2.1 生命維持のための不自然な延命措置を拒否する宣言   

 2015年1月、わたしはこの世で71年と数ケ月を生きてきた。仕事中心の壮年期を卒業した「老人」である。老人であることを自覚して、死をみすえながらの隠居気分で、希望をもって余生を明るく楽しくすごしたい。

そのすごし方の終末期において、「生命維持のための不自然な延命措置」を拒否したい。その意思を妻と息子と娘に以下の宣言書で伝える。そして、家族および医療や介護の関係者に我が意思を、うけとめてほしい。この宣言書は、基本的人権にふれそうな「拘束介護」までもお願いしている。ひとりの変人、奇人、狂人の非常識な戯言だと思わないでほしい。家族としての情愛に逆らうかもしれない。

下の宣言書は、古希をこえて生きてきた我が人生論の総括の一部である。この人生観を「往還思想」とよぶ。

本章では、下の宣言書を理解してもらうために、我が「往還思想」について記す。 

 

●「生命維持のための不自然な延命措置を拒否する」宣言書

この宣言書は、201x年x月x日現在、私の精神(心と頭)が健全な状態にある時に書いたものであります。私は、私の意思を正常に表現できない場合に備えて、私の家族、縁者ならびに私の介護および医療に携わっている方々に次の要望を宣言いたします。

 自署:○ ○ ○ ○

 

(1)     私の意思を表現する「身心頭」能力が、正常とみなされない症状が頻発したときは、この宣言書を読み上げるように私に指示し、この宣言書を有効に存続させるか、又は破棄撤回するかを「選択」するように指示し、読み上げと選択の私の振る舞いを観察して、私の「身心頭」状態の健全性を判断、確認してください。

(2)     私の心身状態が、「健全である」と判断できる場合は、上の私の選択を尊重してください。
      年  月  日  ○有効  ○破棄   自署 

(3)     私の「身心頭」状態が、「健全でない」と判断できる場合は、上の私の「選択」を無視して、私の精神が健全な状態にある時に書いた201x年x月x日現在の宣言書を有効として、以下の対応をお願いします。

(4)     私の手と口で食事をして、嚥下することができない身体状態になったときは、他者の手、道具、機械装置などにより、生命を維持させるためだけの「胃ろう」など強制的な栄養補給等の延命措置は一切おことわりいたします。

(5)     私の糞尿の排泄処理を自力で正常になしえず、他者の介護を必要とする身体状態になったときは、食事の量と回数を減らし、衰弱状態と老衰状態にいたる絶食の介助と促進的な処置をお願いします。

(6)     私の身体機能には異常はなかれど、心と頭の正常な認知判断能力が劣化・退化し、社会常識と規範を逸脱する徘徊や暴言や暴力等の周辺症状が頻繁になったときは、私の身体行動の自由を制限するための拘束手段を処置してください。

(7)     事故や疾病等による身体機能障害を治癒するための医療行為においては、縄文人が為したであろう治癒技術相当の水準にとどめ、近代的な器具による医療を一切おことわりいたします。

(8)     私の身体異常に関する治療投薬において、私の苦痛を和らげるための処置は最大限に実施して下さい。そのため、たとえば麻薬などの副作用で死ぬ時期が早まったとしても、一向にかまいません。

 

この宣言書の作成に当たっては、あらかじめ私の家族である次の者の了解を得ております。     
      妻   ○ ○ ○ ○   昭和 年 月 日生  印
      長男  ○ ○ ○ ○   平成 年 月 日生  印
      長女  ○ ○ ○ ○   平成 年 月 日生  印
  

私のこの宣言による要望を忠実に果して下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従って為された行為の一切の責任の根拠は、私自身が信じる人権思想と死生観にあります。

警察、検察の関係者の皆様におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これらの方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。
 この宣言書の語句や表現等に解釈の余地があるときは、私が著述している「生命論、死生観、往還思想」を参考にして、私の意趣をご理解いただくようお願い申しあげます。
 

 

 

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