4.7 「私」と「公」をバランスする「共」の「実践―思想―哲学」  2015年12月16日

 

1)「私」と「公」をバランスする「共」の問題意識

これまでマンション団地に住む老生の身辺にかかわる三つの事例(a.通路開設、b.海水面利用、c.納税問題)をとりあげ、その問題意識をつぎのように述べてきた。

  マンション団地社会は、「お任せ民主主義」の日本の縮図であるということ
・「私」と「公」の関係、個人・自由主義と国家主義(官僚主義)の関係

  自治会と管理組合は、共有施設を「自分たち」で管理するという「地域コミュニティ」の直接民主主義」の実験場だとかんがえること
・「私」と「共」の関係、住民が「共に」生活環境を維持するという「共生思想」の創造

  「地区連絡会」が、横浜市がかかげる「地域コミュニティのエリアマネジメント」活動主体になりえるのじゃないかとかんがえること
・「共」と「公」の関係、市民と公務員、立法プロセスと行政プロセスの民主主義

  地域コミュニティの活動は、少/学業期と老/終業期の世代間交流を基盤とすべきじゃないかとかんがえること
・少壮老/人生
毛作、壮/職業期世代は仕事でいそがしい。地域には関心がない。
・老/終業期世代が、社会的責任として少/学業期世代の社会参加を応援する仕組み
・身辺の「共」の実践を通して「公共」を独占する国家を「公」と「共」に分離する
・「共」が国境をこえてグローバルに展開する世界像を以下のように妄想する

  「私と公」関係をバランスする「共同体的自治精神」の「共生思想」を探求すること
・「公」からの一定の自立→自治集団→国民国家権力の相対化→国境の溶解→非戦

  「共生思想」にもとづく人類社会の未来の世界像を夢想・妄想すること

a.グローバル社会における国家主権を相対的に縮小する「半国民国家像」への夢

b.第二次世界大戦の戦勝国が支配する国際連合機構を創造的に解体する夢

c.日本国憲法の理念をかかげて国際交流機関と集団的自衛「地球警察隊」を創出する夢

 ⑦西欧流の人間像、社会像、知性を脱した「共生思想」であること

  ・欧米流の「自由、人権、民主主義」を絶対的な普遍的価値とする一神教への対案

  ・欧米流の「独立した強い人間像」に日本人の「もたれあい助け合う人間像」を対置 

  ・欧米流のコスモス予定調和の知性にカオス*ソフト*ハードの差異多様性の知性を対置

  「共生思想」にもとづく憲法改正にむけて思想運動をおこすこと

1.政治家・官僚を育成する仕組み
*個々の政治家・官僚の知性、理性、品性のレベルを上げる仕組み

2.国会議員を選挙する仕組み
*行政単位を基礎区画とする「小選挙区比例代表並立制度」の見なおし
*多数決独裁翼賛体制に容易に転化する民主主義の根本思想の問題 

3.法案上程の仕組み
*選挙で選ばれていない有識者専門家会議で法案の骨子が決まる問題点

4.法案を熟議して加除修正しながら妥協・合意により成立させる仕組み
*国会で議論するまえに政府与党案が最終決定されるという問題点
*衆議院と参議院の二院制度の見なおし

5.国民国家・国家主権を前提とした「戦争放棄・平和主義」の矛盾
*「憲法9条―自衛隊―米軍基地」を容認する憲法解釈の正当性と正統性
日本は平和憲法をもつ特殊な国家である」宣言を世界に向かって発信する
*自衛隊の機能仕訳→国土防衛と集団的自衛「地球警察隊」構想

6.国権の地方自治と地域自治への権限移管
*地域コミュニティ(町内会・自治会)を行政基礎単位とする制度設計

7.西欧流の「自由・基本的人権」を普遍的価値とする一神教の思想性を再検討

*日本人の感性にそくした人間像にもとづく私共公の関係性の制度設計1.政治家を育成する仕組み

 

2)「共生思想」を探求する「私―共―公―天」の枠組み

国家が独占している「公共」を「公」と「共」に分離する

◆「私―共―公」は、「天網恢恢疎にして漏らさず」の「天」のもとで生きる

私:自分、個人
生命・自然・自律→身心頭の欲望充足、生→少壮老→死

共:自分たち
家族、隣人、仲間、法人、民族(伝統文化共同体)→社会、世界

公:国民、市民
国家、秩序統制、制度(立法―行政―司法)→権力構造

天:人類

自然(植物、動物、人間、地球、宇宙)→超越、八百万の神々、お天道様

 

3)共生思想を必要とする問題意識

 ~「私と公」の突出、「共」と「天」の劣化

 a.現代社会は、国家が「公共」を独占している

b.「私」が分断化されてアトム化し孤立している

c.「私」→「公」のお任せ民主主義、多数決独裁主義、国家主義がつよまる

d.「天」の超越性への畏怖畏敬の念を失ってゴーマンな人間中心主義である

 

4)現代社会思想の特徴と問題点

 私:自由、人権、主体性、強い自我、強くて理性的な人間像
→個人主義、自己本位、単独者、自由人、隠遁者、利己主義者など

共:家族の崩壊、地域共同体の崩壊、集団主義の否定
→国家への依存、国家社会主義・全体主義へ

公:法治国家、官僚制、資本主義競争と社会福祉救済、国家主権の絶対化
→民主主義の形骸化、格差、貧困、競争激化、不安、戦争、世界の混乱

天:自然の非精神性、科学と工学の功利的対象化
→ゴーマンな人間中心主義、環境破壊、道義心の喪失

 

5)現代社会の問題点を克服する「共生思想」のイメージ

~西欧近代思想の価値観を脱して日本列島・日本人の精神性の価値観を重視する

~コスモス思想(普遍、真理、統一)からカオス思想(個別、多様、分裂)へ
~みんな同じ均質「共生」から差異の多様性の分裂・共棲の「共生」へ

私:自由・人権・主体性を絶対視しない人間像

→身心頭の欲望が分裂したカオスな人間像、理念的人間像でなく生身の人間像

共:血縁関係にもとづかない「少―壮―老」世代が交流するソフトな疑似家族関係
→自治的地域コミュニティを形成する要素としての社会集団ユニットの形成

公:一元化された中央集権国家権力を分権化する新たなグローバル国家像

→国内統治は地域自治を「共」へ権限移譲

→国際関係の紛争解決は、軍隊を「地球警察隊」へ移管
→国民の「半国民人種化」;ローカル人種*ショナル人種*グローバル人種

天:自然への畏怖と畏敬・縄文アイヌの精神性
→往還思想、則天去私、死生観、人生論、少(無我)→壮(自我)→老(大我)

 

6)「共生思想」にもとづく未来社会の展望

~「天」自然・生命を畏怖する日本人の伝統的な精神性をとりもどす実践活動
→源流却来、縄文アイヌ琉球にのこる精神性、相互主観性の再興

~人間の生命と理性だけを過度に尊重する人間中心主義を否定する活動
→人間中心の生活環境と価値観を問いなおす田園回帰の促進

~「天」の下で「私」カオスと「公」ハードをバランスさせる「共」ソフトな社会をめざす
→敬天愛人、「天」を介在する人間関係=差異の多様性の共存社会

a.「私」個人主義と「共」集団主義と「公」国家主義が共存する社会

b.壮/職業期世代の「共」思想は、企業等の資本主義経済活動を実践する

c.少/学業期世代の「共」思想は、地域コミュニティ形成の参加を実践する

d.老/終業期世代の「共」思想は、少/学業期世代の応援を実践する

 

7)「私」と「公」をバランスする「共」の実践にかんする課題  

「私」は生活者である。「公」は公務員である。「私」と「公」の関係は、「私」国民と「公」政治家・公務員との関係性であり、主権在民の民主主義の実践であり、政治参加のあり方である。

立法プロセス→議員制度

国民・有権者・個人→選挙→代表;国会議員→法律・政策・予算の策定

行政プロセス→官僚制度

国民・個人→就職→公務員法律・政策・予算の執行→国民への奉仕

日本国民としての「公」の実践は、①政治家を選挙する、②自ら公務員になる、③政治家と公務員を利用する/自分の要求実現に圧力をかける/有識者諮問会議など専門的に支援するなどとなる。

政治に参加する現実の「共」は、うえの③になるのであろう。その「共」は、労働組合であり医師会であり農業団体であり財界であり各種市民運動団体などである。これらの「共」は、主に仕事中心の壮/職業期世代が自らの経済的要求および生活上の要求を政治に反映させる組織体である。

地域住民としての「共」の実践は、たとえば、a.通路開設、b.海水面利用、c.納税問題対応への参加である。

この「共」は、「公」とどのように関係するか? 地域住民として、「公」にどのように参加できるか?

憲法は、民主主義プロセスの制度として「共」を規定していない。「私」と「公」の関係だけである。

◆「共生思想」は、自治会・町内会を民主主義プロセスの制度に位置付ける憲法改正を要求する。(==>憲法改正の論点整理)

 

8)「共に生きる」共生思想の探求と民主主義の関係

隠居老人の老生は、「公」と「共」の実践に直接的には参加しない。間接的参加として、未来の社会をになう少/学業期世代を応援することを、「公」と「共」の実践とするだけである。

その理由は、生→{少→壮→老}→死という人生毛作の人生論、死生観、老人思想、往還思想にもとづく。

その個人的な人生観にもとづく老人世代の社会参加の気持ちが、「多様な差異が共に生きる」共生思想を探求する理由である。

その具体的な目標は、期間限定・ほどほどの疑似家族関係の実践である。

血縁関係にもとづかない「少―壮―老」世代が交流するソフトな疑似家族関係

→自治的地域コミュニティを構成する要素としての社会集団ユニットの形成

「私」と「公」をバランスする「共」の実践を、地域コミュニティ・社会システムの設計→構築→運用→評価の試行錯誤としたい。

この試行錯誤のプロセスにおいて、①公務員に就職する意味、②政治家を選挙する意味、③政治家と公務員に向き合う意味などの理解を深めることができるだろう。

この理解の深まりと了解こそが、民主主義の訓練であり、直接的な民主主義の実質なのではないかとおもう。政治家に陳情するとか、街頭デモに参加するとか、集会に参加するとか、署名運動をよびかけるとか、住民運動を立ち上げるとかなどだけが、民主主義の実践ではなかろうとおもうからである。

 

9)「共生思想」を探求する思考法式、哲学

◆国家システム={(私){共}公}*縁*{世界諸国(私){共}公}/自然・天

◆システム工程= 目的・要求→設計(要素・関係)→構築→運用→結果・評価

◆カオス*ソフト*ハード多元多重システム/ 分裂・棲み分け・共存

◆潜在性(+条件)→可能性(+条件)→ 実現性/{在る→為す→成る}

  (==>詳細は別稿;社会システム論)

以上  4.6    5.1