6.3 憲法改正にむかう手順と役割分担   2016622

明治初頭の民権運動家たちは、私擬憲法をつくって政府に提出しようとしたが、保安条例でつぶされた。

平成のいま、どんどん私擬憲法改正草案をつくり、憲法審査会にとどけよう!!

 

◆憲法改正にむかう私見要約

(1)憲法改正は、「個人―社会―国家―自然」の関係性の思想革命である。

  ◆「個人主義者―社会主義者―国家主義者」が共存する「共生思想」

(2)憲法改正の手順

Ⅰ.日本国憲法の欠陥を認識し、憲法改正の必要性を共有する勢力を拡大する

社会的諸問題→現行制度での対応失敗→国家動乱の危機→憲法の欠陥

Ⅱ.未来社会につながるソーシャルビジネスなどの社会活動の試行錯誤
◆世界通貨(市場経済)―国内通貨(税金経済)―地域通貨(自治圏経済)

Ⅲ.未来社会の「個人―社会―国家―自然」の関係性ビジョンの洗練
◆個人の自立―共同体の相互扶助←―国家主権―→国境なきxx団

Ⅳ.新憲法草案の作成
さまざまな価値観にもとづく各種の集団が憲法改正草案を公表する

Ⅴ.衆参憲法調査会に提案 →国家で発議 →国民投票
◆現行憲法の改正手続き →憲法審査会レベルの議論に矮小化すべきでない!

(3)役割分担

  少/学業期世代
・教育をうける権利 →現状および未来社会への要望を発信する。

壮/職業期世代

・国民の義務 →現状および未来社会の問題と対応策を発信する。

 勤労の義務問題、納税の義務問題、教育・子育ての義務問題 

・職業をつうじて、未来社会の設計と社会活動に参加する。
◆思想を共有する仲間・同志が、それぞれ憲法改正草案を作成する

老/終業期世代

・人生の総括→現実と未来の社会にめいわくをかけない老人思想の訓練

*余裕があれば、少/学業期世代と壮/職業期世代を支援する。

 

1)民主主義の現実

国民の思想・信条・意見は、十人十色である。ひとくちに「国民」といっても、少壮老/人生毛作の世代間で、役割や要望など千差万別である。

壮年世代が、国民の三大義務をはたすうえで勤労の義務問題、納税の義務問題、教育・子育ての義務問題などについても、既得権益者の自己保身から不条理な差別をもたらす社会批判者までさまざまな意見がある。

日本は、たしかにだれでも自由に自分の意見を表現できる民主主義社会ではある。

 

だが、だれもが自由に表現できても、主権在民・民主主義の制度として、差異の多様な民衆の意見を集約して、現実的な政策案(制度・法律・財源)にまとめあげるシステムは、あまりにも貧弱ではないか。

たとえば東京都知事が辞任するまでのつぎの「政治プロセス」をながめてみる。

「問題発覚→知事の釈明会見→世論の反発→第三者委員会の精査報告→「合法であるが不適切」→都知事に辞職要求の高まり→政権政党が参議院選挙への悪影響懸念→都議会が全会一致で知事不信任→知事が辞職願提出」という経緯である。

 

都民は、不満のうっぷん晴らしの表現手段しかもたない。都議会の傍聴席から野次をとばせば、つまみだされる。民放テレビ各局のマスコミは、視聴率かせぎ目的で、大衆迎合のバッシング報道をくりひろげるお祭りさわぎである。

都知事が辞職したから、つぎは50億円をかけた知事選挙のお祭りイベントである。

日本にかぎらず、アメリカでもイギリスでも似たり寄ったりのマスコミ風景のようだ。これが自由な民主主義社会の現実である。

わたしの問題意識は、主権在民・民主主義思想を実現する国家システムの設計である。

個人的な「憲法改正」の提案などおおげさな妄想にすぎないだろうが、隠居老人の未来への希望として、「国家主権の相対化」と「主権在民の実質化」を実現する憲法改正の夢をえがく。

 

2)私見新憲法の思想 → 権分立」

日本国憲法の改正問題にむきあう国民の姿勢は、つぎのように分類できるだろう。

①無関心派 自分の日常生活では「憲法改正」など関係ないから関心ない、どうでもよい。

護憲派  自民党や日本会議が唱える「憲法改悪案」に断固反対する。

改憲派  つぎの三つに分類する。

a.敗戦・降伏の状況で占領軍に強制された憲法を廃して、自主憲法を制定する。

b.憲法9条の理念と現実との矛盾を解消するために憲法を改正する。

c.その他、是々非々におうじる加憲や減憲など。

 

わたしの立場は、③改憲派―c.である。戦後民主主義の「主権在民」思想は形骸化しているとかんがえる立場である。改憲というよりも「廃憲→新憲」派である。主権在民を実質化する新憲法制定を提唱する。

「主権在民」をうたう日本国憲法の真髄は、国民の代表者をえらぶ選挙制度である。

国会議員という代表者が、社会問題を解決する「政策立案」と「政策執行」の国家権力を行使する。だが、国会議員の現実は、「政策立案」活動よりも「選挙民対応」が主たる活動である。「政策立案」能力なき国会議員センセーもすくなくない。

「政策立案」と「政策執行」を一体化するこの国家権力の政治制度を、わたしは日本国憲法の根本的な欠陥とみなす。

だから、つぎのように提案する。

「政策立案」と「政策執行」を分権化する

政治活動を「政党選択」から「政策選択」に転換する。

この転換を実現するために現行の選挙制度をつぎのように改正する。

①「政治家・議員を選ぶ」選挙制度から「政策案に投票する」選挙制度に変える。

②国民の差異の多様な価値観・思想にもとづく「複数の政策案」を作成する権限をもつ「国民会議」と「憲法会議」を設置する。

③国会議員の選挙は、特定の政策案の支持を表明する立候補者に国民が投票する。

 

◆政体を変革するための憲法改正→「権分立」

A:「国民の意見・要望・社会問題の提起」プロセスとB:「社会問題→政策(制度設計・法案・財源案)を立案する」プロセスを制度化する。

高度情報技術(IT)により国内外の意見を収集し、ビッグデータ解析、人工知能、シミュレーション技術を駆使する「政策立案」システムを構築する。

・・・・・・・・

①国民 庶民、町衆、市民、政治家、社会運動家、評論家、専門家、学者、ジャーナリストなど

A:意見、要望、提案などを提示する → A:国民会議 

                        ↓ ↑   

②有識者・専門家                  B:憲法会議 ←テーマごとの審議集団

B:国民会議に集約された国民の意見を反映して複数の政策案を作成する

  政策案(制度・法案・財源案)  憲法改正原案 

      ↓

   ◆選挙制度 政策案への投票 ←大きな基本政策ごとの選挙投票

                     

政治家・公務員 → C:立法議会 D:行政府 E:司法裁判所  F:地球警察隊 

 

3)グローバルな社会問題に対応する国家主権の限界 

 20167月の参議院選挙で重視する政策課題の世論調査結果は、①景気・雇用、②社会保障・福祉、③教育・子育て、④外交・安全保障、⑤消費増税、⑥震災復興、⑦憲法、⑧その他、である。

わたしは、これらの問題群をおおきくつぎのようにくくる。

A:ネット社会の第4次産業革命による失業者の激増
2030年までに約750万人! → ①景気・雇用

B:財政赤字たれ流しによる国家財政破綻

財政赤字累積が1千兆円!→ ②社会保障・福祉 ③教育・子育て ⑤消費増税

C:アメリカの大統領交代による日米関係の急転

中国膨張、米国追随・自民党の矛盾拡大! → ④外交・安全保障  ⑦憲法

D: 地震列島の巨大自然災害によるカタストロフィー

生活基盤の壊滅的打撃! → ⑥震災復興

 

◆グローバル世界の社会問題

201661日、安倍首相は「消費増税延期」を発表した。

その理由は、増税による消費減少→景気後退→税収減ということだけではない。中国をはじめとする新興国の経済の不安定、海外経済の不透明感である。

グローバル世界の変動が、日本国民の生活に直結する時代になったのだ。

A :景気・雇用

孫正義社長がひきいるソフトバンクグループの連結売上高は約9兆円、有利子負債は約12兆円。これからの大型投資先は、ロボット、I0T(モノのインターネット)AI(人工知能)、アジア諸国電力融通事業、自動運転電気自動車などらしい。

高度情報技術によるグローバルな投資事業の拡大は、あきらかに「景気・雇用」におおきな影響をおよぼすだろう。

おおくの仕事が代替され存在価値を失う。失業者が街にあふれることになる。

 

B :国家財政

政策シンクタンクの「東京財団」が、国の財政の将来像をネットで公開している。

2014年の政府の債務残高(国・地方・社会保障基金の合計)は、1200兆円をこえる。税率が8%ままで、2%程度の経済成長や物価上昇を前提にした推計では、2027年の債務残高は2000兆円をこえ、2050年には6700兆円をこえるという。

団塊世代の後期高齢者の増加は、まいとし1兆円の介護・医療の社会保障費を増やし続ける。おかげで平均寿命はさらにのびる。団塊世代が死に絶えるまで、この事態はつづくのか。

 

C :国際関係

グローバル市場の為替取引高の2013年の1日あたり平均値は、日本円換算で約580兆円。2000年にくらべておよそ4倍にふくれあがっている。実体経済の決済のための換金為替よりも変動通貨相場の上下を利用したギャンブル的なマネーゲームの為替操作が拡大している。

外交においては国家主権を主張しながら、北方領土はロシアに、竹島は韓国に占領され、中国は尖閣諸島周辺の領海侵犯を繰り返す。沖縄の土地の一部は、アメリカ軍が駐留する治外法権地域である。

 

D :日本列島

東日本大震災、熊本地震が、おおくの日本住民の生命と安全と社会生活に危機をもたらしている。日本列島の地下にはマグマがたまっている。

政府の地震調査研究推進本部は、南海トラフ巨大地震など今後30年以内に強い地震が発生する確率をしめす2016年版「全国地震予測地図」を発表した。

地球温暖化、気候変動、生態系の破壊など、国境に関係なく自然はうごく。地球は人類など必要としないが、人類は地球を必要とする。

 

◆国家主権の限界 

地下のマグマだけでなく、おおくの日本人と日本社会にもマグマがたまっている。

国民国家の存在を大前提にして、国家主権を主張するだけで、これらのABCD問題群に対応できるだろうか?

人・モノ・カネ・情報が、国境をかんたんにこえるグローバル社会である。国家主権に至高の価値をおく国家運営は、グローバル社会によって、揺さぶられ、ほんろうされ、国内の「景気・雇用」の経済・金融・為替政策に有効な手を打てなくなっている。

国境をこえたグローバル資本主義の自由競争にくらべて、国内にとじたナショナル民主主義の政党政治など、コップのなかのから騒ぎのような光景にみえる。言葉が軽すぎる。

地球地図を人為的な国境でくぎり、自国の憲法を最高の「権威」とする国民国家の主権思想は、もはや国内統治の面でも外交関係の面でも限界がきたのだ。

 

4)憲法改正運動は、現状批判と将来設計と創造活動の平行運動である

①景気・雇用は、非正規社員の増加や賃金格差など不満のマグマがたまっている。

②社会保障・福祉は、死生観なき未熟老人の増加など老人福祉制度が崩壊寸前。

③教育・子育ては、親にも学生にも不満のマグマがたまっている。

④外交・安全保障は、日米同盟を強化する米軍基地への沖縄人のマグマが爆発寸前。

⑤消費増税は、国民の大多数が反対するが、国家財政は破たん寸前。

⑥震災復興は、活断層へのあらたな知見と原発再稼働への不安のマグマがたかまる。

A:ネット社会の第4次産業革命による失業者の激増

B:財政赤字たれ流しによる国家財政破綻

C:中国の膨張とアメリカの大統領交代による日米関係の急転

D:地震列島の巨大自然災害によるカタストロフィー

これらの問題にどのようにたちむかうか。

 

社会的諸問題 →現行制度での対応失敗 →不満、憤怒、憎悪→暴動、国家動乱

社会問題は、まず現行の諸制度を前提にして対応するしかない。

安倍政権が、アベノミクスのエンジンをふかし、一億総活躍社会プランを実行すれば、ABCD問題群にひそむ社会不安は、解消されるだろうか。

現行の諸制度を前提にして、これらの問題群に対応できない状況をだれもが目撃することになってはじめて、現実の政治の限界と無力が認識されることになる。

では国民は、政治家たちの無力と限界にどうたちむかうか。

 

社会的諸問題→現行制度での対応失敗は、国民が国家権力にむける不満、憤怒、憎悪をたかめる。絶望→テロ、暴動→秩序の崩壊、既得権益者の追放・処刑、強力な独裁権力の登場→強権的秩序の回復というプロセスは、古今東西の歴史にきざみこまれている。

現行の諸制度の限界が、政治体制を規定する憲法そのものに起因するという意識がおおくの国民感情になったときに、はじめて憲法改正への必要性が共有される。

憲法改正は、現状維持による将来展望への根本的な否定を前提にする。それは過去からつづく国家制度の基盤を変革しようとする「破壊→創造」運動と表裏一体である。

 

現状の政治制度を温存しながら、めさきの諸問題に対応していく既得権益者にとっては、憲法改正など必要ない。護憲派は、現状維持の既得権益集団なのだ。

現状批判→改革→新社会建設は、かならず既得権益者との対立をうみだす。人類の歴史は、暴力による血に塗られた権力闘争のくりかしである。

国家興亡の歴史は、新興勢力の「破壊→建設」と既得権益者の「没落→転身」のドラマである。「創造なき破壊」は、カオスな混乱をもたらすだけである。

その現実の実例が、アメリカ外交がもたらしたアラブ世界の混沌たる状況である。

 

◆民主主義による問題解決への思想進化

国家制度に関する思想対立を暴力ではなく、衆議による調整と妥協によって解決していく人類の知恵が、「民主主義」の思想であろう。

「民主主義」思想は、自由で多様な差異が共存できる社会を「よき社会」とする。

現状維持にしがみつく既得権益者の生き方も自由である。現状を批判する社会変革者の生き方も自由である。

社会問題群への姿勢や意見は、感情論から専門的見識まで十人十色、有象無象の玉石混交である。高潔な人間も低劣な人間もひとしく意見を発する。

だれかの意見や問題解決案が、「絶対に唯一ただしい正解である」ことは、ありえない。

問題設定とその対応策の「正解」は、民主主義の手続きによる討議と熟議の「とりあえず」の妥協の結果でしかない。

それが、主権在民という民主主義というものだと理解する。

 

民主主義国家の憲法改正運動は、「現状破壊とどうじに未来創造」の共存運動でなければならない。

民主主義国家の憲法改正運動は、差異の多様な国民それぞれの役割分担を必要とする。

a.現状を批判する役割 →逃走者、抵抗者、闘争者→造反有理、違法でも道義あり!

b.将来を設計する役割 →学生、政治学者、思想家、システム設計者、社会運動家

c.新社会を創造する役割 →全国各地の街づくり運動家、NPOなどの諸団体

既得権益者であっても、なんらかの程度で将来設計や未来に希望をもてる小さな社会活動への参加は可能であろう。

 

民主主義国家の憲法改正運動は、破壊活動と創造活動が平和的に共存して、役割分担する仕組みに知恵を結集しなければならない。

多様な差異を前提にする「民主主義」思想は、人々を均質に一体化する「全体主義」思想に対抗する知恵と実践をきたえなければならない。

サヨク護憲派とウヨク改憲派が対立する差異の根本思想を探求しなければならない。

自由な世の中が、余裕のないギスギスした不寛容社会になっている。

差異の多様性が共存できる社会とは逆の方向にむかう「民族国家主義」の潮流が、グローバル資本主義に対抗して、民主主義国家のあちこちで台頭している。

「個人―社会―国家―自然」の関係性の思想とシステムにおいて、グローバル資本主義とナショナル民主主義を根本から問いなおすべき時代になった。

日本国憲法もこの視点から問いなおされなければならない。

憲法改正問題を、一部の国会議員にとじた憲法審査会レベルの議論に矮小化すべきでない!

 

以上   6.2     6.4