6.5 憲法審査会に憲法改正草案を提出する国民運動をおこせないか! 2016724

 

主権在民とは、「国民の要求→政治家の政策(制度・法律・予算)→公務員の執行→要求実現の評価」というサイクルを国民が制御できる、ということだと理解する。

20167月の参議院選挙の様相は、フランス行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し(萩原朔太郎)をもじれば、主権在民と思へども/主権在民はあまりに遠し、という感がふかい。

 

1)20167月参議院選挙の結果について私見と提案 

・少選挙区制度には根本的な欠陥がある

・政権交代可能な二大政党制を是とする政治理論は破綻している

・都道府県単位の選挙区設定がそもそもおかしい

政治家をえらぶ選挙制度から政策の優先順位をえらぶ投票制度に変えるべきである

・政党交付金制度を廃止して、「国民会議」と「憲法会議」の設置を提案する

◎国民の声をあつめる「国民会議」➡ 政策を立案する「憲法会議」→新「選挙制度」

 

投票率55%程度の選挙制度をどう解釈するか?

A投票率の推移 B;自民党の絶対得票率 C;議席占有率 (朝日新聞記事から引用

 2001年  2004年  2007年   2010年   2013年   2015

A: 56.44%  56.57%  58.64%   57.92%  52.61%   54.70

B; 21%    16%   16%     14%    18    19

C; 53%    40%   31%     42%    54    46

 2割の有権者の意向が、半分近くの多数派になってしまう選挙制度の現実!

 18歳と19歳の投票率は、45.45%!18歳が51.17%、19歳が39.66%)   

2013年の選挙では20歳から29歳の投票率は、33.37%! 

*有権者の半分ちかくが「だれでもよい、おまかせします」という平和な日本の現実!

 

比例区の政党支持分布は、二大政党制という政治理論を是とするか?

自民     民進     公明    共産     維新    社民  

20,114千票 11,750千票  7,572千票  6,016千票  5,153千票  1,536千票

35.91%   20.98%    13.52%   10.74%    9.20%    2.74

19議席   11議席     7議席    5議席    4議席    1議席

*年代別の投票先

10代 40%   17%     10%    8%      8%      

20代 43%   16%     9%     7%      8% 

30代 40%   16%     9%     8%      11% 

40代 37%   19%     10%    9%      11% 

50代 35%   21%     11%    10%      10% 

60代 33%   22%     10%    13%      9% 

70以上35%   22%     9%    10%      6

*二大政党制の実現をめざした小選挙区制度の欠陥が証明されたのではないか!

 

自民党圧勝の理由は、アベノミクスが評価されたからか?

安倍首相は、参議院選挙の争点をアベノミクスにしぼった。有権者が投票にあたってもっとも重視した政策は、20代~40代で景気・雇用と子育て支援、50代で景気・雇用と社会保障、60代以上で社会保障と景気・雇用であった。

アベノミクスは、まさに景気・雇用、子育て支援、社会保障にかかわる政策である。選挙結果は、自公政権与党の圧勝である。

では安倍首相の政策が支持されたのか?

新聞社のアンケート調査では、「野党に魅力がない、野党は信用できない」という意見が70%強、「安倍首相の政策を評価する」は15%程度でしかない。

野党が弱すぎる。民主党政権の「おそまつさ」の記憶がまだまだ根強く残っているのだろう。

政治改革をとなえ、政権交代可能な二大政党制をめざして「小選挙区制」を導入した政治家や学者や専門家たちは、この状況にこれからどのような学説と代替案を提示するのだろうか。

 

都道府県単位の選挙区設定は、支持団体の組織投票と矛盾しないか?

自民党の主たる支持団体 (5/19議席)

郵便局長会  農政連  土地改良政治連盟  建設業協会  遺族会

民進党の主たる支持団体 (4/11議席)

  電力総連  自動車総連   自治労  日教組

公明党の主たる支持団体 (7/7議席)

創価学会

 国会議員は、県会議員や市町村議会議員などとちがって、「国民の代表者」である。国民の代表者をえらぶのに、道府県単位で選挙区と議員定数を設定する選挙制度に正当性があるといえるか。

 そもそも都道府県という行政単位は、国民生活の経済活動や文化活動のひろがりを制御できる基本的な社会単位ではもはやなくなった。現代の都市社会は、地域社会の主体性が弱体化した職住分離社会なのだから。

都道府県単位の利害の要求を国会に反映する仕組みは、小選挙区制度以外に県会議員が活躍できる制度など、もっともっと知恵をしぼるべきではないか。

そもそも参議院は必要なのか。衆参二院の現状をみれば「良識の府」という理念が、すでに賞味期限が切れていることはあきらかだ。

わたしは、参議院を廃止してテーマ別有識者の専門家を主体とする「憲法会議」権力機構の設置を提案する。

 

◆政党交付金制度を廃止して、「政策立案」機構を設置すべきである

政党交付金制度は、政党の活動資金の一部を税金で助成する制度である。企業財界、労働組合、業界団体などから政党・政治団体への政治献金は、「見返りを求める贈収賄ではないか」という疑念への対策としてうまれた。

20154月確定議席割交付金(総額約320億円)

自由民主党 1704,900万円  民主党 766,800万円  公明党 295,200万円

維新の党 266,400万円  次世代の党 56,100万円 社会民主党 47,000万円

生活の党 33,100万円 元気にする会 11,900万円 新党改革 1400万円

日本共産党は、政党助成制度の廃止を主張しており、助成金受け取り団体に登録していない。その分は他の政党に配分されているそうだ。

 国会議員の活動の現状は、ほんらいの政策立案と立法機能が主とはおもえない。

「行政国家」の現実は、官高政低である。政策(制度・法律・予算)立案の実態は、内閣行政府主導である。政策立案の実質は、選挙でえらばれない官僚と有識者会議がになう。

議員センセーの活動は、もっぱら自分の名前のポスターをあちこちに貼り、支持者のあつまりに顔見世の露出度をたかめ、握手をしまくり、支持者の要求依頼を政党や役所につなぐ斡旋をすることである。

その政治活動資金として、政党助成の目的で議員報酬とはべつに交付金という名で税金が使われる。おかしいのではないか。

政治家の役割の現状とタテマエの関係を見直すべく憲法改正レベルの「政治改革」が必要であるとおもう。

「国民の要求→政治家の政策(制度・法律・予算)→公務員の執行→要求実現の評価」というサイクルにおいて、国民の声をあつめる「国民会議」➡ 政策を立案する「憲法会議」税金を配分する政策の優先順位を主張する政治家の「選挙制度」、という仕組みに憲法改正することを提案する。

国会議員選挙への立候補者は、政治活動と選挙活動において、どの政策案を優先するか、いくら税金をつかうか、をあきらかにして支持者かくとくに情熱をもやせばよい。

 

2)憲法改正のテーマ例

 朝日新聞社と東京大学・谷口研究室が共同で、参議院議員にたいして憲法改正の改憲項目についてアンケート調査をおこなった。現職議員180人の回答結果は、つぎのとおり(複数項目回答)。

緊急事態条項の新設(51%) 自衛隊・国防軍の保持(50%) 環境権の設定(48%)

地方公共団体の権限強化(36%) 知る権利の新設(29%)  一票の格差是正(29%)

 憲法改正の発議要件(29%) 財政健全性条項新設(29%)  プライバシー権(27%)

 集団的自衛権保持(23%)  憲法裁判所設置(22%)    家族条項(20%)

 教育無償化(16%) 首相公選制(14%)

 これらの中には、憲法改正というよりも基本法レベルで対応できるテーマもあるようだ。

 

3)憲法審査会に憲法改正草案を提出する国民運動をおこせないか!

憲法改正をめざす自民党を強力にあと押しするのが、「日本会議」を中心とした民間諸団体である。参議院選挙において「改憲政党の3分の2」阻止をかかげる野党は、護憲一点張りである。自民党草案への対案は、現行憲法そのものだという立場である。

憲法調査会の委員は、投票率55%程度の選挙によって選出された国会議員である。憲法審査会は、有権者総数の2割弱しかえられない自民党主導で運営される。

このような不条理な情況において、憲法改正草案の作成を憲法調査会に「おまかせ丸投げ」していいのか。

国民それぞれは、政治に関心はなくとも①景気・雇用、②社会保障・福祉、③教育・子育て、④外交・安全保障、⑤消費増税、⑥震災復興などには、それぞれの立場で問題意識をもって意見や要望をもつ。

学者や評論家や専門家や現場実務者もそれぞれ様々な意見や批判や提案を発信する。それらの声を手軽にいつでも受けつける国民の意見収集システムを制度化できないか。

主権在民を実質化する国民の政治参加の訓練場として、憲法審査会に憲法改正草案を提出する国民運動をおこせないか!

 そのようなチャネルができれば、わたしはつぎのような提案をしたい。

①国民 意見、要望、提案など

      ↓ 個人的な意見、町内自治会や職場などの集団的意見、専門家の見識など

 A  国民会議 意見収集システム  種々雑多な社会問題群 

    ↓ 民意の整理、問題構造の定義、「私―共―公」への対応切り分け

◎「国民の声」ホームページ

 ↓

②有識者 B  憲法会議 政策立案システム  公・国家が責任をおう解決案 

        ↓ テーマごと熟議、民意を反映した複数の政策案を作成

     政策案(制度・法案・財源案)ホームページ

       ↓

投票者  選挙制度システム 

        ↓ 立候補者は、支持する政策案に優先順位をつけて実現性を訴える

      ④政治家 

     ↓ 種々雑多な国民の利害を代表するものどうしの権謀術数と妥協

   C 立法府国会 議会制度システム 

↓ 法案審議、採決、予算の配分、政策の調整、妥協、人間力

        ○「予算執行計画&進捗」ホームページ

            ↓

公務員 → D 行政府  E 司法裁判所  F 地球警察隊 

◆「国民の声」ホームページの充実こそが、「主権在民」の実質化であるとおもう。

 

以上   6.4    7.1へ