24稿 「癌と共に~癌治療とその周辺~」  2014103

1.パクリタキセルの3コース1投目

2.  癌告知から3年経過して

3.これまでの癌治療経過

4.これまで私が経験した抗癌剤の副作用

5.分子標的薬の清さ状況~特に胃癌に使える分子標的薬について~

6.あくまきの思い出

 

1.   パクリタキセルの3コース1投目

 918日、9時半の採血に間に合う様に家内の運転で家を8時に出た。北大には910分に着いて、採血は920分に終わった。消化器内科外来の受付にその旨を伝え、行きつけの院内に在るレストランロイヤルでトースト定食を食べた。イレウスチューブを外して

1ケ月弱でトースト、ソーセージ・トマト入りレタスサラダ、ホットコーヒーを味わえた。

家内は心配そうに大丈夫?大丈夫?トーストの皮(耳)だけは食べないで残してと言っている。家内を心配させたが、兎に角美味しかった。主治医小松医師の予約時間の10分前に外来に行ったが、結局40分待たされて1110分に外来診療となった。小松医師の血液検査値についての評価は前回(9/4)に比べてとても良い、白血球数は5,500/μ2週間前4,900)、赤血球数2,920,000/μ2,090,000)、ヘモグロビン9.0g/dl6.4)、好中球数1,821/μ1,303,CA19-9 131.9H u/ml8/21 149.9)であった。パクリタキセル3コース1投目の点滴静注するのには十分な条件であり、ヘモグロビン値も輸血により6.4から9.0に改善しており、私の全身状態も非常に良い。今の体調、状態を今後とも維持する為に9.0より低値になった際は、医師の間でいろいろ意見もあるが、再度輸血する事を主治医として薦めたいと言った。更に同様な考えで、BRM療法で今私自身が持っている免疫力を高めてパクリタキセルの効果を維持・向上させる為に、医療保険適用のクレスチンの服用も合わせて薦められ、過去クレスチンには良い印象を持っていない私としては考えさせられたが、化学療法による免疫低下は確かに一時的に免疫力を低下させているし、パクリタキセルに併用して低下した免疫力を回復かつ高める事で癌細胞を攻撃するのではないかと判断する事にし、しぶしぶ受け入れる事にした。本日19日よりQOLの向上を期待してクレスチン細粒2gを朝、夕の2回食後に服用を開始した。パクリタキセルの副作用と思える末梢神経障害に伴うしびれが発現して、放置していると固まってしまうのでパクリタキセルの点滴を中止するか否かについては延命との兼ね合いがあり、当面は延命を優先する事にしてメチコバール(ビタミンB12)細粒0.1500㎎を本日より朝・昼・夕食後に500μg/1包(0.5g)を3包服用開始した。パクリタキセルはSP療法の後を受けて7/15より点滴開始したが、前日の7/14の腫瘍マーカーCA19-986.2Hu/mlで、8/21149.99/18131.9であった事に主治医の小松医師はパクリタキセルが効いていると判断し、この状態を維持したいので、免疫力を上げるためにクレスチンを、私が心配している手足のしびれにはメチコバール(ビタミンB12)服用の薦めた様である。腫瘍マーカーが最高値(CA19-9 149.9)であった日がパクリタキセル2コース1投目で、3コース1投目には131.9に値が約20下がっていた。この事を良い数値、ニュースと言っていた。つまり、6/26腸閉塞再発で緊急入院した時点で私にはSP療法が効かなくなったと言う判断になり、7/15より二次療法としてパクリタキセル120㎎の1コース1投目が開始された。その時は既に癌細胞の増殖が始まっており、8/21が増殖のピークで9/18には増殖が減少し始めている事を主治医は言っているのか、今後クレスチンを併用する事で更に免疫力が高まり癌細胞を攻撃し改善に向かっていくと言いたいのであろうか。私としてはそうあって欲しいと期待したい。そう意味で小松医師は良いーニュースと言ったと信じたい。次回の25日の3コース2投目が楽しみである。

「新たに処方されたクレスチン細粒について」

私にとっては、最も信用できない抗悪性腫瘍剤である。北大に転院した理由はSP療法に替えてティーエスワン+クレスチンで治療していくと言われたからである。主治医小松医師のクレスチンの処方理由は、パクリタキセルが効いている今、胃癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長を適応に持つクレスチンを試してみようという程度の事として理解した。クレスチンは198912月の再評価結果で現在の適応になり20099月より販売されている。内容成分は1包(1g)中に蛋白質と結合した多糖類で、かわらたけの菌糸体より得られた1gである。1日3gを1~3回に分服する。私は朝夕食後に各1包服用する事になった。

「新たに処方されたメチコバール細粒0.1%について」

ビタミンB12系統の薬で、手足のしびれや神経痛に用いる。ビタミンB12は細胞の発育や機能を正常に保つのに必要で、葉酸と共に血液を作るのに欠かせない。又、神経の働きにも重要な役割をしている。ただ、私は胃全摘しているので、自分自身ではもうビタミンB12は産生できない。これまでは体内に貯えられていた私自身が産生したビタミン12で間に合っていたが、3年過ぎてビタミン12は既に使い尽くされ、今回、不足して貧血を起こした様で、末梢神経の働きが悪くなった事で手足がしびれたのかもしれない。ビタミンB12は手足のしびれや痛みを伴う末梢性神経障害の治療に広く用いられている。古い薬で強い作用があるとは言えないが副作用の心配はない。私の気持ちは、手足のしびれがこれ以上進行しない様に、朝昼夕食後各1包服用する事になった。

効能効果は、末梢性神経障害、用法用量は、通常成人はメコバラミンとして1日1,500μg3回に分けて経口服用する。

 

2.  癌告知から3年経過して

浸潤性スキルス胃癌と告知され、「そうか、一番嫌な癌だな」と思った。抗癌剤の開発を20年近くやってきて癌文献を読み漁ってきた私にとって「スキルス」は死病であった。治療しなければ余命は数ヶ月と医師に告げられ、それでもいいかと、自宅で過ごす事にして、家内の了解を求めた。妻の父は内科医で父を骨癌で見送っている。気丈だなと思いながら、62歳の妻は、これから20年以上、この地で生活して行けるかなと心配になり年金基金を訪ね、家内62歳時点、65歳からの受取時点からの年金支給金額を計算してもらった。マンションの処分、預貯金、生命保険、自宅の処分等を考えると何とかなると判断し気も晴れた。ところが家内は日が経つと、もっと生きて欲しいと言う。予想外の発言に迷ってしまう。胃、胆嚢全摘、ティーエスワン服用による再発予防、腸閉塞、ストマ造設、再発転移進行胃癌、SP療法、腸閉塞再発、パクリタキセル療法と、3年の月日が流れ、癌の治療は北大外来治療センターで、ケアは訪問医・看護師に委ねて、現在は自宅療養している。パクリタキセルは効果がある様で閉塞も緩み経口から食事も出来る様になった。ひと時の小さな幸せを貰ったなと思っている。子供たちに「私のアイデンティティ」(遺言に相当するもの)を書き送り、手紙、写真、仕事関係の書類等全て処分して、もう身の回りには衣類と本が少しあるくらいの身軽さである。

 

3.これまでの癌治療経過

1)パクリタキセル療法

西洋イチイ由来のパクリタキセルは体内に入ると細胞の骨格を形成する微小管という細胞内組織に結合し、癌細胞が分裂する時に出来る紡錘糸が形成されるのを妨げる事で抗癌作用を発揮する。私の効果もそうなのだろう。胃癌では主にSP療法の初回治療が無効になった後の二次治療以降にパクリタキセルは用いられ、特に腹膜への転移のある私の様な患者に有効とされている。吐き気などの副作用は少ないが脱毛は8割の患者に現れ、私は2コース2投目で始まった。脱毛は投与終了後1か月後位には回復するそうである。

長期投与になると手、足のしびれや関節痛が出現するが、今まさに私にもしびれや膝関節痛の副作用が現れており、しびれにはメチコバール細粒0.1%、関節痛にはシップ薬で対応する事になった。パクリタキセル療法は、二次治療法であり、アレルギーや吐き気を抑えるための薬剤を事前に30分かけて点滴し、引き続き、毎週31時間かけてパクリタキセルを点滴靜注する。癌が縮小しなくてもある程度の率で進行を遅らせる事が出来る薬剤であるが、私の場合、腸閉塞が改善しているので間違いなく縮小している。副作用は、白血球、好中球数が少なくなる骨髄抑制や脱毛、下痢、手足のしびれがある。重要な症状は、アレルギーで、パクリタキセル投与中に呼吸が苦しくなったり、体のかゆみや蕁麻疹が生じたりする様であるが、今の所、私には体のかゆみ、手足のしびれしか経験していない。  

2)ティーエスワン+シスプラチン療法(SP療法)

平成2375日に浸潤性スキルス胃癌の手術をし、完全治癒切除(執刀医が見える癌は全て取りきった)出来た。再発防止の為、1年間ティーエスワンを服用した。術後化学療法は癌の完全切除後に再発の確立を減らすために、ある一定期間抗癌剤を用いる事である。胃癌の場合、術後の病理診断で病期Ⅱ以上、私は病期Ⅱbで再発の危険性が高い癌であり、術後化学療法が推奨されている。ティーエスワン療法を8サイクル(約1年)継続し、その後は23ヶ月毎にCT検査、胃カメラでの画像診断、腫瘍マーカーを含めた検査で再発をチェックする。術後無治療患者で5年までに47%が再発し、ティーエスワン治療患者では35%程度に再発率が抑えられ、術後5年での生存率が約10%高い結果であった。お蔭様で私は、1年間、再発は無かったが、平成257月に甲斐なく、癌が再発し、手術の難しい再発転移の進行胃癌、いわゆる末期癌と診断され、今後は抗癌剤による治療が唯一の方法となった。KKR札幌医療センターではティーエスワン+クレスチンで治療すると言われ、私にはクレスチン併用が納得出来なかったので、平成2510月北大病院に転院して、ティーエスワン、シスプラチンを減量して点滴治療を継続した。その結果、平成265月頃は、CT画像では癌が消えたと診断された事もあったが、そう甘くは無く、やはり完全に治癒する事はまれで、基本的には癌の進行を抑えてなるべく長く快適な生活を送る事を目標として治療をするという事である。SP療法(ティーエスワン+シスプラチン)は、現在最も長い生存期間を記録しており、標準治療となっているが、私も胃全摘から3年延命しているのでこの併用療法には感謝している。

日本の「胃癌治療ガイドライン:日本胃癌学会編」で、進行・再発胃癌に推奨されている治療はティーエスワン+シスプラチンの併用療法であるSP療法であり、昨今は海外でも評価されている。海外で実施されたSP療法群対フルオロウラシル(5FU)+シスプラチン併用群を比較するFLAGS試験で、結果としてOS(全生存期間)中央値については、SP群は8.6ケ月、5-FU併用群は7.9ケ月、奏効率は29.1%対31.9%、奏功期間の中央値6.5ケ月対5.8ケ月、PFS(無増悪生存期間)の中央値は4.8ケ月対5.5ケ月となり、両群に有意差はなかったが、TTF(治療成功期間)は、SP療法群で4.8ケ月、5-FU併用群は3.9ケ月であった。私にいわせればティーエスワンは5FUのプロドラッグであるので体内での作用の仕方は同じであるはずであるから両群に有意差が出ないのは当然であると思っている。結論としては、SP併用群の方が安全性と簡便性の高さが示された。その結果を踏まえて2011314日に欧州委員会(EC)からSP療法は進行性胃癌患者の一次療法として承認取得した。現在、欧州連合加盟国と欧州経済地域加盟3カ国で適応となった。20123月には欧州に拠点を持つNordic-Group社からスウェーデン、ノルウェー、フィンランドの北欧4カ国で販売、米国では現在フェーズⅢ試験中である。このSP療法が私には効かなくなった事が残念である。その為、パクリタキセル単剤で治療中であるが、幸いにも経過は今の所順調である。主治医は、パクリタキセルの後の治療には分子標的薬を考えている。

 

4.これまで私が経験した抗癌剤の副作用

1)吐き気

吐き気の高度リスクの薬剤は、シスプラチンであるが、シスプラチン点滴前に制吐剤を点滴していたので私には吐き気は発現しなかった。吐き気の原因は抗癌剤だけでなく、癌の進行に伴う消化管の通過障害(腸閉塞、別名イレウス)で起こる場合もある。私のケースでは、食事を止めて胃管の挿入(鼻から胃へチューブを入れて胃内の圧力を減らすイレウス管挿入)と絶食・絶飲料し、輸液でまず治療した。腸閉塞の改善の為に人工肛門造設して治療した。癌の痛み止めにはモルヒネを用いたが、吐き気が生じる事もあると聞いていたが私は経験しなかった。

2)発 熱

抗癌剤治療中に発熱、特に38℃以上超えは入院中に経験した。何らかの病原微生物による感染症のサインの可能性という事であったが、それ以上の事は無かった。KKR札幌医療センターで今後、抗癌剤治療を継続して行く為にCVポート(静脈カテーテル)を留置したが、このカテーテルが感染源になる事も承知していたが、今の所、問題なく継続使用出来ている。在宅時に発熱する可能性もあるので解熱剤や内服の抗菌剤をあらかじめ数日分処方してもらっている。抗癌剤だけでなく、癌自体の突発的な発熱は時々経験している。

3)全身倦怠感

初回点滴時のシスプラチンでごく軽い全身倦怠感を経験した。ティーエスワン+シスプラチン併用療法では日常生活に支障をきたす程度の全身倦怠感が現れる頻度は共に5%程度という報告がある。治療としては、シスプラチン投与前にデカドロン等のステロイド剤の事前点滴がなされ、初回以降は、全身倦怠感を経験した事は無かった。

4)食欲不振

入院中、シスプラチンで一度経験したがその後は無い。

5)末梢神経障害

パクリタキセル、シスプラチンで手足のしびれが発現。現在、十分にしびれを治療する方法は確立されていない。現在はメチコバール(ビタミンB12)を服用しているが、効果については今の所不明である。しびれや力が入らない等の症状が固まってしまう前にパクリタキセルを中断・中止する必要があるが、今は、癌に対する効果を優先させている。

6)下 痢

回数が多ければロペミン。下痢が止まるまで2時間おきに内服する様に言われたが、逆に腸の運動を低下させて便が出なくなり、腸閉塞の可能性もあるという情報もあり、私はこれまで薬はめったに飲まない様にしていたので効き易い体質と考え、先ず1カプセッル(ロメラミド塩酸塩1)服用して様子を見て、2カプセル目の服用を考えている。概ね1カプセル目で゙下痢は止まり、2カプセル以上服用した事はこれまでに2回であった。下痢は水分を失うので水分補給する為に、経口可能な時はスポーツドリンク(ポカリスエット)を飲んでいたが、主治医に薬局で扱っている(株)大塚製薬工場の消費者庁許可個別評価型病者用食品経口補水剤、OS1オーエスワンを紹介されたので…、所詮勿体ぶっているが電解質を主体として配合した清涼飲料である。私は下痢の具合を見て必要なら1日500ml1000ml飲んでいる。現在は輸液を12000ml点滴しているので、OS-1は飲用を中断している

7)貧 血

私の貧血は、2コース3投目及び3投目のヘモグロビン値7.06.4Lg/dlは、抗癌剤パクリタキセルにより直接的に骨髄で赤血球を作る働きが抑えられる事や癌が骨髄に転移し、腎臓から出てくる赤血球造血刺激ホルモンの分泌を薬が低下させていることも考えられるが、勿論、骨髄に転移しているとは思っていない。赤血球は寿命が長いので抗癌剤治療を始めてから2週間以降あるいは数か月後に貧血は現れてくる。ヘモグロビン濃度が10.0L/dl以下になると、脈や心臓の鼓動が早くなり息切れがして呼吸が苦しくなるそうだが、どうも私は鈍い様で左程感じなかった。7.0L/dl以下になると症状が重くなり生命に危険が及ぶと言われている。どうも情報とは異なり各々の医師の判断基準がある様で、主治医小松医師の判断により6.4L/dlで輸血した。918日現在ヘモグロビン値は9.0L/dlであり、輸血する事で体が楽になる事は確かなので7.0L/dlより低値になったら小松医師と相談の結果、今後は迷わず輸血する事になった。これまでは軽い貧血症状だった様で少し休めば治まっていた。普段から栄養や水分を十分取ってはいるが、これからは貧血の時は無理な仕事や激しい運動は避ける様にして延命を心がける事にする。

8)皮膚症状

皮膚乾燥:掻痒症に対する外用療法の第一選択は保湿剤であり、家内のミルクローションを使っていたが、訪問看護師の花摘Nsにヒルドイドソフト軟膏0.325gを薦められた。皮膚の保湿性作用があり、皮膚の乾燥性症状を軽くするもので、使用部位である腕・足首のカサカサを軽くする。また、使用部位の血行を促進し、血行障害による痛みや腫れを軽くする。通常、皮脂欠乏症、指掌角皮症等に適応を有する軟膏である。

9)入 浴

弱酸性無香料無着色石鹸・シャンプーを泡立てて、こすらず撫でる様に洗っている。泡は、ぬるめのシャワーで流している。タオルはナイロンの材質は刺激が強いので洋タオルを使っている。入浴後15分以内に保湿剤を塗布している。拭き取りはこすらずタオルで軽く叩く様に拭い取っている。髭剃りは良く切れる電気カミソリがベターであるが、私はシックの5枚刃で手早く済ませている。シェービングクリームもシックのごく普通の商品を使っている。

10)紫外線

直射日光、紫外線に注意し 普段から日焼けしない様に帽子を被り、長そでを着ている。

11)白血球減少を抑える為に

感染症を予防する事が最も重要である。うがいは、アズノールうがい液4%は1日3回1~2滴に微温湯に滴下撹拌して口中でガラガラ、ぶくぶくしてうがいをし、清潔を十分に保っている。手洗いも丁寧に泡液体石鹸で手の指を清潔にして、特に感染症を避ける為に重要で食事前や排泄後の手洗いは欠かさず行っている。下痢が続き脱水症状があると、発熱時に一気に体調が悪くなり、解熱剤の効き目も悪くなるので、普段より水分を十分取る様にしている。外出時は家内も私もマスクをする様に習慣づけている。

12)血小板減少

5万μL以上の時は血小板減少による出血がおこる事は無い。未満では、皮膚の傷口や傷のある粘膜から出血する事がある。1万以下になると、正常と思われる皮膚や粘膜からも出血し易くなり、5千以下では脳や胃腸からの致命的な出血の危険がある。治療法は、重症の場合(1~2万以下)は血小板の輸血が必要であるが、輸血に伴う感染症の危険やアレルギーなども考慮して主治医が判断する。一旦抗癌剤が使われると血小板減少を食い止める方法は無い。激しい運動や危険な仕事は避けるしかない。幸いに私の血小板は常に30万μLはあるので安心している。

13)腎機能障害

抗癌剤治療中、腎機能のチェックを行う事は重要で、その他、尿回数、尿量及び体重の変動に気を付けている。中等~重症になると顔や体のむくみ、尿の減少、倦怠感、呼吸苦、意識障害が現れると言われたので気を付けている。シスプラチンを点滴している時、経験したが、3.3の大量の点滴や利尿薬によって腎障害を起こさずに上手に副作用を抑えていた。面倒な検査や長時間の点滴、頻回のトイレ等負担も大きい。抗癌剤治療では血液検査による腎機能の定期的チェックが行われ、その都度主治医の指示を受けた。

 

5.分子標的薬の審査状況~特に胃癌に使える分子標的薬について~

最近になり、癌細胞の分裂のスピードを調節している分子が次々と発見されつつある。その分子が癌細胞の分裂のスピードを速くしている。その分子の働きを抑える事で癌細胞の分裂するスピードを遅くして成長を抑える薬が分子標的薬と呼ばれる。胃癌に一定の効果はあるが、現時点では証明されていない。セツキシマブは、細胞の分裂を促す信号(シグナル)を受け取る細胞表面の受容体の働きを抑える薬である。このような受容体にはいくつかの種類がありセツキシマブはその一つであるEGFR(上皮増殖因子受容体)の働きを抑える。トラスツズマブは、HER2(ヒト上皮成長因子受容体2型)という細胞の分裂を促す受容体を抑える分子標的治療薬である。残念ながら2011.7.6胃切除後に採取した組織所見では、HER2スコア判定は、ゼロで私には使えない薬であった。ベバシズマブは血管新生を指示するタンパク質VEGF(血管内皮増殖因子)が次の指示を出来ない様にブロックする事で癌の増殖や転移を抑える働きをする薬である。セツキシマブ・パニツムマブはEGFR(上皮細胞増殖因子受容体)というタンパク質を標的とする薬剤で進行胃癌に対するカペシタビンとシスプラチン併用への上乗せ試験が昨年3月に終了している。EGFRにEGF(上皮細胞増殖因子)などのタンパク質が結合すると癌細胞の増殖などが引き起こされる。セキツシマブ・パニツムマブはEGFRに結合して、EGFなどのタンパク質の結合を阻害する事で癌の増殖を抑制する作用を生じる。

主治医は、パクリタキセル後の治療として、現在開発中のラムシルマブを考えている。その根拠として、胃癌・食道接合部癌においてHER2についての個別化医療が進む中、HER2陰性の胃癌などにも対応する薬剤の重要性が注目されている中で、血管新生阻害効果を有する抗VEGF(血管内皮増殖因子)R-2抗体(受容体-2モノクロナール抗体)のラムシムマブの以下の2つのフェーズⅢ試験が成功裏に終了した事である。恐らくRAINBOW試験の成績に可能性を見出して私に使ってみようと考えているのかもしれない。

1)  REGARDフェーズⅢ試験

 29か国119施設で実施。対象は初回治療として白金系抗癌剤、フッ化ピリミジン系抗癌剤(恐らくシスプラチン、ティーエスワン)を含む併用療法後に、進行した胃腺癌又は食道胃接合部腺癌患者。病勢進行もしくは耐容不能な毒性の発現までラムシルマブ8/kg又はプラセボのいずれかが2週間に1回、静脈内投与された。主要評価項目のOS(全生存期間)の中央値については、ラムシルマブ投与群は5.2ケ月であり、プラセボ投与群の3.8ケ月に対して37%延長した。副次評価項目のPFS(無増悪生存期間)の中央値については、ラムシルマブ投与群が2.1ケ月であったのに対し、プラセボ群では1.3ケ月だった。REGARD試験は、進行・再発の胃癌患者を対象とした生物学的製剤又は血管新生阻害剤の単剤によるフェーズⅢとして初めてOS(全生存期間)の改善とPFS(無増悪生存期間)の延長を示した試験となった。

2)RAINBOW試験

 転移を有する胃又は食道接合部癌に対する二次療法として、ラムシルマブとパクリタキセル併用投与とパクリタキセル単剤投与を比較した試験である。

26か国167施設で実施。パクリタキセルに加えて2週置きにラムシルマブ8/kgを投与する群とプラセボを投与する群(パクリタキセル群)に無差別に割り付けた。主要評価項目はOS(全生存期間)。副次評価項目はPFS(無増悪生存期間)、奏効率、増悪までの時間(TTP)と安全性だった。OS中央値については併用群で9.63ケ月、プラセボ群が7.36ケ月であった。PFS中央値については併用群で4.40ケ月、プラセボ群が2.86ケ月であった。併用群の発現率が単剤群と比べてより高く、最も多く見られた発現率5%超でgrade3以上の有害事象(副作用)は、好中球減少、白血球減少、高血圧、疲労/無力感及び腹痛であった。この結果を基に米Eli Lilly社は201310月、欧米でラムシルマブの申請を行った。

 

6.あくまきの思い出

一昨日(912日)、姉からあくまき、蒸し羊羹、かるかん、竹の子に包んだ太めの春駒が送られてきた。私はあくまきには目が無かった。腸閉塞になると何故かあくまきを思い出すのである。幼き頃、母があらかじめ水に浸けておいたあくまきの竹の子の皮を剥がして、「あくまき」を手に取り、糸で輪切りにする手順、仕草をふと思い出した。その姿は、まるで魔法の様に思われ見入っていた記憶がある。さらに輪切りにされた「あくまき」の断面は琥珀色というか飴色というか、そう!「鼈甲色に輝いた」と言った方が適切かもしれない、見事な色合いで食欲をそそられたものである。送られてきたあくまきは、50年前と変わりなく竹の子の皮に包まれていたが、さらに外装をシュリンクフィルムで密封し、味、食感を保つように工夫されている。私は縁あって北海道に居を構えて20年、3年前に胃を全摘してから急に「あくまき」が懐かしくなり姉に送ってもらった。最初は常法に従い糸で輪切りにして食した。この作業を自分でするには、糸を準備し、皿への盛り付けや手にべとつく等、面倒くさいと感じていた。必要は発明の母というか、何気なく直接フォークのエッジで切り取ったところ、糸切りとそん色ない切り口であった。スプーンでは切り口が丸みをおびて、フォークの様に垂直にシャープに切り分けられなかった。更に、竹の子の皮を皿に見立てて直接フォークで切り取って、砂糖や黒砂糖、きな粉をまぶして食べるが、テーブルマナーという点では人様には薦められないが、後片付けが楽で手軽に食べられる良い方法であった。胃の無い私にとって腹を満たしてくれる有難い食品の一つである。古稀を迎え、昔と同じ美味しさを保つ「あくまき」、私にとってはこの時期の旬の味わいといえる懐かしい食べ物である。ネットで明石家本店の餡無しかるかんと高麗菓子と???会社のあくまきを発注するぞ!!

以上  No.23  No.25