18稿「癌と共に~物事に疑問を持つ習慣と本質に迫る努力が世の中を変える~2014515

目 次

1.   SP療法6クール目の総括(評価)

2.  高齢者による育英会の設立

3.  混合診療とは

4.  北方領土の行く末

 

1.   SP療法6クール目の総括(評価)

1)治療経過と今後の展望

ティーエスワン休薬後11日目(416日の血液検査)で白血球数4,400/μ、好中球数2,086/μ回復し、腫瘍マーカーCEA2.1ng /m CA19-9Umも正常で、16日のCT画像 (スライス厚5㎜以下)では、幸いにも癌病変は確認されなかった。しかし、2㎜スライスでは見つかるかもしれないという懸念は残るので21日の血液検査及び放射線科医師による画像診断、小松医師の外来での総合診断の結果及び今迄の経験に基いて、念のためにSP療法は9月まで継続する事になった。欧米の再発進行胃癌の場合、画像的に癌細胞を確認出来なくなった際は、いたずらに抗癌剤を投与し続けるべきではないと言う考えから治療終了・退院になるそうである。7クール目は28日からティーエスワンの服用を始め、GW明けの57日に入院して8日(Day11)にシスプラチンの投与量(90㎎)を2割減量して点滴靜注する事になった。シスプラチンの減量は骨髄及び腎機能にダメージを与えない為の対応である。仮にSP療法終了時にCT,PETで癌細胞が認められ二次治療が必要となった場合は、ティーエスワン及びオキサリプラチン(わが国開発の白金化合物で、DNAの複製及び転写阻害の作用機序を持つ抗癌剤)療法を考えているが、現在の所、オキサリプラチンは適応外であり、胃癌の適応が承認されるまでは混合診療となり保険適用にならず全額患者負担になり、私の経済力では支払不能であるので承認になるまでは例え有効であっても使い辛い状況である。混合診療については最近話題になっている様なので、本稿「3.混合診療とは」で詳述したので参考にして欲しい。胃癌の承認が認められる時期は主治医の小松医師情報によると秋くらいと言う事であった。その折は安全性を含めてSP療法を超える治療成績を期待したいものである。とは言え、SP療法で治療終了、癌は認められないと言うのが私にとっては何よりの結末である。

2)二次治療で期待されるオキサリプラチンの適応拡大の現状

癌には種々癌腫があり、製薬メーカーは発売を急ぐ為に、先ず患者数が多くて、治験で効果が認められ評価された癌腫で申請し、発売後効能追加する戦略を取っている。今回はオキサリプラチンの適応追加が認められるかを注目していたので4月時点での審査状況を小松医師の情報を基にして示す。残念ながら厚労省は、オキサリプラチンの安全性に関する学会の意見を聞く事で終わり、胃癌の効能追加についての判断を次回以降に持ち越した。その理由としては、オキサリプラチンは、第1回の開発要望募集で日本胃癌学会から要望が提出され、エルプラット(オキサリプラチン)発売中のヤクルト本社に開発要請されていた。日本胃癌学会は「切除不能進行・再発胃がん」の効能・効果を求め、日本胃癌学会の検討会議は、医療上の必要性の高さを認めていた。 同日、ヤクルト本社が提出した見解によると、ティーエスワンとシスプラチン併用療法(SP療法)に対する、ティーエスワンとオキサリプラチン併用療法(SOX療法)の非劣性(承認されている治療法に劣っていない事)を検証する国内第Ⅲ相比較試験では、非劣性が十分検証出来なかった。しかし海外で実施された試験では、シスプラチン含有レジメンに対するオキサリプラチン含有レジメンの非劣性が検証されている事や、オキサリプラチンの再審査期間が2013317日で終了し安全性情報が蓄積されている事を理由に、ヤクルト本社は公知申請の妥当性を評価する事は可能と判断し、日本胃癌学会検討会議のワーキンググループも、公知申請で効能・効果に「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を追加できると判断した。日本胃癌学会での議論では、日本国内の試験について「生物統計学的には失敗かもしれないが、臨床的には大負けしていない」などの意見が上がり、公知申請を認める流れとなった。ただ、海外データに基づく用法・用量で承認すると、日本での投与量より多くなる事等が問題となる。この為、次回以降の会議で、投与量を含め安全性について学会の考えを聞く等して公知申請の可否を決める事になった様である。

3)直近の適応拡大の事例紹介

同時期に、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」は、未承認薬検討会議にてプロプラノロール塩酸塩(アストラゼネカ)とレボノルゲストレル(バイエル薬品)について、2件の公知申請を「妥当」( 2014422)と判断されたので、適応拡大の事例として参考までに紹介する。プロプラノロールとレボノルゲストレルは、いずれも国内外の公表文献や使用実態などから有効性、安全性に問題はないと判断された。プロプラノロールは高血圧・狭心症などの治療剤として承認されており、「右心室流出路狭窄による低酸素発作の発症抑制」の効能・効果を追加する。効能・効果に関連する使用上の注意では「ファロー四徴症(先天性心奇形の一種)等を原疾患とする右心室流出路狭窄による低酸素発作を起こす患者に投与すること」を添付文書に記載する事になった。レボノルゲストレルは子宮内避妊システムとして承認済みで、1月の同会議で過多月経の効能・効果を公知申請で追加することが認められていた。今回は「月経困難症」を効能・効果に追加し、用法・用量は「本剤1個を子宮腔内に装着する」となった。
4
)休薬中(自宅療養中)の油断

この時期、過去にも時々罹患していたが、4月12日に会社時代の仲間が東京より訪ねて来たので少々焼酎を過ごした感があった。15日に作陶中、寒気を感じ喉の腫れ(炎症)で食物の嚥下が困難になり、更に首から顔にかけて発疹が出て痒みも酷いので、たまたま16日に北大でCT検査が入っていたので、消化器内科外来でCT検査の前に皮膚科で診てもらおうと依頼したところ、消化器内科の林医師が診てくれる事になり、その結果、喉の腫れは風邪の前兆で安静にしていれば数日で治まると言い、顔の発疹にはアンテベートローション0.05%を処方してくれた。しかし、なかなか治癒せず、20日には息子が花嫁候補を連れて来るので、その前に何とか顔の発疹だけは治したい一心で近医の皮膚科専門医の千葉皮膚科に出向いた。診断は、湿疹は何かにかぶれた事が原因であると即断され、炎症やアレルギー症状を抑えるセレスターナ配合錠、皮膚の炎症を抑え、赤味、腫れ、痒み等の症状を改善するスチブロンクリーム0.05%を処方してくれた。幸い息子の来る前日には発疹も治まり痒みも消え、心置きなく25歳の若き婚約者に会う事が出来た。さすがは専門医である千葉先生に感謝である。北大消化器内科の林先生は喉の腫れを、万が一と考えて放射線科にCT検査する際には喉も含めて撮影する様に指示してくれていた。幸い癌とは関係なく単なる腫れである事が確認された。林医師は単なる風邪の前兆と言いながら、本心は私の病状を気遣ってくれた様で、とても感謝している。癌患者は癌とは関係の無い症状でも関連付けて癌が進行しているのではないかと不安になるのかもしれないなと、この一件でふと感じた。

 

2.  高齢者による育英会の設立

1)建築家安藤忠雄氏のケース

現在、65歳以上の人口が25%を超え、本格的な高齢化社会の到来となった。日頃より、高度成長期を甘受してきた高齢者は、1000兆円を超す国の借金、原発の放射能、未解決の領土問題、格差社会等々、子孫に負の財産のみを残す事無く、善行(懺悔かな)も必要であると考え、唐突に、高齢者より110,000円/年寄付をしてもらえれば1,000億円~3,000億円/年を集められ、格差社会で先の見えない若者(少年少女)に夢を与えられると思っていた。先日、午前中寝ぼけ眼でテレビに目を向けると建築家の安藤忠雄氏が何やら真剣に語っていた。耳を澄ますと阪神大震災(1995)および東日本大震災の遺児への育英の話しであった。遺児を見守り、教育を受けて学ぶ事をサポートする為に立ち上げた育英会の話しであった。話に共鳴する前に先を越されてしまったと言う思いもあったが、つい聞き入ってしまった。育英会の名称は「桃・柿育英会/東日本大震災遺児育英基金」で、安藤氏が発案し、ユニクロ柳井、サントリー佐治、ベネッセ福武氏が発起人になり設立されている。安藤氏は文部科学省で行われた会見で「将来の日本を担えるのは子供」、「年間1万円を10年間支払ってくれる会員を1万人集めて、1,000人とも言われている震災遺児が高校を卒業するまでサポートしていきたい」と目標を語った。因みに阪神大震災後は5億円が集まり、現在400人以上に奨学金を手渡しているとの事であった。私は無名な年金生活者であるが、賛同者が居れば、取り敢えずは地道に出身地鹿児島の格差社会の犠牲になっている子供達の今を、未来につなげる手助けから始め、賛同者が多くなり寄付金次第ではその輪を広げていきたいと思っている。

庵主も同様な事を語っておられたと記憶しているので、一緒に育英会を設立出来ればなと真剣に思っている。

2)香港の実業家曹其鏞(ツァオチ―ヨン)氏のケース(新聞記事より)

曹氏は現在75歳で日本に留学経験があり、日中の学生を対象にした奨学金を設立した。資金は私財より102億円を投じている。奨学の目的は、日中の学生が留学を通じて相互理解を深め、未来の日中関係を担う人材を育成する事である。曹氏曰く、「日中の壁を乗り越え、難題に取り組めるリーダーを育てたい」と言っている。奨学金の具体的な運用は、日中で合計年100人の留学生を対象にし、日本の京都大学、早稲田大学、一橋大学の3大学が中国からの留学生を募集し、中国の北京大学、浙江大学、香港科技大学は日本からの留学生を募集すると言う事である。学生には返済不要の250万円/年を2年間支給し、奨学生同士の交流を深める為、4週間の合同合宿を毎年行うとしている。昨今の日中関係を考えると久々の良い話である。恐らく留学時の日本の良さ、恩義に感じて立ち上がったのではないかと勝手に推測している。更に氏が中国本土出身でなく香港という自由な特区で育った事も自由な発想をもって実現出来たのかもしれない。日本のお金持ちにも子孫の事、日本の今後の事を考えて、何らかの社会貢献をお願いしたい。

3)海音寺潮五郎氏の遺族、末富東作氏の寄付

  高校の同級生である重信君からの情報であるが、伊佐市出身の海音寺潮五郎氏の遺族(末富東作)が1億5千万円を伊佐市へ、1億円を県立図書館へ、1億円と著作権を鹿児島近代文学館へ、東京世田谷の記念館を鹿児島大学へ、那須の記念館を母校国学院大学へ寄付した。

4)同学舎中村四郎理事長のケース

 私は昭和40年に同学舎に入舎した。その時の理事長が中村四郎氏であった。一見すると怖そうな人であったが、実際はとても面倒見のいい人であった。官僚出身者ではあったが、郷土の後輩の為に奨学事業に誠心誠意尽された人であった。自治委員をしていた昭和41年に銀座のオリンピックで洋食を、更に青山の自宅で和食をご馳走になった事は今でも忘れられない思い出である。理事長は平成元年に亡くなられ、遺族より相続資産から4億円が同学舎に寄付された。その寄付金で中村育英基金が設立され、理事長の掲げた世界に雄飛する人材の育成は、多くの学生に恩恵を与え、実を結びつつある。

 

3.  混合診療とは

1)混合診療の言葉の意味

混合診療という言葉は、カンプト注発売後(平成6年)よく聞かされた。昨今、混合診療の記事が目立つ様になり、混合診療の実態に興味を覚え、且つ一般の人はどう理解しているのかなと思い文章にしてみた。

混合診療とは、健康保険の範囲内の分は健康保険で賄い、範囲外の分は患者が費用を払う事で、費用が混合する事をいう。日本では、健康保険の医療に関する価格を厚生労働大臣が決めている。そして健康保険の範囲内の診療と範囲を超えた診療が同時に行われた場合でも平等な医療を提供する為に、範囲外の診療に関する費用を患者から徴収する事を禁止している。もし患者から費用を別途徴収した場合は、その疾病に関する一連の費用は、初診に遡って「自由診療」として全額患者負担になるルールになっている。一連の医療サービスの中で、例外として患者から別途費用徴収を行う事が認められているのは差額ベッド(入院した時の個室代)や新しい高度な医療技術等のごく一部である。

2)政府の混合診療に対する見解

政府は、財政難を理由に保険の給付範囲を見直そうとしている。混合診療を認める事によって、現在健康保険で診ている療養までも「保険外」とする可能性がある。

保険外診療の費用が患者負担になるとお金の有る無しで不公平が生じる懸念があり、医療は、患者の健康や命という最も大切な財産を扱うものであり、お金の有無で区別すべきものではないと言うのが厚労省の見解である。「保険外」として取り扱われている診療の内容によっては、お金の有る無しで必要な医療が受けられなくなる事になりかねない。混合診療の背景にはこの様な問題が潜んでいる。適応外の薬の使用を混合診療として保険外で認めれば結果的に使用が促進され、重大な健康被害等が全国に拡大する恐れがあり、保険外であっても安易に認めるべきでないと厚労省は言うが、本心は医療費の抑制にある事は間違いないと思っている。

3)患者、医師の混合診療に対する見解

「保険外診療の内容によっては」については、例えば保険で認められていない薬があって、その薬が安全で有効なものなら患者も医師も使える様に混合診療として認めた方が良いのではないかという考え方がある。まず、今の薬の承認制度が必ずしも判断基準が明らかでない事や、国側の審査・承認までの期間が長すぎるという根本的な問題がある。製造や輸入の承認や健康保険適用の判断基準を明確にして審査や結果をオープンにする事が必要である。人によって、多くの材料が必要な場合、制限を超えた分は患者の実費でみれば、全額患者負担よりは納得感があるのではないかと言うごく自然な考え方がある。医療は同じ病気であっても、患者の年齢や体力、他の病気の有無等によって個別の対応が必要である。その患者に一番合った治療方法が選択されるべきである。従って患者によっては、保険で制限されている数以上の材料が必要な場合もある。この様な場合は患者の容態を客観的に判断し、医学的に必要な場合は保険で見る様にすれよいのではないかと思う。医療を「平均」で扱うのではなく、患者の「個別性」を加味する事が必要である。

混合診療に問題があるとしながらも、現に差額ベッド等は認められている。現在の制度で認められている混合診療は①新しく高度な診断や治療で普及度が低い医療技術を指す「評価療養」②入院時の個室や予約診察等どちらかというと患者のアメニティ(快適性)に関わる「選定療養」の二つに大別される。

まず、高度先進医療は、有効性や普遍性が認められるものは全て保険適用するのが筋である。そしてより多くの患者が高度の医療を保険で受けられる様にすべきである。差額ベッド等のアメニティに関するものはそもそも診療行為ではないと思うので、その部分は患者から費用を徴収しても「混合診療」には該当しないと言う様に整理すべきである。

 

4)日本医師会が混合診療に反対する理由

社会保障を充実させる事は、国の社会的使命である事が日本国憲法にも規定されている。国が果たすべき責任を放棄し、お金の有無で健康や生命が左右される事があってはならない。医療は教育等と同様に「社会的共通資本」である。医療が国民の生命や健康をより高いレベルで守るという公共的使命を強く持つものだからこそ、全ての国民が公平、平等により良い医療を受けられる環境でなければならない。健康保険の範囲内の医療では満足できず、更にお金を払って、もっと違う医療を受けたいと言う願いは「同じ思いを持つ他の人にも、同様に、より良い医療が提供されるべきだ」という考えを持つべきである。

混合診療の問題を語るには「自分だけが満足したい」という発想ではなく、常に「社会としてどうあるべきか」の視点を持たなければならない。混合診療は、この様な考え方に真っ向から対立するものだからこそ、日本医師会は反対していると言っている。

5)ケーススタディ

1)患者の為の混合診療

薬Aは、肺炎の薬として承認されているが、薬の成分や作用からみると、ある一定の他の病気にも効くことが明らかである。この様な場合は他の病気の時も自費で使うという考え方もある。薬の成分、作用から他の病気にも有効であり、安全性も客観的に証明されるものであれば、適応外(未承認)といえども速やかに健康保険で他の病気にも使える様にするのが筋であり、そうする事で多くの患者が助かる可能性を有するのである。

2)私の場合の混合診療

 私の治療に用いられているSP療法が7クールを終え、更なる治療が必要となった場合、二次治療はSP療法より優れた療法を考える事になり、その際は欧米で評価されているSOX療法(ティーエスワン+オキサリプラチン)が考えられる。しかし、日本国内ではオキサリプラチンは胃癌の効能が無く、敢えて使えば混合診療となり、いわゆる全額患者の個人負担になってしまう。支払い能力があれば自由診療として治療してもいいが現実はとても対応出来る金額ではない。結果としては有効な治療法があるにもかかわらず、胃癌への適応が承認されるまで待たなければならない事になる。患者に必要であるにもかかわらず、国の審査・承認作業の遅さ、医療費の増大を嫌う国の無策が医師・患者の要求を阻害しているのが現状である。

 

4.  北方領土の行く末

北方4島がすんなりと返還されるとは誰も信じていない。元島民も既に70歳~100歳にはなっているだろうし、安部首相がいくらロシアと返還交渉したとしても返ってくるはずはないと思っている。終戦後に理不尽にも島民を追い出し68年もの長きにわたって不法占拠し続けているのである。日本政府は北方4島を日本固有の領土と言いながら、鮭、毛蟹漁ではロシアに漁獲量に従って入漁料を支払っているのが現状であり、また、4島海域で漁船が拿捕されても、即刻取り戻す事すら出来ないのである。政治家は4島同時返還と声高に吠えているだけでなんら具体策を示してロシアと交渉している様には感じられない。本来ならば千島列島の全てを返還要求すべきなのに、いつの間にか理由もわからないうちに「北方4島返還」になっていた。ソ連が崩壊し、エリツィンがロシア大統領(19916月)になった時が2島分割或いは4島一括返還の絶好のチャンスだったと思っている。プーチンと違って良きに計らへ的な政治家であり、国内の改革に追われていた時期であった事がその理由である。プーチンはKGB(ソ連国家保安委員会)出身者であり、国益を最重要に考え、権謀術数にたけており、戦後、平和ボケした安部首相や外務官僚らが太刀打ち出来る政治家ではないと思っている。北方4島は日本固有の領土であり、議論の対象にはならないと言い続けている。にもかかわらず柔道の精神に則り「引き分け」という解決法もあると公言してはばからないプ-チンはしたたかである。これまでロシアの領土問題については、中国、ノルウェーとは面積を等分する事で解決している。この例をとっても4島全部が返還されると考える政治家がいるとしたら、「幻想を抱くのもほどほどにしろ!」と言いたくなる。私も北海道に住む事がなければ北方4島に関して興味を持たなかったと思う。原発反対では全国的な国民運動?になる様であるが68年前の「ソ連の北方4島不法占拠」に関心を持つ日本国民は甚だ少ないと考える事が現実的である。むしろヨーロッパ議会(20057月)がロシアに北方領土を日本に返還する事を求めていた。国際司法裁判所に訴える事もちらほら聞こえるが双方の了解が必要となれば、不法占拠しているロシアは負ける事が分かっていて応じるはずがないのである。その理由は漁業権の喪失、安全保障上の危惧であろうか、返還に応じると太平洋へ自由に抜け出る航路(出口)を失う事になり、日本が通行に金銭的な対価を求めるか、通行そのものに制限を設ける事を懸念していると思われる。中国が尖閣列島の領有にこだわり太平洋への道筋を確保しようとしている事と同じである。

ロシア国防相は本年4月18日、北方領土の択捉、国後両島に2016年までに軍事拠点を新たに整備する方針を明らかにした。ロシアの実効支配の強化、太平洋沿岸と島々の軍事的インフラ整備が今日の課題で、この事実を見るだけで、どんな交渉をすれば返還されると言うのだろうか。領土問題の解決法としての面積で等分するという事すら、いよいよ困難な事になってきたと実感する今日この頃である。プーチンに騙されるな!と言いたい。

以上 2014年5月15日  No.19へ