7.4 憲法第三章「国民の権利及び義務」に関する改正案  20161030 

 

◆日本国憲法 第3章 国民の権利及び義務

第10条(国民の要件)  第11条(基本的人権の普遍性、永久不可侵性、固有性)

第12条(自由及び権利の保持責任と濫用禁止)

第13条(個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉)

第14条(法の下の平等、貴族制度の禁止、栄典)

第15条(公務員の選定及び罷免権、全体の奉仕者性)  第16条(請願権) 

 第17条(国及び公共団体の賠償責任)

第18条(奴隷的拘束、苦役からの自由)

 第19条(思想及び良心の自由) 第20条(信教の自由、政教分離)

第21条(集会、結社、表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密)

第22条(居住、移転、職業選択の自由、移住、国籍離脱の自由)

第23条(学問の自由)  第24条(家族生活における個人の尊厳と両性の平等)

第25条(国民の生存権、国の社会保障的義務)

第26条(教育を受ける権利、教育の義務)

第27条(勤労の権利義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止)

第28条(労働基本権)  第29条(財産権)   第30条(納税の義務)

第31条(刑罰の法定手続の保障)

第32条(裁判を受ける権利)   第33条(逮捕の要件)

第34条(抑留、拘禁の要件、拘禁理由の開示) 第35条(住居の不可侵、捜索、押収)

第36条(拷問及び残虐刑の禁止) 第37条(刑事被告人の権利)

第38条(不利益供述の不強要、自白の証拠能力)

第39条(遡及処罰の禁止・二重処罰の禁止) 第40条(刑事補償)

 

1)憲法第三章の条文構成をどう理解する?

→個人尊重、基本的人権がキーワードだろう。

戦前の明治憲法は、基本的人権を抑圧した。戦後憲法は、明治憲法を廃棄して制定されたものである。念には念をいれて、さらに最後の第10章で、つぎのように規定する。

第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 これは、第11条(基本的人権の普遍性、永久不可侵性、固有性)のだめ押しである。

 

第11条から第17条は、原則規定であるが、冗長な感じがする。日本語として、すっきりした文章構成とはおもえない。

わたしは、憲法の理念を「自分―人間*個人―{社会(国民*公務員*国家*世界)}―自然」という遠近法の枠組みにあてはめて、つぎのように理解する。

①人間は、自由な個人として、尊重される

②国家は、憲法にもとづき、国民が自由に安全と幸福を追求する基本的人権を保障する

➂国民は、公共の福祉に責任をもち、その限りでのみ基本的人権が抑制される

国民は、国家の主権者として、法律を制定し執行する公務員を選定し、罷免する

国民は、法の下で平等であり、差別をうけない

 

18条から第40条までは、憲法が国民に保障する自由と権利のカタログをつぎのように列挙する。

奴隷的拘束や苦役を受けない権利、思想及び良心の自由、信教の自由・集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密、居住・移転・職業選択の自由、移住・国籍離脱の自由、学問の自由、婚姻の自由、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、教育を受ける権利、勤労の権利、勤労者が団体行動する権利、私有財産の権利、裁判を受ける権利など。

 

第26条(教育の義務) 、第27条(勤労の義務)、第30条(納税の義務)が定める国民の三大義務の論理を、つぎのように理解する。

 国家権力を行使するために、公務員は、公共事業をおこなう。

①公共事業の財源として、国民は納税の義務を負う。

②納税する所得をえるために、国民は勤労の義務を負う。

勤労できる能力を備えるために、国民は子供を教育する義務を負う。

 

2)憲法第三章を改正すべきだとかんがえる根本的な理由はなにか?

 「人間*個人―{社会(国民*公務員*国家*世界)}―自然」の枠組みからみて、現行憲法は、人間と社会の関係性への思想が不在である。

公務員が「公共」事業を独占し、「共」が「公」に吸収されて「個人と国家」の「私―公」二階建の国家思想である。憲法の思想は、「私」個人主義と「公」国家主義の二元論であり、社会的関係性の相互扶助にもとづく共同体の共生思想に言及しない。「共」不在の「私―公」二元思想を、わたしは日本国憲法の根本的な欠陥だとかんがえる。

 

日本国憲法は、「個人の自由」資本主義経済思想と「人権尊重」社会主義政治思想を両軸とする国民国家体制を前提とする。

◆個人主義→自由競争にもとづく資本主義市場経済は、国境をこえ国家主義の統制をこえてグローバルに展開する。公的な主権国家が、肥大化した私的な多国籍企業に翻弄されている。

◆個人主義→人権尊重にもとづく社会主義救済制度は、国家主義の行政機構を肥大化させ、国家財政に危機をもたらしている。

 

私企業の「神の見えざる手」競争市場に依存する国家の「計画経済」成長戦略という、根源的な矛盾が、人類の合理的な知恵の限界をしめし、国民国家存立に危機をもたらしている。

国民の社会的不安は、少子高齢化社会において、①子育てと教育への不安、②成人しても結婚できず、雇用失業と所得格差への不満、老人の不自然な不老延命措置など各世代において、「ほどほどの暮らしで自然に生きて死ぬ」という未来への希望を育てない。

自由競争と人権尊重を両極とする自制心なき貪欲なる個人主義は、国家主義にもとづく過剰なる管理統制社会を助長する。

 

「私」個人主義と「公」国家主義に起因する根本的な社会問題を克服するためには、「私」と「公」を媒介する「共」としての家族、町内自治会、村落共同体、団体法人、零細企業等の「相互扶助」集団を、日本人の伝統的な精神性として、もっともっと重視すべきだとかんがえる。

個人が、自由に安全と幸福を追求し、公共の福祉と社会秩序を維持するためには、「個人と国家」の二元的関係性ではなく、「私―共―公」三階層における権利と義務が、ほどよく均衡する国家構造でなければならない。

個人主義者は、「個人あって国家あり」とかんがえる。国家主義者は、「国家あって個人あり」とかんがえる。

どちらも極論である。人間は、個人と国家の中間の「もたれあい」社会を必要とする。

自由を自制し、道義心にもとづくお互いさまの相互扶助を理念とする「共生思想」を、国家権力構造に組み入れること、この主張が憲法第三章を改正する根本的な理由にほかならない。

 

戦後憲法がアメリカ占領軍に「押しつけられた」から、「独立国家に恥じない軍隊をもつ自主憲法がほしい」から、憲法改正を望むのではない。

自由競争の勝者が得た富を、自由競争の敗者に再配分するという思想だけの社会保障制度には限界がある。日本人がもつ相互扶助の道義心にもっと目をむけるべきだとおもう。日本国憲法が想定する「人間と社会」に関する西欧近代思想は、日本人である自分にとって望ましい精神性に、はなはだ合致しない。だから、憲法改正を提案するのだ。

日本列島の風土にはぐくまれた日本人の島国根性は、採集・狩猟・漁労と衣食住の生活を一体化させた縄文時代の自然崇拝の古神道を基層とする。その源流に中国大陸と朝鮮半島から流入した道教(老荘)+仏教+儒教を合流させ、「お天道様を畏敬する」という道義心を育てた。

わたしは、この天道思想を世界にほこる日本人の伝統的な精神性とみなす。

 

3)日本人の精神性にもとづき、どのように憲法第三章の改正を提案する?

→改正初案は、以下の通りであるが、他の章の改正案との整合性をはかりながら見直していく。

第10条 国民の要件 

 日本国民は、憲法と法律が定める権利を有し義務を負う者であって、日本政府が証明する日本国籍を有する個人及びその子孫とする。

     日本国籍を有する個人の要件は、法律でこれを定める。➡国籍法の抜本的な改正

11条 基本的人権の定義 

この憲法は、基本的人権を抑圧してきた国家体制の歴史を反省し、国家がすべての国民の基本的人権を尊重することを憲法によって保障する。

基本的人権とは、何人も生まれながらにして生命の維持、自由、安全、幸福を追求する個人の生理能力 の社会的承認をいう。

12条 憲法と社会生活の相互扶助

 この憲法は、国家が日本国民の基本的人権を保障する最高法規である。

国家は、国民の社会生活において、自治による相互扶助を支援する義務を負う。

13条 社会的関係性の尊重と基本的人権の制限

何人も、人類社会の一員として生きる社会的関係性として尊重される。

社会生活における国民の基本的人権は、法律にもとづいてのみ制限される。

14条 法の下の平等と法律の順守

 天皇をのぞくすべての国民の基本的人権は、平等である。

国民は、立法その他の国政において、自らの権利を、直接および間接に主張する機会が与えられる。

15条 国家権力

  国家は、国民の権利と義務を遂行するために、国家権力機構を組織する。

  国家権力は、国民会議、憲法会議、国会、行政機構、裁判所、地球警察隊の六権分立とする。

  公務員は、国家権力を行使できる資格と能力を有する国民とする。

16条 国民主権 公務員の選定および罷免

  国民は、国家の主権者として、公務員を選定し、及びこれを罷免する。

17条 公務員の不法行為

何人も、公務員の不法行為による損害に対して、その賠償を求めることができる。

第18条(奴隷的拘束、苦役からの自由)~第23条(学問の自由)までは、改正なし、現行のまま。

24条 個人と家族と社会

 個人は、家族の一員として尊重される。

家族は、相互扶助にもとづく生活単位として世帯を構成する。

25条 社会保障

  何人も、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

  国家は、その権利を実現するために、国民の相互扶助を増進する義務を負う。

26条 国民に教育をほどこす国家の義務

  国家は、国民に無償の学校教育をほどこす義務を負う。

  国家は、家族および社会がおこなう相互扶助の教育を支援する義務を負う。

27条 勤労の権利と国家の義務

  国民は、勤労の権利を有する。

  国家は、個人の能力と意志を鑑み、国民に勤労の機会を提供する義務を負う。

  国家は、勤労の場である企業等の法人を支援し、その活動を制限できる。

第28条(労働基本権)  第29条(財産権)   改正なし、現行のまま。

第30条 納税の義務

  国民は、個人および世帯を単位として、納税の義務を負う。

経済行為を営む企業等の法人は、納税の義務を負う。

第31条 刑罰の法定手続の保障

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由および財産を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第32条(裁判を受ける権利)から第40条(刑事補償)までは削除。刑事訴訟基本法に移す。

◆第32条 緊急事態

 国家は、壊滅的な自然災害および社会秩序を破壊する集団的行為を予防し、突発的な武装暴動や内乱等への対応につき、国民に協力を求める。

 

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