No30.マンション暮らしで思うこと ~3.共有施設の管理と活用

(1)マンション共有施設管理の「持分責任」のはたし方

団地管理組合の組合員は「持分責任」をどのように果たしているのだろうか、という問題について個々の区分所有者・組合員のふるまい方は、概念的に次のように分類できる。

  管理組合の役員の人たち 
ⅰ)リーダー、啓蒙家、社会貢献家など自薦または他薦の積極的な役員
ⅱ)輪番制、抽選制など積極性とは関係なく規則に応じて役員になった人

  関与者    役員ではないが関心をもって理事会を応援する人たち

  権利主張者 自分にとって不都合なことが発生したときだけ権利を主張する人たち

  無関心者  管理費を払うだけで管理組合活動に一切かかわりたくない人たち

  無責任者  管理費も払わない完全に利己的な部外者意識の持ち主

 

 「共有施設の管理」という面からみれば、この現状に何か特別な問題もなく運営されている。しかし、意識の面からみれば、「共同で所有する財産の持分を果たしている」というよりも「共有施設を利用しているから管理費をはらっている」という意味がおおきい。

共同利用するエレベータなどの施設は、分譲型マンションでは区分所有という「財産権」であり、賃貸マンションでは「利用権」となる。この権利形態と権利責任は、法的にみればおおいにちがう。

「持分責任」の果たし方という私の問題意識は、区分所有法という法律が区分所有者に求める「管理責任」は、はたして妥当な要請なのだろうか、という疑問に根ざす。2000人近い住民が住む大型団地に、区分所有法を適用するのは、無理があるのではないか、という気持ちである。納得できないのである。 

 

(2)マンション共有施設の管理と活用

具体的な共有施設として、各棟のエントランスと掲示板、およびB棟のフィットネスルーム、A棟のパーティールーム、C棟のマリーナビュールームを考えてみる。

持分責任とは、「管理すること」と「活用すること」の両面から構成すると考えるならば、現状は、おおいに管理偏重なような気がする。

「管理すること」の責任は、ボランティアとして役員の方々がご尽力されている。しかし、共有施設を管理しているわけではない。管理会社と管理契約を締結して、管理会社を「管理」しているのが実態である。

いっぽう「活用すること」の責任は、C棟の図書室やミュージックルームなど一部の方々の献身的なボランティア活動に依存することによって、その「活用責任」を果たしている。

しかし、自治会がかげる「自治会員一人ひとりが、集合住宅において、共同生活者であることを自覚し、思いやりに基づく相互扶助によって、あたたかい人間的なコミュニティの形成」という基本理念の実践として、共用施設を積極的に創造的に活用しようという取り組みは活発とはいえないと思う。

団地管理規約の共用施設使用細則の一部を引用する。

使用目的 第4条 2 抜粋

(1)居住者等の親睦、教養の向上等を目的として会合等に使用するとき 

禁止事項 第5条   抜粋

 (1)特定の政治、思想、宗教活動を目的とするとき

 (2)個人または法人の営利を目的とするとき

 (3)以下省略

 

各棟のエントランス、B棟のフィットネスルーム、C棟のマリーナビュールームなどの施設は、たしかに閑散として清潔ではある。しかし、集合住宅における住民どうしの共同性・共感性・共鳴性・相互扶助・協力関係を醸成する仕組みはない。安心・安全・静寂・清潔な物的環維持だけの管理思考が突出している。

「老若男女が共同生活する人間的なコミュニティ形成」への参加意識を助成し支援する意匠設計や設備設計の思想性が欠如しているのではないか。2千人近い住民を宿す高層マンション団地の設計思想は、「コミュニティ形成」という視点からみれば貧困すぎるのではないか。

人間関係不在の高級ホテルライクマンション。そういう静かで冷たい高層マンションの雰囲気がもてはやされる時代は、まもなく終るのじゃないかと思う。建築専門家たちの意見を聞いてみたい。

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