No.41 マンション団地経営の理念と課題と現実     2014122

「住民意識と団地経営システム」について熟議するための前提知識として、No.38,No.39,No403回、それぞれ管理組合、自治会、街づくり協議会について書いた。

この三つの公的組織の目的を、あらためて確認する。この目的の是認が、「住民意識とマンション団地経営システムのあり方」を熟議する大前提であるからである。

●管理組合 マンションの建物や敷地、付属設備などを維持管理すること

●自治会 対象地域に住む住民同士のコミュニケーションの活性化を図ること

●協議会 地域関係者相互の融和と協調を図り、愛される街づくりを目指すこと

 

「マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省、平成1381日公表)」文書(No.38)が、熟議のための最低限のテキストになる。

 

○あるべき論、理念として、文書はつぎのように述べる。

・マンション管理の主体は、マンションの区分所有者等で構成される管理組合である。

・区分所有者等は、管理組合の運営に関心を持ち、積極的に参加し役割を果たすこと。

・管理組合の自立的な運営は、区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映すること。

・管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとすること。

 

現実の課題について、文書はつぎのように述べる。

「一つの建物を多くの人が区分して所有するマンションは、各区分所有者等の共同生活に対する意識の相違、多様な価値観を持った区分所有者間の意思決定の難しさ、利用形態の混在による権利・利用関係の複雑さ、建物構造上の技術的判断の難しさなど、建物を維持管理していく上で、多くの課題を有している。」

 

だから、文書はつぎのように述べる。

・管理組合は、マンション管理士等専門的知識を有する者の支援を得ること。

・第三者に管理事務を委託する場合は、その内容を十分に検討して契約を締結すること。

 

そして、現実 ~わたしの理解

管理組合の理事は、自発的(ボランタリー)というよりも、抽選で選ばれる者が多い。理事の役務は、無償であるその理事たちで構成されるマンション管理組合の理事会は、管理業務を管理会社に丸投げしている。

年間3億円以上の管理費と修繕積立金を管理する管理組合に、事務室もなければ、理事長の机もなく、事務員すらいない。これで、無償の理事会が、責任をもって「主体的な運営」ができるのだろうか

自発性に基づかず、抽選で選ばれた無償の理事に、「管理業務責任」を問うことは不自然であろう。だから、理事会は自分たちの業務責任を限りなく、最大限に管理会社に委譲する。責任を回避するために、管理業務の委託先は大多数が信用するであろうと思われる有名大企業に向かう。必然的にコストは高くなる。

マンション団地の共用施設である立派な管理センターには、大手マンション管理会社の管理員たちが陣取っている。管理会社の「支配人」と称する責任者が、管理組合を支配しているのである。

管理会社という民間企業が、資本主義ルールの営利事業として、管理組合の目的である「マンションの建物や敷地、付属設備などを維持管理する」経営責任を負う。

わたしを含めて区分所有者は、その目的が達成されている限りにおいて、文句をいうこともない。区分所有者の責任は、①管理費と修繕積立金を払うことと②総会の決議事項に委任状を提出ことだけで果たせるのである。後は、理事会にお任せ、理事会は管理会社にお任せ。

管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとすること」など、日本国憲法の前文と同じく、あまりにも理念的かつ理想論にみえる。

 

●共同体と民主主義の問題

マンション団地経営の実態は、「専門家お任せ」、「カネで済ます無責任」である。戦後日本社会の相似形、そのみごとな縮図である。この点に関しては、No.35ですでにつぎのように書いた。

“戦後の民主教育では、「自分」と「みんな」の中間に位置する「自分たち」意識にもとづく自治精神と共同体の倫理性が、否定され、拒否された。だから、区分所有法が自治思想なき住民に、「共有施設を共同管理すること」を求めることなど、そもそも無理なのだ。区分所有法の実態は、国交省―マンション事業者―マンション管理会社の立場と利益を優先する法律でしかない。”

 

では、どうするか。

わたしは、管理組合の業務のひとつである「(15)地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」に、ひとりの老人として参加したい。地域住民にとって、管理組合、自治会、街づくり協議会を横串する共通テーマだと考えるからである。

そして、「管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとすること」のために、つぎの私―共―公の枠組みで考える。

私: 個人の意識、常識、見識  少壮老、男女、住民それぞれの個人的意思決定

共: 有志、同志、共感、共鳴   直接的な討議による有志的意思決定

公: 理事、委員、代議員     選挙、抽選、輪番制による組織的意思決定

 

 現状の代表制民主主義、間接民主主義は、「共」なき「私―公」二階建構造である。この構造が、お任せ無責任民主主義に直結する。この構造が、「管理組合は、マンションの区分所有者等の意見が十分に反映されるよう、適正な運営を行うこと」、「区分所有者等は、管理組合の一員として、進んで、集会その他の管理組合の管理運営に参加すること」などの文言を、単なる美辞麗句となす。民主主義の形骸化であると考える。

 その隘路をただす方策が、地域コミュニティの「私―共―公」三階建構造化である。ここでいう「共」とは、単なる趣味的な親睦サークルではない。一定の主義、主張、社会思想、価値観、運動論等をゆるやかに共有する有志グル―プである。そのグループ意思を、公的組織に反映させる道筋を自覚する有志集団である。「私―公」二階建構造に、「共」層を差し込む社会運動をかかげる思想集団である。

その構想が、「小さな行動、大きな戦略」のNo.42「地域民主主義」を実験する「マンション団地のコミュニティ形成運動」である。

以上  No.40  No.42  No.1