No.38 マンション管理の適正化指針と団地管理規約等の事例   2014111

 マンション団地経営における自発的なコミュニティ形成を熟議するうえで、お互いに基礎的な知識を共有するために、以下に公開されている資料を引用する。

 

●マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省、平成1381日公表)

「管理の主体性;コミュニティ形成」の視点から抜粋する。

(目的)

「一つの建物を多くの人が区分して所有するマンションは、各区分所有者等の共同生活に対する意識の相違、多様な価値観を持った区分所有者間の意思決定の難しさ、利用形態の混在による権利・利用関係の複雑さ、建物構造上の技術的判断の難しさなど、建物を維持管理していく上で、多くの課題を有している」ので、適正化に関する指針を制定する

 

一 マンションの管理の適正化の基本的方向

マンションの適切な管理は、マンションの区分所有者等だけでなく、社会的にも要請されている。マンションを社会的資産として、この資産価値をできる限り保全し、かつ、快適な居住環境が確保できるように、以下の点を踏まえつつ、マンションの管理を行うことを基本とするべきである。

マンションの管理の主体は、マンションの区分所有者等で構成される管理組合であり、管理組合は、マンションの区分所有者等の意見が十分に反映されるよう、また、長期的な見通しを持って、適正な運営を行うことが重要。特に、その経理は、健全な会計を確保するよう、十分な配慮がなされること。また、第三者に管理事務を委託する場合は、その内容を十分に検討して契約を締結すること。

管理組合を構成するマンションの区分所有者等は、管理組合の一員としての役割を十分認識して、管理組合の運営に関心を持ち、積極的に参加する等、その役割を適切に果たすよう努めること。

マンションの管理は、専門的な知識を必要とすることが多いため、管理組合は、問題に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の支援を得ながら、主体性をもって適切な対応をするよう心がけること。

マンションの管理の適正化を推進するため、国、地方公共団体及びマンション管理適正化推進センターは、その役割に応じ、必要な情報提供等を行うよう、支援体制を整備・強化すること。

 

二 マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項

管理組合の運営

管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映することにより成り立つものである。そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとすること。

また、集会は、管理組合の最高意思決定機関である。したがって、管理組合の管理者等は、その意思決定にあたっては、事前に必要な資料を整備し、集会において適切な判断が行われるよう配慮すること。

管理組合の管理者等は、マンションの区分所有者等のため、誠実にその職務を執行すること。

管理規約

管理規約は、その作成にあたっては、管理組合は、建物の区分所有等に関する法律に則り、「中高層共同住宅標準管理規約」を参考として、当該マンションの実態及びマンションの区分所有者等の意向を踏まえ適切なものを作成し、必要に応じ、その改正を行うことが重要。

共用部分の範囲及び管理費用の明確化

管理組合の経理

長期修繕計画の策定及び見直し等

その他配慮すべき事項

 

三 マンションの管理の適正化の推進のためにマンションの区分所有者等が留意すべき基本的事項等

マンションの区分所有者等は、マンションの居住形態が戸建てのものとは異なり、相隣関係等に配慮を要する住まい方であることを十分に認識し、その上で、マンションの快適かつ適正な利用と資産価値の維持を図るため、管理組合の一員として、進んで、集会その他の管理組合の管理運営に参加するとともに、定められた管理規約、集会の決議等を遵守すること。

そのためにも、マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関する法律等に関する理解を深めること。

 

四 マンションの管理の適正化の推進のための管理委託に関する基本的事項

管理組合は、マンションの管理の主体は管理組合自身であることを認識したうえで、管理事務の全部又は一部を第三者に委託しようとする場合は、その委託内容を十分に検討し、書面をもって管理委託契約を締結することが重要。

管理組合の管理者等は、マンション管理業者の行う管理事務の報告等を活用し、管理事務の適正化が図られるよう努めること。

 

 

五 マンション管理士制度の普及と活用について

マンションの管理は、専門的な知識を要する事項が多いため、国、地方公共団体及びマンション管理適正化推進センターは、マンション管理士制度が早期に定着し、広く利用されることとなるよう、その普及のために必要な啓発を行い、マンション管理士に関する情報提供に努めること。

なお、管理組合の管理者等は、マンションの管理の適正化を図るため、必要に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の知見の活用を考慮することが重要。

 

六 国、地方公共団体及びマンション管理適正化推進センターの支援

国及び地方公共団体は、必要に応じ、マンションの実態の調査及び把握に努め、マンションに関する情報・資料の提供について、その充実を図るとともに、特に、地方公共団体、マンション管理適正化推進センター、マンション管理士等の関係者が相互に連携をとり、管理組合の管理者等の相談に応じられるネットワークの整備が重要。

 

●建物の区分所有等に関する法律 (昭和3744日法律第69号)

区分所有法は、マンションの一室のように、一棟の建物の一部(区分建物)を独立した所有権の対象とすることができるようにし、その場合の権利関係について定める。区分所有者の権利義務を定義し、権利変動の過程・利害関係人を明確にする。

また、一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供するその各部分を、それぞれ所有権の目的とすることができると定め、当該建物に関する区分所有者の団体(いわゆる管理組合)、敷地利用権、復旧および建替え等について定める。

構成

第一節総則(1 - 10条)

第二節共用部分等(11 - 21条)

第三節敷地利用権22 - 24条)

第四節管理者(25 - 29条)

第五節規約及び集会(30 - 46条)

第六節管理組合法人(47 - 56条)

第七節義務違反者に対する措置(57 - 60条)

第八節復旧及び建替え(61 - 64条)

第二章団地65 - 70条)

第三章罰則7172条)

附則

 

●マンションの管理の適正化の推進に関する法律

(平成十二年十二月八日法律第百四十九号)

最終改正:平成二三年六月二四日法律第七四号

(目的) 

この法律は、土地利用の高度化の進展その他国民の住生活を取り巻く環境の変化に伴い、多数の区分所有者が居住するマンションの重要性が増大していることにかんがみ、マンション管理士の資格を定め、マンション管理業者の登録制度を実施する等マンションの管理の適正化を推進するための措置を講ずることにより、マンションにおける良好な居住環境の確保を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

構成

第一章 総則(第一条第五条)
 第二章 マンション管理士
  第一節 資格(第六条)
  第二節 試験(第七条第二十九条)
  第三節 登録(第三十条第三十九条)
  第四節 義務等(第四十条第四十三条の二)
 第三章 マンション管理業
  第一節 登録(第四十四条第五十五条)
  第二節 管理業務主任者(第五十六条第六十九条)
  第三節 業務(第七十条第八十条)
  第四節 監督(第八十一条第八十六条)
  第五節 雑則(第八十七条第九十条)
 第四章 マンション管理適正化推進センター(第九十一条第九十四条)
 第五章 マンション管理業者の団体(第九十五条第百二条)
 第六章 雑則(第百三条第百五条)
 第七章 罰則(第百六条第百十三条)
 附則

 

●事例  団地管理規約  第28条 団地管理費

 団地管理費は、団地共用部分等に係る次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。

(1)管理員人件費

(2)公租公課

(3)共用設備の保守維持費、運転費、検査費、清掃費、消毒費並びにゴミ処理費等

(4)共用設備の運転等に必要な水道光熱費

(5)什器・備品費、消耗品費、通信費、その他の事務用品費

(6)団地共用部分等に係る火災保険料、その他の損害保険料

(7)経常的な補修費

(8)会議費、役員活動費、その他管理組合の運営に要する費用

(9)管理委託費

(10)専門的知識を有する者の活用に要する費用

(11)地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用

(12)その他、団地共用部分等の管理に要する費用

 

●事例  団地管理規約  第36条 管理組合の業務

管理組合は、次の各号に掲げる業務を行う。
(1)共用部分等の保安、保全、保守、点検、運転、調整手入れ、清掃、ゴミ処理、消毒など

(2)共用部分等の修繕、取替

(3)長期修繕計画の作成又は変更

(4)建物の建て替えに係わる合意形成に必要となる事項の調査

(5)宅地建物取引業者から交付を受けた設計図書の管理

(6)修繕等の履歴情報の整理及び管理等

(7)共用部分等に係わる火災保険その他の損害保険に関する業務

(8)管理組合が行うことが適当であると認められた専用使用部分の管理行為

(9)共用部分等の変更・処分及び運営

(10)共用部分等の管理に関する会計業務

(11)官公署等及び地域自治会との渉外業務 

(12)風紀、秩序及び安全の維持に関する業務

(13)防災に関する業務 

(14)広報及び連絡業務 

(15)地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成

(16)管理組合の消滅時における残余財産の清算

(17)規約及び使用規則等により管理組合が行うとされた業務

(18)その他組合員の共同の利益を増進し、対象物件内における円滑な共同生活を維持するために必要な業務

*標準管理規約との相違点:

(18)その他組合員の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために必要な業務

 

●事例  平成25年度団地総会 第11号議案 事業計画

 3)共用部分の維持管理運営業務

  管理委託業務 (管理規約第37条に基づき管理会社に委託)

(1)事務管理業務  出納、会計、総会、理事会の支援業務
(2)管理員業務   受付、点検、立会、報告連絡業務
(3)コンシェルジェ業務  施設利用受付、各種照会サービス等
(4)清掃業務    日常清掃、定期清掃(年4回)
(5)建築・設備管理 点検、検査
(6)組合発注業者管理業務  次の②の発注代行事務

組合直接発注業務
(1)警備業務  
(2)植物管理業務
(3)雑排水管清掃業務
(4)各種設備点検業務
(5)特別清掃

●平成25年度 予算案 支出科目

○管理委託費(一括計上、内訳なし)約12千万円==>管理会社へ

○組合直接発注費 ・・・以下の費目

・点検費、清掃費、植物管理費、小修繕費、警備料

・電気、水道、ガス、電話、インターネット保守接続料等

・什器備品、消耗品、リース、レンタル料

・顧問料、印刷、図書管理費、その他

 ○理事 無給

 

●事例 団地管理組合の組織

 ・理事長―副理事長――会計・財務・資産担当理事(3名)

          ――建物・施設・防火担当理事(4名)

 ――住環境・広報担当理事(4名)

  ・監事(1名) 特別委員会、プロジェクトチーム

 

以上が、マンション管理に関して共有したい基礎知識である。「自発的なコミュニティ形成」に関しては、管理組合だけではない。自治会と街づくり協議会もある。

No.39で「自治会について」、No.40で「街づくり協議会について」基礎知識を整理する。

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