6.4 おかしな選挙制度をつくりかえる主権在民情報システムの構想  201675

~その第一歩として、支持政党なし無党派層へ期待する

 

1)主権在民を実質化するための憲法改正→「ABCDEF権分立」

 政治家と政党に投票するこれまでの選挙制度を、つぎのA→B→C手順で、政策案に投票する選挙制度に変える。

A:国民の意見 →民意の収集、問題整理、対応責任を切り分ける

B:社会問題 →問題解決の政策(制度設計・法案・財源案)を立案する

C:政策案 →議員選挙→立法・予算配分・実施計画 ➡ 内閣・行政府へ指示する

これらのプロセスは、高度情報技術(IT)を活用した情報処理システムにより、主権在民を実質化する直接制民主主義に近づけることができるはずである。

 

ネットに発信された国内外の膨大な意見をてがるに収集し、そのビッグデータを人工知能で解析し、シミュレーション技術を駆使して、実現可能で整合性をもった「政策―法案―財源案」の政策セットを自動生成し、それを人間の倫理性・道義心の基準でもって再編集し、その政策案集合を電子投票にかける。

国会議員選挙への立候補者は、政治活動と選挙活動において、どの政策案を優先するか、いくら税金をつかうか、をあきらかにして支持者かくとくに情熱をもやすものとする。

 

①国民 意見、要望、提案など

      ↓ 個人的な意見、町内自治会や職場などの集団的意見、専門家の見識など

 A  国民会議 意見収集システム  種々雑多な社会問題群 

    ↓ 民意の整理、問題構造の定義、「私―共―公」への対応切り分け

◎「国民の声」ホームページ

 ↓

②有識者 B  憲法会議 政策立案システム  公・国家が責任をおう解決案 

        ↓ テーマごと熟議、民意を反映した複数の政策案を作成

     政策案(制度・法案・財源案)ホームページ

       ↓

投票者  選挙制度システム 

        ↓ 立候補者は、支持する政策案に優先順位をつけて実現性を訴える

      ④政治家 

     ↓ 種々雑多な国民の利害を代表するものどうしの権謀術数と妥協

   C 立法府国会 議会制度システム 

↓ 法案審議、採決、予算の配分、政策の調整、妥協、人間力

        ○「予算執行計画&進捗」ホームページ

            ↓

公務員 → D 行政府  E 司法裁判所  F 地球警察隊 

 

2)支持政党なし無党派層へ期待する

せっかくの国家プロジェクトの選挙イベントである。便利な期日前投票もある。選挙を実施する費用の税金をムダにしないためにも、有権者は権利行使の投票をすべきである。

直接制民主主義のせっかくの機会である。

投票したい政治家や政党の固有名詞がなければ、投票用紙に自分の意見、要望をなんでも書けばよい。

その投票は、余計なことが書いてあるから、無効票になるだろう。

だが、その無効票は貴重な政治的データである。

無効票を電子媒体にテキスト入力することは、現行制度でも許されるだろう。

その入力データをあつめればビッグデータになる。それを人工知能で解析し、民意情報として整理する。それを国民に開示する。そして、議論や熟議や闘技の機会にさらす。

「六権分立」の憲法改正にむけて、そういう政治活動をプロデュースする「国民会議準備委員会」なる公益機関を設立できないか。

 

3)民主党マニフェスト政治の失敗

政治家と官僚とは、仕事の性格がちがう、必要な能力がちがう。政治家は、生身の人間を相手にする。政治家には、どろくさい人情と大局的な人間力が必須である。

官僚は、データと法律を相手にする。公平で理性的な判断能力を必要とする。

数年前の選挙で民主党は、政策マニフェストをかかげて支持をあつめ、自民党をたおして政権をかくとくした。

無駄をはぶけば、財源はなんぼでも出てくるといった。ダム建設など無駄な公共事業をやめるといった。沖縄の普天間基地を最低でも県外移設といった。

ところがその公約は、実行できなかった。東日本大震災と原発事故の放射能汚染という未曽有のできごとだけが、政権崩壊の原因とはおもえない。

民主党という政治集団には、政策を実行する権力行使能力がなかった。既得権益集団にささえられた官僚機構に太刀打ちできる力量がなかったのだ。選挙公約というマニフェストは、絵に描いたもちにすぎなかった。

民主党が自壊せざるをえなかった根本原因を「国家論」不在の政治思想に求める。

 

基本的人権、平等、平和主義、立憲主義という政治思想は、自らの立場と国家権力を対立させる。自らの立場を被支配者の地位におく思想である。自らの立場を権力者の地位におく思想性をもたない。

民主党の政治家たちは、支配者にたちむかう市民運動の経験者である。経営者にたちむかう組合運動の経験者である。庶民生活の実務能力にうとい政治学者たちの政治理論を信奉する知識人たちである。官僚の限界を経験して政治家に転身したエリートたちである。

心情的な庶民政治家ではなく、官僚思想にちかい理念的な市民政治家たちである。

妥協をきらう理念重視の集団は、かならず内部分裂のゴタゴタをくりかえして崩壊する。

民主党は、内部分裂で自壊した。その根本原因を、「国家権力」の行使にかんする現実的で強靭な「社会と国家」論の思想不在にもとめなければならない。

 

4)これまでの政治家の典型像 ~田中角栄という政治家の人間力  

石原慎太郎が、田中角栄について「天才」という小説をかいた。その新聞広告から引用する。

~俺は世の中の底辺を知っているし体得もしている。それこそが俺の本分であり、俺の底力なのだ。

~誰か相手を選ぶ時に大事なことは、所詮人触りの問題なのだ。そのために、特に身近な相手に関わる冠婚葬祭には腐心し手を尽くしてきた。

 

元衆議院議長の渡部恒三は、田中角栄を「オヤジ」とよぶ。そのインタビュー記事を引用する。

~「天才」という本が出ているらしいが、まったく正反対だ。オヤジは努力の人。雪の深い山で生まれ、小学校出で頑張りぬいた。

~大幹事長がふんぞり返りもせず、さりげなく、でもグイグイ入り込んでくる。人の気持ちを知り尽くしているんだ。庶民の政治家でないとできないことさ。

~オヤジに比べると、今の政治家はサラリーマンという感じで本当に残念だな。

~国会の質問や演説をみていると今の政治家は、知識のひけらかしばかりで、心に訴えるものがない。

~オヤジは、大衆が何を求めているのか、何に困っているのかを腹の底から考えていた。決断と行動で人の心をつかむのが政治家なんだよ。

~いまの政治に田中角栄的なものがなくなった。それを国民が懐かしがっているのは間違いない。

 

梶山静六という自民党の大物政治家が残した「破壊と創造」という著書から引用する。

~いま政治家にとって重要なのは、・・・・、ときには国中に我慢を求め、こうしなければならないという全体像を示して信任を仰がねばならない。いささか技術論にも似た各論における「政策論争」等は、政治家のあるべき本質的な仕事とは思えない。

戦後70年もすぎた2016年のいま、世の中はおおきくかわった。

ネットで質問をいれたら「あなたの投票先は、xxx党です」と教えてくれる時代になった。高度情報システム社会である。

アメリカではトランプ現象、イギリスはEU離脱。少数の富裕者層のご機嫌をとる高位高官エリート官僚政治への反感が、大衆心理の基底にあるそうだ。

 

政治家に必要な能力と官僚に必要な能力の違いを、いまこそ重視しなければならない。

民主主義国家の「国民―立法政治家―行政官僚」の関係をあらためて問いなおすべき時代になった。

A:国民の意見 →民意の収集、問題整理、対応責任の切り分け

B:社会問題 →問題解決の政策立案(制度設計・法案・財源案)

C:政策案 →議員選挙→立法府・政策決定 ➡ 内閣・行政府へ指示

このプロセスを人間とシステムの組み合わせで実現するグローバル社会の「国家システム」を追求しなければならない。

冠婚葬祭にこまやかに心をくばり、べたべたの人情に共感し、どろくさい大衆迎合もときには必要だろう。長期的に大局をみわたす見識と、清濁あわせのみ、苦渋の選択を決断する強さも必要だろう。新たな法律と政府の定める膨大な政令や省令をチェックできる鋭利な能力も必要であろう。

社会と国家をつなぐ政治システムを構築する人類の知恵のありようが、いまこそ問われている。「主権在民」を標榜するのであれば、もっともっと「まともな選挙制度」設計に人類の叡知が結集されねばならないのではないか。

 

5)議員をえらぶ現行選挙制度のおかしさ、むなしさ、ばからしさ

政権与党は、こんどの参議院選挙は、「子どもの未来や安全を、無責任な民進と共産に託すのか。日本人の命をしっかり守る自民、公明に託すのか。それを決める選挙だ」とさけぶ。

アベノミクスは、有効求人倍率を改善した、110万人の雇用を創出した、税収も増加した。だが、まだ道なかば、さらにアベノミクスのエンジンをふかし、一億総活躍プランをかかげ、経済成長をめざす。

野党は、それをつぎのように反論する。

アベノミクス→非正規雇用は雇用全体の40.5%にたっした→雇用不安の拡大→実質賃金は民主党政権時代から5.4%ダウン→一部大企業の内部留保は21%アップ→個人消費は7.6%ダウン→景気対策が必要→金融緩和・財政出動→株価上昇→富裕層だけ恩恵アップ→貧困格差の拡大→子どもの未来不安

自民党は、野党が対案を出さないのは無責任だという。野党が対案をだしても、現実は国会で審議しない。審議しても多数決原理でかんたんに否決できる。

 

だがマスコミにとっては、つぎのような事実はニュースにならない。

 ・・・・・・・野党の提案・・・・・・・・      ・・・・・・・・政権与党の一億総活躍プラン・・・・・・・

給付型奨学金を創設する予算のくみ替え →  反対 → 「検討する」

介護職員の給料アップ法案  →         反対 → 「野党案と同じ内容」

長時間労働規制法案    →           審議せず → 「再検討する」

保育士の給料アップ法案  →           審議せず → 「月額2%引き上げ」

 

「野党は反対、ハンターイばかりで対案をださない」という決まり文句は、世間の常識になっている。

政権政党は、選挙対策としてつぎの手をうつ。政権維持の自己保身としては、あたりまえの戦術ではある。

a.対案をとりこむことにより選挙の争点をぼかす →雇用、子育て、社会保障

b.対案を無視して選挙の争点からはずす、かくす →集団的自衛権、憲法改正

 テレビの与野党政治討論番組を見つづける気にならない。争点かくし、ごまかし、はぐらかし、 とりつくろい、いいのがれ、あげあしとり、ののしり、軽妙軽薄なことばの乱発。

 有権者になった18歳の高校生にむかって「選挙の一票で政治が変る」といえるか。

政権政党のあざとさや国民蔑視の幼稚なものいいや、それに呼応する世相にチクチクと刺激されながら「人間―社会―国家―自然」の関係性について妄想にふける。

 

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