮老の人生毛作にもとづき、つぎのようにかんがえる。

 

◆現行システムにどっぷりとひたって生きる壮/職業期世代に「革命」は無理である。

国家権力者=議員と公務員は、壮/職業期世代であり、現行システムのもっともたる擁護者である。国会議員は、自らの職を失う選挙制度の抜本的な改革に抵抗する。

大多数の壮/職業期世代である現役の大人たちは、現行システムを前提にした仕事中心の生活者である。だから、現行システムの破壊者とはなりえない。

 

◆少/学業期世代は、過去に学び、過去にしばられず、未来社会を自由に探求できる成長者である。思考停止して仕事に追われる大人よりも、はるかに健全な若者もおおい。

学問に従事する若者たちこそが、豊かな想像力=創造力を発揮して、国民の要求を反映する国家経営システムの根幹=憲法を、設計する主役になるべきじゃないだろうか。

 

◆借金1千兆円を次世代に残す老/終業期世代は、自らの社会的責任として、未来の日本社会をになう少/学業期世代を応援すべきじゃないか。

老生の希望は、少/学業期世代を代表する勇敢にして知性ある若者たちによる、未来のグローバル社会をみすえた日本国家のあり方を設計する憲法改正草案への期待である。

地域コミュニティの問題解決に創造的に取り組む少/学業期世代の行動計画に、老人世代の余裕ある者は、人生経験と専門的知恵と奨学資金を提供しようではないか。

以上    No.4.7へ         No.5.2