No.37 身近な民主主義の実情と展望

 ~マンション団地のコミュニティ形成について    2014110

●身近な民主主義の実情

わたしが老後をすごす地域は、7年前に建設された4棟で構成されるマンション団地である。約1000世帯、2000人近い、少/学業期、壮/職業期、老/終業期それぞれの世代が住む。

この大規模団地には、区分所有法でいう管理組合が、5つある。4棟それぞれの共用施設を管理する棟別管理組合と団地全体の共用施設を管理する団地管理組合である。法律上は5つの管理組合があるけれども、現実の管理組織は、団地全体を管理するひとつの「理事会」である。

そして、日々の実質的な管理運営主体は、その理事会が委託する大手民間企業のマンション管理会社である。

1000人近い組合員から、十数人の理事が選ばれる。自発的な立候補者は少数。ほとんどは抽選により仕方なしに引き受ける理事。手当なしの無償の役目。

理事の責任は、月に1回の理事会の会議に出席することだけ。そこで議論と決議する。その会議の運営も実質的には、管理会社やコンサルが主導。

「共用施設を管理する」ためのわたしの共有者責任は、毎月の管理費と長期修繕積立金を口座振り込みで払うだけ。管理をカネで買う。お任せ。

発注者責任の自覚なし。何か不都合があれば、管理会社に文句をいうだけ。管理会社を変えたところで、「お任せ、後で文句」いうだけなら、相手は資本主義ビジネスの営利企業なのだから、管理会社には大差なし、五十歩百歩。

1000人近い区分所有者たちが、共用施設を共有して生きる共有者である大多数の区分所有者は、わたしにとっては赤の他人である。「共用施設を共有して生きなければならない」ことの隣人関係や人間関係、社会性についての違和感は、すでに何度も書いた。

No.28マンション暮らしで思うこと~1.失われた「共」精神No.32ほか)

 

わたしの問題意識は、「少―壮―老」、「自分―自分たちーみんな」、「私―共―公」などの枠組みで考える人間関係のあり方、社会性、国家論である。これは、「民主主義」のテーマとも重なる。

○日本国家の実情 ・・・・・遠くの民主主義 ===>全体主義、国家主義に向かう

国民イロイロ、政治家ウロウロ、役人ウハウハ ・・・・主官僚主義国家

○マンション団地の実情 ・・・・近くの民主主義 ===>お任せ集団社会に向かう

住民イロイロ、役員ウロウロ、管理会社ウハウハ・・・・主カネ主義社会

 

身近な民主主義の展望 

 上の実情認識をふまえて、老後をどのように生きて、未来に希望を託すか?

民主主義の展望として、 「自分―自分たちーみんな」、「私―共―公」の枠組みの「自分たち・共」に焦点を当てる。「自分たち・共」の担い手として「少―老」世代の連携に着目する。その実践は、自分が住むマンション団地で取り組むしかない。共=共生=コミュニティ形成運動である。なぜ「少―老」世代の連携か?

「壮」世代は、仕事中心の生活だから、マンション団地のコミュニティ形成運動の主役にはなりえないからである。このテーマに関連して、すでに以下のようなことを書いた。

No.21 身近な地域の条例制定運動を憲法改正プロジェクトに組み込む

No.22 防波堤での釣りは禁止すべきなのか~条例制定を考える事例

No.23 「海辺を市民も利用できる条例」制定運動~海辺の旧3Kから新3K

No.24 コミュニティビジネスを「成長戦略」に組み込む  

No.25 「老人の撹乱力」と「老学援交」を考える 201387日 猛暑/立秋

No.26 「老学援交」コミュニティビジネスを考える根拠 2013815

No.27 「老学援交」コミュニティビジネスには思想革命が必要

No.35自治的な社会思想の訓練 

 

マンション団地のコミュニティ形成運動

20141月、「マンション団地経営の地産地消をソーシャルビジネスで実現する構想を考えた。

・自治会と管理組合が協力しあえる自発的コミュニティ形成活動

・共用施設の「ハードな維持管理」だけでなく、施設を「ソフトに活用」する活動

・住民の意識と活動の仕組み=システムが、相互作用しながら自発性を高める運動

・団地ブランドを創造する自発的なコミュニティ形成活動の仕組み。

・管理会社に委託しているマンション管理業務の一部を、地域で取り組む仕組み。

・住民が納める管理費が、住民交流活動により地域内で循環する仕組み。

・団地の小中高生の学習と戸外活動を地域の老人が支援する仕組み。

・少/学業期世代と老/終業期世代が交流する仕組み。

・私的な資本主義ビジネスではなく、公的な税金ビジネスでもなく、共的な地域コミュニティビジネスで、地域に壮/職業期世代の雇用機会を創出する仕組み。

 

その事業主体としてNPO法人を設立する。そのためには、志操と思想を共有する同志を募り、実現可能な事業計画を立てなければならない。構想実現には、少なくとも3年から5年の覚悟が必要だろう。 構想、事業計画、できることからの実践、ホップ、ステップ、ジャンプのためには、熟議による知恵の出しあいが必須である。簡単なことではないのだから。

熟議のテーマは、住民意識とマンション団地経営システムの在り方である。

次回でまず、国土交通省が平成138月に公表した「マンションの管理の適正化に関する指針」を勉強して共通知識の基礎としよう。

以上  No.36へ   No.38   No.1