第6稿 「癌と共に~癌患者の治療雑感~」 20131227

目 次

1.      SP療法2クールを終えて

 1)入院前後の日常

 2)2クール目のSP療法

 3)2クール目の治療前

 4)治療経過

 5)外来診療

 6)入院初日の計画・予定表について

 7)患者参加型看護について

2.癌の告知

3.胃癌あれこれ

 1)私の胃癌

 2)胃癌の予防

4.癌になった人、なりたくない人に

 1)田部井淳子さんの例

 2)私からの提案

 

1.SP療法2クールを終えて

 1)入院前後の日常

  1クール目を115日に終え、2クール目は私の都合で、甥っ子の結婚式に出たかったので、主治医に相談した。治療に専念するばかりが治療ではなく、1週間くらいの遅れはさほど気にする事も無いと言う主治医の判断でTS-1の服用開始を1週間延ばしてもらった。実際の所、ストーマのパウチ接着面がかぶれて、私としては大変な状況であったが、消化器外科の林看護師に指導を受け、毎日パウチを変えてローション液を塗布する事で、かぶれは改善傾向となり、何とか23日の上京は事なきを得た。また、910日は鹿児島から大切な友人夫妻が見舞い来る事になっていたので、どうしても抗癌剤の影響のない休薬中に会いたかった事も理由の一つであった。鹿児島からすき焼に必要な野菜類は宅急便で送り、高級牛肉は持参して来てくれた。我が家で準備するのは野菜を切り、茶碗を並べて置くだけであった。一夜だけの宴であったが、良くしゃべり、食べ、とても楽しい時間を過ごせた。翌日は札幌に出かけ藻岩山や北大の銀杏並木、大学構内の博物館を見て回った。北広島に戻り、私の陶芸作品の展示を見た後、自宅近所のクラッセホテルに立ち寄り、ツリーハウスを見て、その後、新千歳まで送り、昼食を共にして、夕方、友人夫妻は関空経由で鹿児島に帰った。14日には会社時代の後輩、井田君が来てくれ、北広島駅前の居酒屋で2時間程飲んで別れた。家内は翌日上京し、私は出来るだけ滞在日数を少なくしたい理由で、翌日早朝の一番機で上京した。次男の正一郎が羽田まで迎えに来てくれ、昼食は立川で家内と次男家族3人の5人でフランス料理を食べた。29日は大学時代の友人が北大病院にワインや菓子等を携えて見舞いに来てくれた。退院翌日の121日は会社時代の後輩(大学の同窓)が自宅に来てくれ、4時間程焼酎とおしゃべりで楽しく過ごした。TS-1服薬中だったので、翌日から4~5日ふらふらしていた。

 

 2)2クール目のSP療法

2クール目は、1112日より1216日までの35日間で、入院は1121日、退院は1130日であった。

北大病院消化器内科で治療継続⇒SP療法・・・朝夕食後各TS-1を2T.120㎎×4T.)を3週間連続服用。2週目(day11)にシスプラチン点滴静注、2週間休薬。

2クール目の入院期間(H25.11.21.stH25.11.30.end

⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱/⑲⑳㉑㉒㉓㉔㉕/㉖㉗㉘㉙㉚①②/③④⑤⑥⑦⑧⑨/⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○××××××××××××××  

                      

          入入入入入 入入入入退            

○:TS-1H25.11.12.st.)朝・夕4錠100㎎(1錠25mg)

●:シスプラチン(H25.11.22.day11で午後点滴静注{90㎎}

×:休薬期間

H25.11.12.からTS-125㎎を朝夕4錠服用開始し、H25.11.22.シスプラチン90㎎点滴静注した。11.30.退院。12.1.後輩と飲んだ事でうっかりTS-1の服用をスキップしてしまった。翌日2日夕TS-1服薬終了。12.16.まで休薬。1217日より3クール目に入る。

32クールの治療前

  一階のカウンターで入院手続き。ノロウイルス風邪が流行っているらしく、下痢についての質問が念入りであった。12階のナースセンターに本日分の薬剤を渡し、1271号室の4人部屋に案内された。

 看護師より入院中の治療スケジュール、日々のチェック用紙、患者参加型看護の印刷物を受け取った後、早速、廊下にある機器で血圧、体重、身長を測定した。ストーマパウチの指導を受けた林看護師が病室に来て、上京中のストーマの状態を確認し、明日、午後3時に秋田看護師がストーマの状態を見に来る事になった。横山医師が入院計画書を、福士看護師が計画・予定表、看護目標、転倒・転落防止に関する説明書を持参、小水の約束事として、採尿はトイレの中で、計測後は抗癌剤の被爆防止の為、便器の蓋を閉めた後、2回流すように指示された。薬剤師からは薬剤治療の予定について説明を受けた。

 明日のシスプラチンの点滴静注の可否を判断する為、採血を行った。夕食後、担当医師より白血球/好中球数が基準より低値であったのでシスプラチンの点滴静注は見送る事になり、その後も回復しない様であれば一時退院もあり得ると告げられた。昼食はスパゲッティであったが、治療中断で食欲は湧かず、自分でも弱気になっていると感じ、無理して完食した。秋田栄養士が約束通り病棟に来てくれ、別室でストーマを見た後、パウチを交換してくれた。何もする事がないので、デイルームから常盤新平の「たまかな暮し」を借りて来て読んだ。たまかな暮しとは、分をわきまえた、つつましい日々の食卓と言うらしい。病院にいても治療は進まないので23日は外泊許可を貰い、医師よりくれぐれも風邪だけはひかないように注意され、帰宅した。家で美味しいものを食べて翌日午後7時に帰院した。25日採血して、数時間後に担当医師より、シスプラチンの点滴静注が出来るレベルに白血球/好中球は回復したので、早速本日午後5時よりSP療法を開始すると告げられた。22日の白血球/好中球の低値は、TS-1の影響でナディア時の測定値だったのか、僅か3日で回復したことは天佑であったのか不明であるが、治療が前進した事でホットした。

 4)治療経過

  TS-1を服用し始めて10日目午後5時より翌朝10時まで補液(フィジオ140 1000mℓ+ヒシナルク3号 500mℓ)1500mℓを点滴した。翌日吐き気止めのイメンドカプセル125㎎を服用し、前日に続いて午前10時より補液1500mℓを翌日まで点滴した。同時に補液(生理食塩水)500mℓを点滴し、引き続き吐き気止めのアロキシバック0.75mg+デカドロン9.9㎎を点滴し、本命の治療薬シスプラチン90㎎を生理食塩水500㎎と点滴静注した。シスプラチンは主に近位尿細管細胞を障害するので、補液等による水分補給を十分行う事が重要なのである。2時間後より利尿剤マンニトール300mℓ、引続いて補液(生理食塩水)1000mℓを点滴した。点滴中に体重が2kg以上標準より増加すると浮腫(むくみ)による増加と判断し、マンニトール300mℓをその都度追加点滴した。全ての点滴はシスプラチンの腎毒性を抑制する為の処置である。翌日27日から2日間は吐き気止め、補液をふんだんに点滴し、シスプラチンの腎毒性を抑制しながら体外に排出するためのハイドレーションを30日の午前10時まで続けた。ハイドレーションとは水分を与えておくと言う事で、腎組織内でのシスプラチン濃度を低下させ毒性を軽減する事を目的に水分負荷及び強制利尿を行うと言う事である。その結果、浮腫も改善し、30日に退院の運びとなった。この間は感染予防の為、食後やトイレに行った後は、必ずうがい薬で丁寧にうがいし、手洗いも時間をかけて行った。入院中は特記する様な副作用も発現せず、出だしは不調であったが順調な治療入院であった。TS-1の服薬も2日で終了し、2週間の休薬期間中は、下痢が発現したが、間欠的泥状便でロペラミド服用で改善し、何ら問題はなかった。

5)外来診療

 129日に血液検査をし、白血球数は参考値内に回復し、赤血球数、ヘモグロビン、血小板数、ヘマトクリットはやや参考値より低値であるが、今後の治療の妨げにはならないと告げられた。ヘマトクリットは27.5%低く、赤血球もやや低いので鉄欠乏性貧血が考えられるが主治医は問題ないといい、肝機能や腎機能も問題ないので順調であると言っていた。3クール目の入院時より、CT2か月おきに治療の進展具合を見る事にしていると告げられた。腫瘍マーカーのCEA,CA19-9も参考値内で動きがなく良い傾向である。

6)入院初日の計画・予定表について

 特に説明を受けた訳ではないが、入院中の日常で看護師、医師が患者(私)と会話し、ごく自然に情報収集し、支援しているのだろうと解釈している。

 ①看護目標

  苦痛少なく安全に治療が受けられ、予定通り退院できる。

 ②今週のアセスメント

  主治医、受持ち看護師が私用に作成した計画・予定表である。

  胃癌再発のTS-1+シスプラチン、2コース目の入院となる。患者は治療経験はあるが、戸惑いなく、予定通り治療を進める事が出来る様一つ一つ確認しながら支援していく。現在、消化管症状等は見られていないが、副作用出現時は、早期に対処を行い、苦痛症状少なく治療を終える事が出来る様支援する。退院後の体調管理については、疑問や不安を残さず、退院を迎えられるように支援する。ストーマは改善傾向ではあるが、発赤を認めており処置中である。WOC看護師(皮膚創傷処置認定看護師)と連携を取りながら、皮膚症状が改善へ向かい、自宅での管理に不安少なく退院を迎えられる様支援する。また、自宅と異なる環境でのストーマ管理となる為、場所等の配慮を行いながら不自由なく、入院中も管理を継続出来る様に支援する。

  小目標1 安全に治療が受けられる。⇒・S=1CDDP療法を受ける患者の看護。・クリティカルパス参照し行動する。・イメンド内服を時間に飲んで下さい。看護師からも確認します。・嘔気や胃部不快がある時は、看護師へ我慢せず知らせて下さい。・TS-1は忘れず内服して下さい。

  小目標2 ストーマの皮膚症状が改善に向かい、ストーマの管理を不安なく継続できる。⇒・看護師:パウチ交換する際は、介助用シャワー室を調整します。・看護師:WOC看護師、鵜木さんと皮膚症状や処置内容を共有します。・自宅での管理や処置について、疑問や不安な点は、WOC看護師へ相談して下さい。

 7)患者参加型看護について

   これまでの病気の経過や生活習慣を踏まえて、今後の目標や目標に応じた具体策を看護師と一緒に考えます。そして、その具体策を日々の入院生活で実践していくのが患者参加型看護の基本的な考え方です。

(1)                看護目標とは

   患者さんがどのようになりたいか、どのような治療や看護を希望されるか相談します。患者さんが目指している姿や状態が目標になります。

(2)                看護計画とは

   目標を達成する為に何をすべきかを一緒に考え、目標達成のための小目標と具体策を設定します。小目標を達成するために日々の入院生活で実践する内容が具体策となります。

(3)看護計画の評価とは

   具体策に沿って行動した結果、目標を達成できたか話し合います。達成できなかった時は小目標や具体策を見直し修正していきます。

以上は、ナースステーションより配布された印刷物の転記である。

 

2.      癌の告知

昔は癌の告知はタブー視されていたが、最近では癌治療の急速な進歩に伴い、一方で癌患者は2人に1人と言った時代になり、もはや不治の病とは言い難く、癌治療に対する社会通念も大きく変わり、原則として告知する事が医療機関では常識になってきている様に思われる。最近では進行癌でも積極的な治療が行われ、それなりの効果が出ている現状において、医師の態度も少しずつ変化してきており、癌告知を進んでしようといった機運になっている様に思える。

その理由としては、医師は治療を始める際にはI.C.で患者に十分な説明する事が義務付けられており、真実を伝えないと患者も理解しづらく、話自体がだんだん辻褄も会わなくなり、そのまま治療を進めてしまうと医療訴訟にもなりかねない時代であり、一方で残された家族にとっても将来の生活の事を考えると今や告知を避ける理由が希薄であると思える。患者にとっても、戦う相手(癌)を知っておけば辛い治療にも耐えられるだろうし、最良の治療が受けられるのではないかと思う。例え治る可能性が少なくても癌は千差万別であり、助かる可能性がある限り希望を捨ててはならない事を伝える事が告知の重要な点ではないだろうか。私は、余命を告知されたら、残された日々を有意義に過ごし、家内、子供達に感謝の言葉を伝え、残された家族にも気持ちよく見送ってもらい、あの世に還りたいと思っている。

 

3.      胃癌あれこれ

 1)私の胃癌

私のスキルス胃癌は進行胃癌で、癌は固有節層に達し、更に漿膜、胃壁外へも広がって(浸潤)いた。進行癌になると、大きくなって、ピンポン玉くらいの硬化癌だった様で、癌と判明するまでは、上腹部不快感、上腹部痛、もたれ感、食欲不振、食事の好みの変化が起きていた。診断はさとわクリニックで受け、バリウムにて食道・胃・十二指腸を造影するX線検査、咽頭部から十二指腸までの観察が、一回の検査で可能な内視鏡検査、ファイバースコープに内蔵された生検チャネルに生検鉗子を通して、胃内の疑わしい病巣からその一部を摘み取り、組織検査をする生検で、浸潤性のスキルス胃癌と診断が付き、告知された。私のスキルス胃癌は早期胃癌の中で粘膜下層に深く浸潤した進行癌であり、ハイリスクグループであった。

同じ検査をKKR札幌医療センターで繰り返したが、さとわクリニックでの診断通りで、平成237月にスキルス胃癌を全摘し、その結果、リンパ節転移もなく遠隔転移もなく肉眼的には完全治癒切除で生還出来た。さとわクリニックでなく近医に受診して、胃の炎症、ピロリ菌による症状と診断されたかもしれないと考えると、的確な診断をしてくれた佐藤先生には感謝しなければならないと思っている。しかし再発予防で1年間TS-1を服用したが、既に術前に腹膜播種にて転位していた様で、平成256月に横行結腸に進行性の再発胃癌が確認された。私に残された治療法はシステミックに癌を攻める化学療法しか残されていなかった。

2)胃癌の予防

私は、手術や放射線療法といった局所療法は、癌治療としてこれ以上の進歩は期待薄と考えており、特に再発進行癌には併用化学療法に期待を寄せたいと思っている。

 胃癌は、その一次予防、二次予防、さらに診断治療の進歩により、死亡率は減少傾向にあり、胃癌治療は好ましい方向に進んでおり、管理さえ良ければ、即ち北大の様にBSCが確立出来ていれば、胃癌はもはや死に至る癌ではないと思っている。

日本人の胃癌の特徴として罹患率の減少傾向が見られ、死亡率の減少は更に顕著である。罹患率と死亡率の格差が大きくなっている事は、治療法の進歩或いは胃癌検診による二次予防効果と考えられる。死亡率、罹患率共に男性が1.52倍ほど高率で、男女差は40歳代以降に顕著になり、40歳以下では男女差が見られない。

胃癌の予防には、野菜(緑黄色野菜)・果物を多く摂る事、高塩食品を控える事が推奨されている。キャベツやブロッコリーにはイソチオシアネートという癌予防効果のある物質が多く含まれている。イソチオシアネートが細胞の中に溜まる時間が長くなりイソチオシアネートの癌予防作用が増強されると考えられている。

3)癌の発生

癌は遺伝子の異常が積み重なった細胞の病気であり、1個の癌細胞が何億と無秩序に増殖したものが臨床的に癌として見出される。癌は無限、無秩序に増殖し、周囲の組織を破壊し、組織に侵入(浸潤)し、癌細胞の一部が元の癌組織を離れて近くの組織や他の臓器で増殖する(転移)という特徴的な性質(悪性形質)をもっている。癌はもともと一つの悪性の細胞が増殖して出来ると考えられており、悪性の細胞が増殖して出来る子孫もまた悪性の細胞である。つまり悪性形質は細胞から細胞へと遺伝的に伝えられる事から、細胞の遺伝子の異常が原因で癌細胞が発生すると考えられる。胃喫煙も胃癌の危険要因であり、ピロリ菌感染が胃癌の危険要因である事も間違いないが、ピロリ菌の除菌が胃癌予防に有効であるかは定かではない様である。癌って本当に馬鹿だと思う。無料で間借りさせてもらっている大家をやっつけて死なすと自分自身も死んでしまう事を認識していないのだから。

 

4.癌になった人、なりたくない人に

 1)登山家田部井淳子さんの例

友人からの情報を紹介します。文藝春秋新年号に田部井淳子の「それでもわたしは癌と闘う」が掲載されています。2007年に胸に癌がみつかり切除し以降2回2箇所手術し2012年12月には寛解との事です。その間、登山や講演会等は特に減らさなかったとの事です。気を張る事も大事な様な気がします。

やはり家に籠もるのではなく、癌と向き合い、アグレッシブに自信を持って行動する事が大切な様です。

2)私からの提案

癌の予防に大切な事は、禁煙、節酒、節煙が大切で、多種類の食物をバランスよく摂り、特に緑黄赤色の野菜、果物、海藻類を多めに摂り、適度な運動をすることをお勧めします。定期健診で早期発見にも努めましょう。ここまで徹底すれば癌にはなりにくいかもしれませんが、言うは易く行うは難し、と言ったところでしょうか。私は家内の協力で全て実行中ですが、癌に罹る前に心がけるべきでした。

最期に…

新聞、雑誌、専門書で癌の記事を読むと「癌」は「がん」、「抗癌剤」は「抗がん剤」と書かれています。きっと「癌」は印象が良くないのでしょう。だから「ひらがな」に統一しているのだと思います。私は配慮なく、癌、癌、癌と書いています。新聞、雑誌を読まれる時注意して見て下さい!

 

以上   No.5へ   No.7 へ  はじめにへ